エピソード
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安全・安心なだけでなく、ご入居者様の「やりたいこと」をかなえられる生活を
2018年04月16日
遠方で一人暮らしをされているお母様との同居準備を進めていたご家族様。骨折と脳出血による入院、そして認知症の進行…。料理が大好きだった明るいお母様の笑顔が見られる暮らしは、もう無理なのでしょうか?
私(お客様相談担当H)がご相談を受けた事例を紹介いたします。
2度の入院、認知症進行で、自宅での生活が困難に
80歳後半の女性、A様は、要介護3の認定を受け、介護サービスを利用しながら一人暮らしを続けてこられました。ご主人はすでに亡くなられ、近くに親族もいらっしゃらないので、遠方で暮らす息子様はA様の生活をとても心配されていました。息子様はA様を呼び寄せるため、ご自宅を改築するなど同居の準備を進めておられました。あるときA様はご自宅で転倒され、骨折し、入院することになりました。入院中に認知症の症状が出てしまったため、退院後はご自宅での一人暮らしは無理と息子様は判断され、やむなくA様のご自宅近くの住宅型ホームへ。1年2ヶ月ほどのホームでの生活のなかで、認知症は進み、さらに脳出血で再入院となってしまいました。
そのような状況のもと、息子様よりベネッセにご相談をいただきました。今のホームでは遠すぎて頻繁に足を運べないこと、これから先はもっとA様との関わりを大事にしたい、とのことで、息子様のご自宅に近いホームを希望されていました。
生活の場であるだけなく、社交の場でもあるホーム
A様は退院後、いったん元のホームへ戻られましたが、脳出血の後遺症で目の視野が狭くなってしまい、以前より転倒することも多くなってしまったそうです。また、元のホームでの生活は、デイサービスで過ごされる時間が長かったのですが、認知症が進んだことで集団生活は難しくなりました。かといって、スタッフの数には限りがあったようで、個別に対応していただくことも困難でした。ホーム内には人が集まってくつろげるリビングのような場所もなく、A様は居室でお一人、ぽつんと過ごす時間が長くなっていきました。
認知症の方にとって、人と関わらず、長い時間を一人で過ごす生活は、さらに認知症を進行させ、生きる力を奪われる心配があります。「人と関わる生活」を送ることが、A様にとって不可欠でした。
息子様によると、A様はとても手先が器用で、料理が大好きだったそうです。簡単な家事を手伝うなど、少しでも日常生活に近い暮らしができるホームであれば、A様も自然と馴染むことができるのではないかと息子様は考えられていました。そこで私たちは、自立支援の一環として軽い家事などをスタッフと一緒にやっていただける住宅型のホームをご提案しました。
息子様にホームをご見学いただき、ご自宅に近いこと、スタッフの人員体制、家庭的でなごやかな雰囲気を気に入っていただけたようです。
ご入居者様の「やりたいこと」をかなえられるように
ご入居前のアセスメント(事前のお打ち合わせのためのご自宅訪問)は、私とホーム長とでおうかがいし、息子様そしてA様とゆっくりお話をさせていただきました。ご入居の当日は、飛行機での長旅、自宅から遠く離れた場所、そして初めてのホームです。不安な気持ちもあったことと思いますが、到着され、お出迎えをするホーム長と私を見て、知った顔だとわかって少しホッとされたようでした。そのご様子に、アセスメントの大切さを改めて実感しました。
A様の居室は、ご入居者様が集まるリビングに近いお部屋です。A様は日中、リビングでゆったりと過ごされています。到着されたその日から、体操のアクティビティにも参加されました。そして、A様が「やりたい」と思ってらっしゃるときをスタッフが見計らい、洗濯物をたたむといった軽い家事をお手伝いしていただいています。
認知症が進み、毎日使っている歩行器の使い方がわからなくなったり、ご自分のいる場所がどこなのかがわからなくなったりする、そんな不安を抱えながらの毎日かもしれませんが、「やりたいことがやれる」環境のなかで、少しずつ笑顔も増えていきました。
新しい生活にも慣れてきたA様のご様子に、息子様も安心され、何より、スタッフやほかのご入居者様たちとの関わりながらの暮らしをお喜びになっています。
ベネッセにはさまざまなタイプのホームがあります。ご本人様、ご家族様のご希望に応えられるホームがどこなのかは、ホームの仕様や書類などの情報だけではわかりません。データには表れない、ホームの日常や雰囲気についてよく知ったうえで、ご本人様とご家族様のお話をしっかり聞いて、お一人おひとりに寄り添い、ベストマッチに導くために私たち相談員がいるのだと、心新たにしたエピソードでした。