エピソード
vol
73

住み慣れた町から東京のホームへ。「娘孝行します」の言葉に込めた親の思い

2017年07月25日

住み慣れた町から遠く離れた、娘様のご自宅近くのホームへのご入居。思い出がつまった家を離れる寂しいお気持ちを受けとめ、ホームのみんなであたたかくお迎えしたい。そのために……。

私(お客様相談担当のM)がご相談を受けた事例を紹介いたします。

離れて暮らすご両親をとても心配されていた娘様

A様は80代の女性で、地方のとても美しい町に、ご主人様と二人暮らし。ご夫婦とも要支援1でしたが、手入れの行き届いた庭がご自慢の御屋敷に、お二人で元気に生活されていました。とはいえ、ご自宅は高台にあり、町には坂も多く、80歳を過ぎて足腰の弱ったご夫婦にとって日頃の買い物などは大変なことでした。

A様ご夫妻には娘様が一人いらっしゃいます。実家から遠く離れた東京で、仕事と家庭を両立しながらの忙しい日々のなか、離れて暮らすご両親のことを心配されていました。娘様は、お父様やお母様の「腰が痛くて…」「歩くのがつらくて…」といった声を聞くたび、忙しい仕事の時間を割き、新幹線で3時間半かけてご両親のもとへ駆けつけました。

「ホームに入るならベネッセで」と考えてくださっていたA様

今はまだ、お二人でなんとか暮らせていますが、これから先を考えるとホームへの入居も視野に入れたいとのことで、娘様と一緒に地元のホームをいくつか見学をされていたそうです。じつはA様ご夫妻は、以前、新聞でベネッセスタイルケアの記事をお読みになり、「もし老人ホームのお世話になるなら、ベネッセで」とお考えになっていました。
実際に地元のベネッセのホームを見学されて、雰囲気が明るくアットホームなところを気に入ってくださり、「将来、入居を考えたい」とおっしゃっていたとのことでした。

ただ、娘様には「離れているとやはり心配。できるなら、すぐに会いに行ける所にいてほしい、こちらに呼び寄せたい」という思いがありました。
そこで娘様は、娘様のご自宅に近いホームを訪問され、私に相談をされました。娘様からこれまでのお話を聞き、娘様のお住まいに近い新しくオープンするホームをご覧いただきました。緑の多い、閑静な住宅街にあるホームで、娘様には「明るくて、雰囲気もいい。新しいホームなのでお部屋も選べるし、心配性の母もここなら」と気に入っていただけました。

住み慣れたご自宅を離れるお気持ちを受けとめ、大切にする

しかし肝心なのは、ご入居いただくA様ご夫妻のお気持ちです。住み慣れたご自宅を離れて、東京のホームでの暮らしとなると、不安や心配は尽きないとは思います。それでも、お越しいただく以上は、安心してA様ご夫婦らしい生活を送っていただきたいと考えました。

そこで、ご入居前のアセスメント(事前のお打ち合わせのためのご自宅訪問)のため、A様のご自宅に、おうかがいしたい旨を娘様にお話ししました。娘様は「地方の実家に行っていただけるのですか?」と驚かれたご様子でしたが、ベネッセはアセスメントをとても大事にしていることをお伝えしたところ、これで両親も納得して入居できるだろうと心強く思っていただけたようです。

アセスメント当日は、ホーム長、サービスリーダー、ケアマネジャー、私の4名で訪問し、こちらからお話しするだけでなく、A様ご夫妻のお気持ちをゆっくりとおうかがいしました。
A様は私たちに、もともとは地元のホームへの入居を考えていたこと、娘様に心配をかけたくないから東京のホームに決めたことなどをお聞かせくださいました。

後悔しないホーム選びのお手伝いを

その後、ご入居までの間に、A様から「お部屋の間取りは?」「お風呂はどうなっていますか」など電話でのお問い合わせにお答えしたり、A様にお手紙を送ったりしながら、親しくさせていただきました。ご主人様からは俳句の添えられたご丁寧なお手紙をいただき、これからのお二人の生活に改めて責任を感じ、身の引き締まる思いがしました。
ご入居当日、A様の「娘孝行します」という言葉がとても印象的でした。

A様ご夫妻はすぐにホームでの生活に慣れ、娘様やお孫様がときどきご来訪されるなど、楽しく過ごされていました。ご入居1年後、残念ながらご主人様がお亡くなりになりました。娘様からは「父と最期の時間を幸せに過ごすことができました」とお礼のお手紙をいただきました。その後も娘様とお手紙の交流は続いています。

私はお客様相談担当として、ご入居前にわからないこと、不安なことがあれば、どんなに小さなことでも言っていただけるよう努めています。また、ご入居後もときどきお部屋をうかがい、たわいもないお話しをさせていただきながら、ご要望などを受けとめられるよう心がけています。またそうすることで、今日は少し顔色がよくないかも?といった小さな気づきにつながっています。

お客様相談担当は、「何でも相談担当」に近いものがありますが、すべては、「ご入居いただく皆様に、絶対に後悔してほしくない」という思いからです。これからもこのスタイルを貫いていこうと思っています。
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