ベネッセ その方らしさに、深く寄りそう。ベネッセスタイルケア

「認知症なのだから、危ないことはさせないのが一番」だと思っていませんか?

ベネッセの介護は、危ないことに向き合うことからはじめます。

認知症は、進行とともに危険予知や判断する能力が失われていくため、「安全・安心」が特に重視されます。
ですが、「安全・安心」を整えて何を目指すのかを考えないと、「安全・安心」を整えること自体が目的になり、
「危ないものが一つもなくなること」がゴールになってしまいます。
私たちは、ご入居者様が「やりたいこと」に一緒に取り組むことを目指して、
ホームだからこそできるかかわりを『認知症ケアメソッド®』として言語化し、実践しています。

強い帰宅願望が表れていたA様が料理をふるまわれて「幸せよー」とおっしゃるように

A様プロフィール

96歳、女性(要介護2)
病歴:アルツハイマー型認知症。
移動は歩行器を使用。

ご入居の経緯

  • 物忘れが多くなり、日付の感覚もなくなって、お金や書類の管理、料理が困難に。
  • 老々介護をされていたご主人も要支援となり、ご自宅での生活に限界が。
  • 娘様の働きかけで「メディカル・リハビリホームくらら武蔵境」へご入居。

ご入居後のご様子

  • 認知症の症状と思われる帰宅願望が強く表れ、スタッフに「お願いだから、家に帰してください」と訴えられる。
  • 家に帰ろうと何時間もホーム内を歩き続け、疲れから転倒を繰り返される。

STEP1 心のありかを知る

「A様らしさ」を探すため、これまでの暮らしやこだわりを知り、ご家族様にもホームでのご様子を共有しながら、日々の発言・行動から人生すべてに遡って深掘りしていきます。

ある日、「じいさん(ご主人)のごはんを作らないと」というA様の発言から、家に帰りたい理由にスタッフが気づき、ご主人のために料理を作ることを目標にした取り組みをしてはどうかと考えました。

STEP2 「誰かのために料理を作る」取り組みに向けたアセスメント

1日常生活におけるアセスメント

まず、料理で必要な動作を分解し、一つひとつ 行えるかどうかを日常生活のなかでスタッフが確認。
併せて、どれくらいの頻度でお声がけすれば記憶が維持できるかも確認します。

料理で必要な
動作の一例
確認したポイント
立つ
歩行器がなくても、立つことはできる
包丁を握る
握力がある
手を使った細かい作業ができる
腕を振る
椅子に座れば、しっかり腕を動かすことができる
手順を理解する
スタッフの質問に正しくお答えいただける

2リスクと向き合い、環境を整える

料理では「包丁」と「火」を使用します。
私たちは、起こりうる危険と対応策、A様のお身体の状態に応じたお手伝いの入り方について検討を重ねました。

起こりうる危険 『リスクと向き合う』方法の一例
包丁で指を切る
可能性がある
服薬中のお薬により、血が止まりにくいといった
作用がないことを確認
火を使う際、
火傷をする
可能性がある
万が一、ケガや火傷をした場合の応急処置についてスタッフ全員が看護職員による研修を受講
すぐ近くに家庭用消火器を準備
火を使う際、A様を見守る位置や方法をスタッフ全員に共有

3料理の流れのなかでのアセスメント

ご家族様に状況をお伝えし、A様の取り組みについてリスクも含めてご相談したところ、ご理解が得られました。そこで、最初の挑戦として料理の流れのなかでアセスメントを行うことをご提案。

スタッフがサポートしながらA様が簡単な料理を作るなかで動作を一つひとつ丁寧に確認した結果、「包丁」も「火」も使っていただけると判断できました。

STEP3 「誰かのために料理を作る」取り組みの実践

A様の料理のなかでのアセスメントのご様子を、ご家族様にご報告。改めて挑戦をご相談し、ご快諾いただけました。A様の目的は「じいさんのために」料理をすることだったので、できあがったら一緒に食べることを目指し、取り組みを実践しました。

かかわりから「A様らしいご生活」につながるサイクルへ
1 「今、すぐにやる」

認知症の方は、短期記憶が低下するため、「すぐにやってみる」ことが大切。後で料理をした事実を忘れてしまっても、そのとき感じた気持ちは残るからです。

2 「包丁も渡す」

料理をはじめ、スタッフが包丁をお渡しすると、慣れた手つきで材料をカット。

3 「なじみのものをちりばめる」

鍋に水を入れる際、A様が混乱したご様子に。スタッフがご家族様にご自宅からお持ちいただいた「いつもの鍋」を置くと、その鍋を選んでスムーズにコンロにかけられました。

4 「思う存分、思うがまま」

お味噌汁にたくさんの塩を入れるのがA様流。思うがままに作っていただくことが大切です。周囲は少し驚いたものの、味わい深くおいしいお味噌汁ができました。

5 「一緒に喜ぶ」

できあがったお味噌汁を、スタッフが一緒に食べながらお話しすると笑顔に。ご自宅のように「作って一緒に食べる」「おいしいといわれる」ことで、「誰かの役に立てた」というお気持ちを感じていただけたようです。

その後、料理をされるようになったA様は、ほかのご入居者様にもふるまわれ、かかわり合いがどんどん増えていきました。そして、一緒に活動されるお仲間もできました。

ホームで「ご近所付き合い」が生まれたことで、ご自分らしい生活を過ごされるようになったA様は、「帰りたい」という発言がほとんどなくなり、「幸せよー」というお声に変わりました。「誰かのために生きていく」という人生の実現は、想像を超える相乗効果と、たくさんの笑顔につながったのです。

介護はお一人おひとりのご事情で異なりますので「必ずこういう状態に改善できます」と、お約束することまでは難しいのが実情です。また、リスクを伴うと考えられる取り組みは、そのリスクを完全に拭い去ることは困難なものの、向き合う方法を考えてご家族様に説明し、ご理解いただけた場合のみ進めることを基本としております。私たちは、これからもお一人おひとりに深く寄りそい、皆様の介護にまつわるお悩みの解決を目指してまいります。

ご紹介しているエピソードは、個々のご入居者様の事例です。また、ご提供できるサービスやケアの内容は、ご入居者様お一人おひとりの心身の状態やホームの状況によって異なりますので、個別にご相談くださいますようお願い申し上げます。

AWARD

第23回日本認知症ケア学会大会にて
「石﨑賞*1」を受賞

「その方らしさ」を取り戻すために多職種で連携を図りながら情報収集・分析し、ご入居者様へのかか わりを続けてきた「グランダ常盤台弐番館」の認知 症ケアへの取り組みが評価されました。

経済産業省「サービス産業強化事業費補助金(認知症共生社会に向けた製品・サービスの効果検証事業)」の事業者に採択

認知症になっても自分らしく暮らし続けられる「共生」を目指す 取り組みの一環として、認知症フレンドリーな製品・サービスを 社会実装することによる効果検証事業者に採択されました。

*1:日本認知症ケア学会大会において、認知症ケアに関する独創性・有用性・発展性の観点から優秀な演題発表をした者に贈られる。