【糖尿病で要介護に?】油断大敵!要介護になりやすい糖尿病についてわかりやすく解説

公開日:2021年12月22日更新日:2022年09月12日
要介護状態を招く糖尿病

国民病ともいえる糖尿病

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(平成28年)によると、糖尿病が強く疑われる人(糖尿病有病者)は約1,000万人、糖尿病の可能性を否定できない人(糖尿病予備群)は約1,000万人と推計されています。

有病者率を見ると60歳以上でその割合は15%を超え(図4)、日本人にとって糖尿病は「国民病」とも呼べるほど、身近な病気といえます。

国民健康・栄養調査

糖尿病の原因

血液中を流れるブドウ糖を「血糖」といい、ブドウ糖の血中濃度を示すのが「血糖値」です。食事をとると血糖が増え、血糖値が上昇しますが、通常は膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンが、ブドウ糖の量を適切にコントロールしています。

ところが、インスリンの分泌や働きに異常があると、血糖値が高くなる「高血糖」の状態が慢性的に続きます。これが糖尿病で、原因によって「1型糖尿病」「2型糖尿病」「遺伝子異常・ほかの病気による糖尿病」「妊娠糖尿病」の大きく4つのタイプに分類されます。

日本人に多いのは、遺伝的要因や、食べ過ぎ、運動不足、肥満など悪い生活習慣の積み重ねが原因で発症する2型糖尿病で、糖尿病患者の9割以上を占めています。

血糖値が高い状態が慢性的に続くと、全身の血管が弾力を失い、もろくなります。血管がもろくなると血液が詰まりやすくなり進行すると介護が必要になったり、命にかかわることもあります。これが「合併症」です。

糖尿病の症状

糖尿病の初期には、自覚症状がほとんどありません。「トイレが近い(尿の量が増える)」「体重が減る」「喉が乾く」「体がだるい・疲れやすい」「手足がしびれる」「発疹がないのに体がかゆい」などの自覚症状が現れる頃には、すでに血糖値が高い状態が長く続いていて、糖尿病が進行している場合が多くあります。

糖尿病の合併症とは?

糖尿病の恐ろしさは、全身の血管がもろくなることによって生じる合併症にあります。細い血管がダメージを受けて起こる代表的な合併症が、「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」「糖尿病性神経障害」です。これらは糖尿病の三大合併症と呼ばれ、進行すると生活の質(QOL)が著しく低下します。

糖尿病性網膜症では、網膜の血管がダメージを受けるため、視力が低下して失明に至る場合があります。糖尿病性腎症では、腎臓の機能が低下し老廃物を排出できなくなるため、透析治療が必要になります。糖尿病性神経障害では、末端の血流が悪くなるため足先や足裏の感覚が麻痺します。小さな傷ができても気づかず悪化して潰瘍や壊疽が生じ、足の切断をせざるを得ない事態に陥ることがあります。

また、太い血管が傷つくと動脈硬化が進むため、脳梗塞や心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症など命に関わる病気を起こす危険性が高まります。

糖尿病の検査と診断

糖尿病は、血液検査で「血糖値」や「HbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)」の測定結果から、診断基準に基づいて診断されます。自覚症状がないまま進行していく糖尿病では、健診や人間ドックなどで定期的に検査を受け、疑わしい検査結果を放置しないことが重要です。「血糖値がちょっと高め」の段階でも、油断は禁物、立派な予備軍です。

糖尿病の治療と予防

糖尿病治療の目的は、血糖値コントロールです。運動や食事などの生活習慣が発症に関わっている2型糖尿病では、「運動療法」と「食事療法」などの生活習慣の改善を中心に、症状に応じて「薬物療法(経口薬やインスリンの注射など)」が加わる場合もあります。
 

  • 運動

糖尿病の治療に効果的な運動はウォーキングなどの「有酸素運動」と、スクワットなどの「筋力トレーニング」で、組み合わせて取り組むと血糖値を下げる効果がより高まります。ただし、安全に運動に取り組むために事前に主治医に相談が必要です。また、こまめに動いて日常生活で活動量を増やすことも大切です。
 

  • 食事

食事療法は、食べ過ぎを抑え、適切なカロリーコントロールが必要ですが、食事を抜くなど極端な方法は逆効果です。適切な量の食事を栄養バランスよく、1日3食、なるべく規則正しい時間にとること。また、野菜を先に食べると食後の血糖値の上昇が緩やかになるなど、食べ方の工夫も大切です。
 

薬物療法は合併症を防ぐために行われます。経口薬と注射薬があり、インスリン分泌状態など患者の状態に合わせて選択されます。注射薬のうち、インスリン療法では血糖値を安定させるために食事の前後などに血糖値を測り、適切な量のインスリンを注射します。ペン型の注射器で、痛みなどもなく誰でも簡単に行うことができます。
 

近年では、糖尿病を適切に管理し、症状の改善を図るために、介護施設で積極的な運動療法や食事療法などを行っているところもあります。

※記事の内容は2021年12月時点の情報をもとに作成しています。

監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長
杉山 孝博
監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長

川崎幸病院副院長を経て1998年より川崎幸病院の外来部門「川崎幸クリニック」院長に就任。公益社団法人認知症の人と家族の会全国本部副代表理事、神奈川県支部代表。認知症と介護に関する著書、講演など多数。

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