エピソード
vol
40

認知症で怒りっぽくなってしまったお父様が再び落ち着ける場所を求めて

2014年12月25日

「家族が自宅を留守にする期間だけ、ホームを定期的に利用したい。」そんなご相談から、繰り返しホームを利用されるうちに、ホームでの生活を気に入ってくださり…。

私(お客様相談担当O)がご相談を受けた事例を紹介いたします。

旅行の間1週間だけのご利用相談

「家族が旅行に出る1週間だけ、利用をすることは可能ですか?」と担当のケアマネジャー(※以下ケアマネ)からご相談がありました。当社のホームでは長期のご利用が優先になりますが、空室があるホームでは短期のご利用もお受けしています。

お部屋のご用意が可能かのお返事は、ご利用の1ヶ月前になること。集団生活になるので事前に健康診断書のご提出と、ご本人様とのお顔合わせのお時間をいただくこと、などを相談いただいた娘様へお伝えいただきました。

ご利用されるのは、2世帯同居中の90代のお父様。脳のご病気で30年前に手術をされた以降はずっとお元気でしたが、4年位前から認知症状が出て通院するようになり、30年前から飲み続けていたお薬を止めることになった途端、怒りっぽくなってしまいました。

お薬を再開すると今度は、短期間の記憶がほとんどない状況となり、自宅にいても「家に帰る」と外出され、迷子で警察のお世話になってしまいました。以来、ご入浴などはご自分で毎日されていますが、一人での外出は禁止され、デイサービスに週4日通い、ドライブなどのイベントに介護保険の枠を超えて参加されることを楽しみにされて生活されているとのお話でした。

短期で定期的なご利用を希望される

お父様は、知らない人と会うことにとても警戒心を抱かれるということでしたので、ホームのスタッフとの顔合わせには、お父様が絶対的に信頼されているケアマネに協力してもらいました。

ケアマネの訪問に私が見習いとして付き添うという形でお父様との顔つなぎをしてもらい、それが功奏し、初対面でもお父様から親しく話しかけていただくことができました。

「以前利用した所は手を掛けてくれなかったので、今回は有料老人ホームにお願いをしたいと思った」とおっしゃる娘様は、予想外にお父様と私の話が弾んでいる様子を見て大変喜ばれ、まだご利用前にも関わらず、2回目の短期利用の予約までしていただきました。

実際にご入居された後も、当初は「自宅に帰りたい」という言葉が出る日もありましたが、その後はスタッフとお話をされながら楽しく過ごされ、「ここは良い所だ」と、穏やかに無事日程を過ごされました。

娘様からは「短期で定期的に利用させてほしい」というありがたいお言葉も頂戴しましたが、ただそれには一つ問題がありました。

冒頭でも書いた通り、ホームでは長期でのご利用の方を優先させていただいています。その時点で、気にいっていただいたホームのお部屋は残り1室となっており、今後の短期利用のご予約が承れない状況でした。

今後も頻繁にご利用いただけるようであれば、長期契約でお部屋を押さえていただき、好きな時にお使いいただく方法もあることをご提案しましたが、娘様からは「自分で父を看たいと言う気持ちもあるし、旅行の期間だけでいいのです」とのお返事でした。

ホームへ「ただいま」と帰られる生活

2回目のご利用当日。お父様は1ヶ月前に会ったスタッフやほかのご入居者様やスタッフのことも少なからず覚えていらっしゃる様子で、すぐにほかのご入居者様と、親しそうに話しはじめられました。

その姿を感慨深げに見つめられていた娘様から「やはり長期契約を結びたい」とお申し出があったのは、それから間もなくのことでした。短期でご利用いただく間に、ホームがお父様にとっての「居場所」となっていることに気付かれ、当面は月の半分はご自宅で、もう半分はホームで過ごされる生活を始めることになりました。

その後、「真夏はクーラーを切ってしまい、一人で過ごすのはとても危ないので。」と体調管理のため、段々とホームでお過ごしになる日が増えてきました。

お父様は、ご自宅に帰られても賑やかなホームが恋しくなられるようで「ホームに帰る」とおっしゃるそうで、ホームに戻られる時は、スタッフを見て「ただいま」とご挨拶してくださるようになりました。

そんなお姿を見て、スタッフも私たちのホームがお父様のご自宅になったと、うれしい気持ちでお迎えをしています。
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