【介護のキホン】訪問介護サービスを受ける前に要確認!サービス提供責任者の6つの役割

公開日:2021年12月22日更新日:2022年10月05日
サービス提供責任者

訪問介護事業所で従事する「サービス提供責任者」は、ケアマネジャーが作成したケアプランを実現するための「訪問介護計画書」の作成やホームヘルパー(訪問介護員)のマネジメント業務などを担います。

本記事では、訪問介護サービスを利用検討している方に向けて、「サービス提供責任者」がどのような役割を果たすのか、わかりやすく解説していきます。

サービス提供責任者(サ責)とは?

サービス提供責任者(サ責・させき)は、訪問介護事業所に所属するホームヘルパーの管理や、ご利用者の訪問介護計画書の作成、訪問介護の利用申し込み調整などを行う職種です。ご利用者、ホームヘルパー、ケアマネジャーがうまく連携をとれるように調整するコーディネーターともいえるでしょう。
なお、「訪問介護を行う事業所では、利用者40人に対して1人以上のサービス提供責任者を配置しなければならない」と決められています。

サービス提供責任者とはどんな人がなれるの?

「サービス提供責任者」は役割の名称であって、そういった資格はありません。ただ、誰でもなれるというわけではなく、2018年に要件が改訂され、以下の条件のいずれかをクリアしている方が、「サービス提供責任者」を名乗ることができます。

  • 「介護福祉士」資格をもっている
  • 「介護福祉士実務者研修」を修了している
  • 旧ホームヘルパー1級をもっている※
  • 旧介護職員基礎研修を修了している※

※既に終了している資格なので、現在は新規で取得はできません。

いずれの条件でも、専門的な知識・実務経験が必要となります。

管理者とサービス提供責任者の違い

訪問介護事業所には、サービス提供責任者のほかに「管理者」という役割の方もいます。管理者は、事業所の経営に関わる収支管理や、ホームヘルパーを含むスタッフ全体の人員管理など、管理全般を行います。

また、介護サービスに問題がないか、ケアプラン通りに進められているか、といったサービス内容のチェックも業務のひとつです。サービス提供責任者が実際にご利用者と関わりながら調整を行う現場のスタッフであるのに対し、管理者は訪問介護事業所全体を管理する裏方だといえるでしょう。

ケアマネジャーとサービス提供責任者の違い

ケアマネジャーとは、介護が必要な方のケアプランを作成する役割を持った人で、居宅介護支援事業所や介護予防支援事業所(地域包括支援センター)などに勤務しています。ケアマネジャーは、さまざまな介護サービスの中から、ご利用者に適したサービスを選定し、ケアプランを作成します。

一方、サービス提供責任者は、ケアマネジャーの作成したケアプランをもとに、具体的な訪問介護計画書を作成します。サービス提供責任者はホームヘルパーを兼務し、自ら介護を行うこともありますから、ケアマネジャーよりもさらに介護の現場に近い仕事だといえるでしょう。

サービス提供責任者の6つの役割

他の職種との違いが分かったところで、改めて訪問介護におけるサービス提供責任者の役割を見ていきましょう。仕事内容は多岐にわたりますが、ここでは代表的な6つについて解説します。

1.ご利用者やご家族との面談、状況把握

サービス提供責任者は、訪問介護サービスを開始する際にはご利用者のご自宅を訪問し、サービスに関する相談や手続きなどの調整を行います。サービス提供開始後も介護サービスが適切に行われているかどうか把握するために、ご利用者やご家族と定期的に面談(モニタリング)を実施します。

直接ホームヘルパーやサービス提供責任者が相談を受ける場合もあれば、ケアマネジャーなどを通して相談が届く場合もあり、その中で挙がった課題や悩みに対応することもサービス提供責任者の仕事のひとつです。訪問介護計画書の内容に問題がないか確認し、必要に応じて見直しを加え、その後の訪問介護サービスに活かしていきます。

2.ケアマネジャーとの連携、サービス担当者会議への参加

サービス担当者会議は、ケアプランの作成や変更を行う際に開催される会議で、ケアマネジャーが主催します。ご利用者やご家族、ご利用者のケアプランに位置づけられた各種サービスの担当者などが出席し、必要な介護の内容について相談します。

サービス提供責任者は訪問介護サービスの担当者として参加し、ケアマネジャーの作成したケアプランを確認。情報共有や必要なサービスの提案などを行います。

3.訪問介護計画書の作成

要支援や要介護の認定を受けた方が最初に行うのは、担当のケアマネジャーにケアプランを立ててもらうことです。その後、サービス提供責任者が、ケアプランに基づいた具体的な訪問介護計画書を作成します(訪問介護を利用する場合)。

この計画書には、介護をする際に留意することや介護を受ける方の課題といった具体的な介護内容などが記載されます。たとえば、「排泄介助」ではなく、「ポータブルトイレを使用」といった細かい介護内容を書くのが訪問介護計画書です。 なお、この計画書は定期的に見直しが行われます。

4.サービス提供手順書の作成

サービス提供手順書は、実際に介護を担当するホームヘルパーが業務を行いやすいように、訪問介護計画書に沿って、サービス提供に関する細かい内容や手順をまとめたものです。担当者によってサービス内容が異ならないように、介護のポイントを詳細に明記します。

なお、訪問介護計画書は必ず作成しますが、サービス提供手順書は義務ではありません。サービス提供責任者以外が作成する場合もあります。

5.ホームヘルパーのマネジメント業務

訪問介護事業所では、介護を必要とするご利用者が、必要なときに十分な介護サービスを受けられるようにシフトを組まなければいけません。そこで、サービス提供責任者がホームヘルパーの勤務スケジュールの調整や現場への同行、技術指導といったマネジメント業務を行います。

また、サービス提供責任者は、現場のリーダーとしてホームヘルパーから相談等を受けることもあります。

6.ホームヘルパーの業務管理・研修・技術指導など

ホームへルパーの勤務表作成、欠勤時や問題発生時の対応や調整など、管理者と連携しながら、業務管理全般を担います。
また、ホームヘルパーの研修計画や技術指導の作成も行います。
なお、サービス提供責任者はホームヘルパーを兼務し、自身がサービスを提供することもあります。

サービス提供責任者の勤務先

前述の通り、サービス提供責任者は、訪問介護サービスを行う「訪問介護事業所」に勤務しているスタッフです。訪問介護事業所では、居宅(ご自宅やサービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなど)で暮らす支援・介護が必要な方に対して、生活援助や身体介護を提供するホームヘルパーを派遣します。

これらの介護サービスは「介護保険サービス」と呼ばれ、介護保険からの給付を受けることで安価に利用できます。実際には、利用料金から介護保険給付分を差し引いた1~3割が個人負担です。

サービス提供責任者の配置基準

訪問介護事業所は、必ずサービス提供責任者を配置しなければいけません。配置人数は、直近3カ月あたりの利用者数に応じて決まります。

直近3カ月の利用者数の平均 サービス提供責任者の必要人数(常勤)
~40人 1人
41人~80人 2人
81人~120人 3人
121人~160人 4人
161人~200人 5人

なお、以下の条件をすべて満たす場合は、50人につき1人で良いとされています。

  • サービス提供責任者(常勤)を3人以上配置している
  • 主にサービス提供責任者の業務を行う人を1人以上配置している(※サービス提供責任者は、その業務と兼任が可能)
  • サービス提供責任者の業務を効率的に行っている

訪問介護サービスを利用するまでの流れ

サービス提供責任者の職場である訪問介護事業所の訪問介護サービスを利用できるのは、介護保険の要支援や要介護の認定を受けた方です。対象者や申し込み方法について、見ていきましょう。

訪問介護サービスの対象者

訪問介護サービスを受けられるのは、「要介護1~5」の認定を受けた方です。この認定は、市区町村の担当窓口に申請すると受けられます。
なお、要支援1~2の認定を受けた場合は、「訪問型サービス」を受けられます。これは、介護サービスではなく、将来要介護状態になることを予防するためのサービスです。そのため、「要支援1は週2回まで」といった利用制限があります。とはいえ、利用できるサービス内容は訪問介護とそれほど変わりません。

訪問介護サービスの申込方法

訪問介護サービスを利用する場合の申し込み方法について、5つのステップで紹介します。

1.要介護・要支援認定の申請

要介護・要支援認定を受けるためには、まず市区町村の窓口で申請を行う必要があります。その後、心身の状況に関する訪問調査や主治医の意見書などを元に判定が行われ、原則30日以内に郵送で結果が通知されます。

2.ケアマネジャーの選任

要支援、あるいは要介護と認定されたら、ケアマネジャーを選びます。要支援の場合は、地域包括支援センターにある「介護予防支援事業所」に所属するケアマネジャー、要介護の場合は、「居宅介護支援事業所」に所属するケアマネジャーに担当してもらいます。

ケアマネジャーの選任にあたっては、地域包括支援センターで助言を受けることができます。

3.ケアプラン作成

担当になったケアマネジャーが、ケアプランを作成してくれます。ケアプランはご利用者本人やご家族の意向も参考に作成されるため、ヒアリングには、ありのままの介護状況などを伝えましょう。

4.訪問介護事業所の選定

その後、利用する訪問介護事業所を選定します。ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所などに訪問介護事業所が併設している場合、そこを利用するケースが多いですが、他の訪問介護事業所の利用をケアマネジャーに依頼することもできます。

5.契約・サービス利用開始

訪問介護事業所が決まったら、契約を結んで訪問介護サービスの利用をスタートします。

さまざまな役割を持つサービス提供責任者

サービス提供責任者は、訪問介護サービスを快適に利用できるかどうかを左右する重要な役割を果たします。訪問介護を利用するにあたっては、具体的にどのようなサービスを受けられるのか受けたいのか、どんなことに配慮してほしいのか、ご利用者の大切にしたい生活習慣や好みなどもきちんと伝えましょう。

なお、サービス提供責任者とは、訪問介護計画書を作成してもらった後も、面談や実際の訪問介護で直接関わる機会があります。訪問介護サービスに対して気になる点や、困っている問題があったら、その都度相談することをおすすめします。サービス提供責任者と連携をとって、安心して訪問介護を受けられる体制を整えましょう。

監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)
川上 由里子
監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)

大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、大手不動産株式会社「ケアデザイン」の立ち上げに参画。支える人を支えるコンサルティングを開発実施。著書に[介護生活これで安心](小学館)「働きながら介護する〜ケアも仕事も暮らしもバランスとって〜」(技術評論社)。

自身も働きながら父親の遠距離介護を体験。介護、看護、医療サービスを利用しながら在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。現在は介護関連のコンサルティングの他、講演、執筆活動を行っている。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。

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