エピソード
78
介護の必要な方も、元気な方も、いきいきと暮らせるホームを選択
2018年04月23日
要介護5のご主人様を介護してきた妻のA様。ご主人様のお手伝いを最優先に考えながらご夫婦で入居するホームを探すうちに、ご自身のホームでの生活が想像できなくなり…。
私(お客様相談担当H)がご相談を受けた事例を紹介いたします。
ご主人様が要介護5になり、奥様は介護に専念する日々
A様は、80歳代の女性。とてもお元気な、サバサバとした性格で、1歳年上のご主人様と二人でご自宅にお住まいでした。ご自宅は3階建ての洋館で、ご夫婦のこだわりが随所にちりばめられたすてきな邸宅。ご夫婦はとても仲が良く、笑顔の絶えない毎日でした。息子様と娘様は、それぞれ独立され、ご実家からそれほど遠くないところに所帯をお持ちになっていました。3年前、A様のご主人様が転倒され、頸椎を損傷し半身が不自由になりました。要介護5と認定され、介護サービスを利用したリハビリも行っていますが、食事は、スプーンを使ってなんとか自力で食べることができるという状態でした。また、ご主人様には持病があり、毎日のお薬も欠かせません。A様は、ご自分のことは後回しでご主人様の介護に専念する日々を送っていました。
そんななか、A様と息子様からご相談を受けました。
A様はお元気ですが、高齢ですし、ご自宅の造りも完全なバリアフリーではないため、自宅介護に限界を感じているとのこと。息子様としては、ご両親にはしっかりとしたケア体制のあるホームで安心して暮らしてほしいという思いがありました。ご主人様も「妻と一緒なら」とおっしゃっているので、体制が万全で、ご夫婦で入居可能なホームをご紹介することになりました。
ホームでの暮らしが想像できなくなってしまったA様
A様はホーム選びにあたり、ご主人様のケアを最優先に考えられていました。最初にご覧になった介護付きホームは、落ち着いたホテルのような雰囲気で、A様にはたいへん気に入っていただけましたが、2室の空室がありませんでした。
次にご覧いただいた介護付きホームは、お元気なA様には少し違和感があったようです。
A様は、居室についても、二人部屋にするか、一人部屋を2室にするか、一人部屋の場合は隣どうしにするのか、離れていたほうがよいのか、ご主人様にとってもっともよい選択を熟考されているようでした。
見学を始めて2週間後。当初、「すぐにでも」と前向きに検討されていたA様でしたが、少しお疲れ気味の様子で「自分の生活が想像できなくなってきた」とおっしゃって、再検討することになりました。実際にホームを見学してみて、それまで漠然としたイメージしかなかったものが現実になり、迷いが生じてしまったようです。
ご家族思いのA様は、元気なこともあり、自らのことは二の次三の次で、ご主人様にとって最適なホームを探されてきました。でも、ホームは、ご自宅に代わってこれから末永く夫婦一緒に暮らしていく生活の場です。A様ご自身の暮らしを想像できない場所が「第二の家」になるでしょうか。
私は、体制が万全であることはもちろん前提となりますが、お元気なA様も違和感なく今までと同じようにいきいきと暮らせることがもっとも重要ではないかと思い、改めて「一度、住宅型ホームをご覧になってみませんか?」とご提案しました。
「当たり前の暮らし」という幸せ
A様は2つの住宅型ホームを見学されました。「住宅型」について少し誤解があったようで、十分な体制があることに安心されたようでした。また、ご入居者様のいきいきとした様子に驚かれていました。ホームだからという特別な感じのない、当たり前の暮らしがそこにはありました。最終的に、息子様宅に近い、居室にミニキッチンのあるタイプを選択されました。最初にご覧いただき気に入っていただいたホームと同じシリーズで、重厚感のある雰囲気も決め手になったようです。ご夫婦で体験利用をしていただき、その後すぐにご契約、ご入居となりました。体験利用では、ご主人様に、スタッフのきめ細かい対応がとても心地いいとおっしゃっていただけました。
居室はお一人ずつ別々に、ご主人様は利便性を考えてダイニングルームに近い1階のお部屋、A様はティールームに近い3階のお部屋を選ばれました。
A様は、ご自宅で介護されていたときよりも、ご夫婦二人で過ごす時間が増えたとおっしゃっています。また、介護の負担がなくなって、「毎日の食事作りは大変だったけれど、暮らしの中で大切なことだった」と気づいたそうです。「当たり前の生活が幸せなのね」と笑顔でおっしゃるA様を見て、思い切って住宅型をおすすめして本当によかったと思いました。
介護の必要なご主人様と、お元気なA様、そしてご家族様、それぞれのご希望をかなえるため、介護保険のどんなサービスをどのように利用するかまで、ご本人様、ご家族様と何度も念入りに話し合いました。人に寄り添うということ、人と向き合うということがこれほど大切と感じたことはない、貴重なエピソードでした。