【要注意!】寝たきり状態を招く高齢者の骨折についてわかりやすく解説

公開日:2021年12月22日更新日:2022年09月12日
要介護状態を招く骨折

高齢者は転倒で骨折しやすい

高齢になると、ちょっとした転倒でも骨折につながることがあります。これは、加齢とともに筋力が低下し、歩くときなどに足が上がらなくなって転倒しやすくなることに加えて、骨ももろくなっていくためです。

高齢者に多い骨折の部位は、太ももの付け根(大腿骨頚部)、手首、背中、肩などの骨です。特に太ものの付け根の骨を骨折すると、立つことや歩くことができなくなり、要介護や寝たきりになる危険が高まります。

骨がもろくなる骨粗しょう症

骨は古くなると破壊され、新しい骨につくりかえられる「骨代謝」を繰り返しています。骨代謝のバランスがとれていると、健康で丈夫な骨が維持されます。ところが、破壊される骨の量が増えたり、つくられる骨の量が減ったりすると、骨の密度(骨密度)が低下してスカスカになる「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」(以下:骨粗しょう症)が起こります。

骨粗しょう症になるのは男性よりも女性のほうが多く、女性は閉経をきっかけに骨密度が急速に減少するため、転倒しないよう注意が必要です。初期では痛みなどの自覚症状がないため、「身長が縮んだ」「背中や腰が曲がってきた」「立ち上がるときなどに背中や腰が痛む」などの症状が現れたら、骨粗しょう症が強く疑われます。

高齢者が転倒しやすい場所とその対策

高齢者の転倒による骨折は、慣れているはずの家の中(敷地内)で多く発生しています。具体的には「階段を踏み外す」「わずかな段差・じゅうたんのへりにつまずく」「濡れた浴室の洗い場ですべる」「サンダル(つっかけ)で庭を歩いていて、地面のでこぼこにつまずく」などです。屋外では、階段や段差での転倒のほかに、「雨の日に建物の出入り口で滑る」「自転車に乗っていて転倒する」などがみられます。

家の中での転倒を防ぐには、玄関・階段・トイレ・浴室などに手すりを設置する、じゅうたん・電気のコードなどは固定する、敷居などの段差にはスロープを設置する、床に置いている物を片づけるなど、積極的に住環境の整備を行います。
その他、高齢者では服用中の薬が原因でふらついて転倒を招く場合があります。薬によるめまいやふらつきなどがある場合は、主治医に相談してください。

骨粗しょう症の予防も重要

骨粗しょう症を予防するには、食事や運動などの生活習慣の改善が大切です。食事は栄養バランスのよい食事を心がけます。特に骨をつくる材料となるカルシウムは日本人に不足しがちなため、積極的にとることが勧められています。カルシウムを多く含む食品の他に、カルシウムの吸収をよくするビタミンDやビタミンKも摂取しましょう※1。ビタミンDは日光(紫外線)を浴びることで体内でもつくられるので、適度な日光浴も必要です。

  • カルシウムを多く含む食品…牛乳・乳製品、小魚、大豆製品、コマツナ、ヒジキなど
  • ビタミンDを多く含む食品…青魚、キノコ類など
  • ビタミンKを多く含む食品…納豆、レバー、モロヘイヤなど

また、骨は運動による刺激が加わることで強さが増すといわれています。骨密度を高めるには、ウォーキングや筋力トレーニングなどを適度に継続して行うことが効果的です※2。

この他にも、喫煙や過度の飲酒も骨粗しょう症による骨折のリスクを高めるため、禁煙や適量飲酒を心がけることも大切です。

※1 持病(既往症)などがあって、食事指導などを受けている人は、必ず主治医に相談してください。
※2 安全に運動を行うために、膝痛や腰痛、骨折経験などがある人は、必ず整形外科医に相談してください。
また、持病(既往症)がある人は、必ず主治医に相談してください。

※記事の内容は2021年12月時点の情報をもとに作成しています。

監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長
杉山 孝博
監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長

川崎幸病院副院長を経て1998年より川崎幸病院の外来部門「川崎幸クリニック」院長に就任。公益社団法人認知症の人と家族の会全国本部副代表理事、神奈川県支部代表。認知症と介護に関する著書、講演など多数。

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