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在宅医療の専門医に聞く 高齢者の冬のお悩み なるほど Q&A

もうすぐ冬到来。寒さが本格化する11月下旬頃から、高齢者にとって体調が心配な時期になります。
そこで、冬場の生活で気になる「感染症」「冬に注意したいこと」「過ごし方のポイント」の3つについて、
在宅医療分野の専門医にうかがいました。

感染症

「インフルエンザ」や「ノロウイルス」が
冬に流行するのは、
どうしてですか?

「インフルエンザ」や「ノロウイルス」が冬に流行するのは、どうしてですか?

空気が乾燥する冬は、低温・低湿度を好むウイルスにとって最適な環境となります。さらに、咳やくしゃみによる飛沫も乾燥により小さくなって遠くに飛びやすくなったり、喉の粘膜も機能が低下したりするため、ウイルスに感染しやすくなります。冬は、寒さで体温が低下して免疫機能が下がるので、恒常性(身体の体温や血糖値、水分などを一定に保つこと)も乱れやすくなります。高齢者は特に影響を受けやすいため、注意が必要です。

高齢者に感染が疑われる場合は、どうすればよいですか?

「単なる風邪だろう」と考えずに、早めに医療機関で受診することが大切です。高齢者は、免疫機能の衰えから、肺炎になるほど症状が悪化していても熱が出ない場合もあります。本当はインフルエンザに感染しているのに異常を感じられないため、本人も知らない間に周囲が感染してしまうこともあります。普段接している家族や介護者は、食欲や活気、排泄量など全身の状態をみて、いつもと違う症状がないか気を付けることが大切です。

「インフルエンザ」や「ノロウイルス」以外で、
冬場特に注意すべき感染症はありますか?

下記のような感染症にも注意してください。

RSウイルス感染症
RSウイルスへの感染によって咳、鼻汁などの呼吸器症状を引き起こす病気です。
溶連菌感染症
喉や扁桃腺の炎症・痛み、高熱などの症状がある場合、溶連菌感染症の疑いもあります。
マイコプラズマ肺炎
「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することで起きる呼吸器感染症です。年間を通してみられますが、冬に増加する傾向があります。

感染症予防として、どのような対策がありますか?

一般的なことになりますが、①規則正しい生活 ②マスク・手洗い・うがいなどの基本的な対策 ③インフルエンザなどのワクチン接種 ④住環境の整備などがあげられます。健康でいるために恒常性(身体の体温や血糖値、水分などを一定に保つこと)を保つには、身体への適度な刺激が必要になります。室内の過ごしやすい環境にいることが良いわけではありませんので、外気浴や軽めな運動をするように心がけましょう。

風邪を引いた時にお腹を下しやすいのですが、早く治す方法はありますか?

下痢の原因は、ウイルス性腸炎がほとんどです。飲んだり食べたりすることが刺激になり、飲食した回数だけ下痢を発症する傾向があります。下痢になると、飲食物は消化も吸収もされないので、原則として1日ほど絶飲食するのが最も効果的だと考えます。なお、症状が強い場合は、500ml程度の点滴を受けると身体はずいぶん楽になります。絶飲食後は、水分や粥、あるいはヨーグルトなどを少量から摂るようにしましょう。

冬に注意したいこと

最近、よく耳にする「ヒートショック」
とはどのような現象ですか?

最近、よく耳にする「ヒートショック」とはどのような現象ですか?

急激な温度変化により血圧が上下することで身体に負担がかかり、めまいや立ちくらみが発症します。失神のほか、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすこともあります。10度以上の温度差がありそうな場所へ移動する際は、特に気を付けましょう。自宅では、暖房の効いた部屋から「浴室」「脱衣所」「トイレ」といった温度が下がっている場所へ移動する際は、注意が必要です。

浴槽で家族が倒れていた場合、どのように対処すればよいですか?

まず、ご本人の口や鼻に水が入らないように浴槽のお湯を抜き、湯船から出してください。一人で担ぐことが難しい場合、お湯を減らして溺れないようにします。頭痛やろれつが回らないといった症状がみられる場合は、身体を動かさず、すぐに救急車を呼びます。脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの総称)の可能性もあるので、無理に動かしたり揺さぶったりしてはいけません。嘔吐物があれば取り除き、横向きに寝かせた状態で救急車を待ってください。

浴室での「ヒートショック」を予防するには、どんな対策がありますか?

高齢者が家族と同居している場合は、ひと言声をかけてから入浴してもらうのが、最も効果的です。いつもよりお風呂から上がるのが遅い場合は、様子を見に行きましょう。一人暮らしの場合は、以下の点に気を付けてください。

  • 入浴する前に脱衣所や浴室を暖めておく。また、湯温は41℃以下に設定し、長湯しない
  • 肩まで湯に浸からず、胸の下までに。また、上がる時は浴槽からゆっくり立ち上がる
  • 食後や飲酒後、服薬後の入浴は避け、入浴の前後に水分を摂る

「ヒートショック」になりやすいのは、どんな傾向がある人でしょうか?

65歳以上の高齢者で、熱いお風呂や一番風呂を好まれる方、入浴時間が長い方は、注意が必要です。また、高血圧・糖尿病・動脈硬化といった持病のある方や、肥満の方、睡眠時無呼吸症候群・不整脈のある方にとっては、命に関わる危険もありますので、より気を付けるようにしてください。

冬は、乾燥して皮膚がはがれやすくなるのですが、どうしてでしょうか。

角質層がめくれてはがれやすくなるのは、高齢者に多い「老人性乾皮症」の状態です。加齢に伴って皮脂や汗の分泌が減少し、皮膚の水分保持機能が低下することにより、表層に亀裂が入って白いふけのような鱗屑(りんせつ)が生じます。空気が乾燥する秋から冬にかけて症状が出ることが多く、ちょっとした刺激でも皮膚が過敏に反応し、赤みやかゆみを引き起こします。別項の乾燥対策で予防できますが、かゆみが強かったり、湿疹・炎症が起きていたりする場合は皮膚科を受診しましょう。

高齢者でも取り組みやすい、肌の乾燥対策はありますか?

しっかり水分補給することやバランスのとれた食事はもちろん、保湿剤の入った軟膏やクリームで適切なスキンケアを行うこともポイントです。さまざまな成分のものが市販されているので、自分の肌に合うものを探してみてください。室内では、加湿器などを使って湿度を上げるようにしましょう。また、入浴時、体を洗う際にゴシゴシとこすらないこと、長湯をしないことも大切です。

過ごし方のポイント

母は一人暮らしなのですが、
暖房器具の
使用で気を付けることはありますか?

母は一人暮らしなのですが、暖房器具の使用で気を付けることはありますか?

ホットカーペットやカイロなどに長時間、身体の同じ場所が触れていると、「低温やけど」になる可能性があります。高齢者は、熱さを感じにくいため、やけどになっていても気づかないことがあります。タオルなどを使って熱源に直接触れないようにするなどがおすすめです。また、ファンヒーターの温風や赤外線ヒーターなどによるやけどにも注意が必要です。気づかないまま重度のやけどを負う危険があります。暖房器具から十分な距離をとって直接当たらないようにし、室内全体の湿度を上げるようにしましょう。

就寝時に足が冷えてなかなか眠れないのですが、どうしたらよいでしょうか?

夜中は、体温の調整機能が低下する傾向があります。タオルを巻いたあんかなどを使って足を温めると、心地よく眠りにつけるでしょう。また、ふとんから出ている首筋からも熱がうばわれやすいため、肌触りのよいものを巻くなどすると、寒さを感じにくくなります。
寒いからといって室内の温度を上げすぎると、体温の調整機能が徐々に衰えていくおそれがあります。少し寒いと感じるくらいの室温に調整し、かけ布団やあんか、暖房器具のタイマーなどで調整するとよいでしょう。

汗をかきにくい冬も脱水症になると聞きました。

水分が自然に身体の外に出てしまうこと(不感蒸泄)から、冬でも脱水症状になることはあります。高齢者は、水分や食べ物の摂取量がそもそも少ないうえ、のどの渇きを感じにくかったり、水を飲むこと自体が難しかったりすることも意識しておきましょう。水分は、必ずしも液体で摂取する必要はなく、食事に含まれる野菜やプリン、お菓子などの固形物から摂ることもできます。バランスの取れた食事にこだわりすぎず、まずはしっかり食べることが大切です。

お正月はお餅を喉に詰まらせるとよく聞きますが、他にも注意すべき食べ物はありますか?

お正月は、おせち料理を食べることが多いので、お餅のほかにシイタケの柄や魚の骨、ピーナッツなどを喉に詰まらせてしまうといった例がありました。一般的に、表面がつるつるして柔らかいものは、喉に詰まらせやすい傾向があります。お餅はもちろんですが、それ以外の食材についても、素材の固さや形状に注意して、喉に詰まらせにくいような調理法を心がけるとよいですね。

寒いと外に出ることがつい億劫になりがちですが、心がけることはありますか?

無理に外に出ようとしなくても、室内でもできることはあります。人間は足から衰えるとも言いますので、できるだけ歩くことが大切です。脳卒中の後遺症をもつ人でも、新聞を取りにいく、食卓で食事をする、トイレに行くなど機会を見つけて少しでも動くことがリハビリになります。人間は植物ではなく、動物、つまり動くものですから、身体を動かすように心がけましょう。そうでないと、お尻から根が生えてしまうかもしれませんよ。

その他のお悩みQ&A

高齢者は、加齢に伴って体内の調整機能が低下しているため、環境の変化に速やかに対応することが難しくなります。また、認知症などの症状により、自分の気持ちをうまく伝えられないことがあります。適度な声掛けを心がけながら、過剰になりすぎずに対応することが、ご本人、ご家族の安心につながります。時には、第三者の力を借りたり、ショートステイを活用したりしながら、上手に夏を乗り越えられるとよいですね。

監修者 杉山 孝博 すぎやま たかひろ

川崎幸クリニック院長

1947年愛知県生まれ。長年、内科の診療と在宅医療に取り組み、川崎幸病院副院長を経て1998年より川崎幸病院の外来部門「川崎幸クリニック」院長に就任。公益社団法人認知症の人と家族の会全国本部副代表理事、神奈川県支部代表。公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問、公益財団法人さわやか福祉財団評議員。認知症と介護に関する著書、講演など多数。

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