エピソード
vol
11

寂しさと悲しみに暮れるお母様を救いたい一心で

2014年01月06日

お父様の突然の死を境に、お母様と息子様たちの間に確執が…。最愛の伴侶を失ったお母様は、寂しさを抱えたまま心を閉ざし、家族以外の「他人」に救いを求めました。心配された息子様は、決意を持ってある行動をとられました。結果、親子の絆は―。

私(お客様相談担当M)がご相談を受けた事例を紹介いたします。

お父様の死、そして親子の確執

ご実家を離れ、それぞれ独立されている二人の息子様。数ヶ月前までお元気だったお父様が病気になり、闘病生活を続けられましたが、突然ご逝去されました。それ以降、息子様たちはお母様のことを心配され、寂しさを感じないよう、これまで以上に深く関係を持とうとされました。しかし、お母様には迎え入れず、さらに相続の際に「息子たちに財産を全部取られた」と口にされたことで、親子の関係に溝が入ってしまい、だんだんと疎遠になっていきました。
そんな時期に、お母様の寂しさに入り込んできた人物がいました。息子様は、お母様がお一人でどう過ごされているか、あまり把握できていない状況でしたが、お母様は「友達だ」とおっしゃり、その方を心の拠りどころにされているようでした。ところが、ある出来事がきっかけで、お母様の身の回りで多くの貴重品などが無くなり、同時に使途不明金が増えていることも発覚しました。
それを機に、息子様は「お母さんの責任とはいえ、これ以上は放ってはおけない。もっと寄り添わなければ」と、お母様の将来のことを真剣に考え始めました。この頃、私は、息子様から老人ホームへの入居についてのご相談を受けるようになりました。

息子様の決意

息子様のお母様を思う気持ちは強かったのですが、常にどうしたらよいか悩みながら、心が揺らいでいらっしゃいました。そこで私は、息子様がお気持ちを整理できるよう、解決策を考えました。息子様と一緒に迷い続けながらも導き出した結論は、そのお友達との関係をすべて断ち切る環境づくりでした。
そのためにはまず、お母様が身を隠せる場所が必要、ということで、ご実家から離れた老人ホームを利用していただくことに。その代わりに、息子様はお母様の寂しさを埋められるよう、お母様と深くかかわっていくことを決意されました。そして、『お母様を本当に愛している』ということを、日々、言葉や態度で示されるようになりました。お母様が「冷やし中華が食べたい」とおっしゃれば、お嫁様が手作りした冷やし中華をホームにお持ちくださいました。お母様も、「おいしい」と、うれしそうに召し上がっていらっしゃいました。

家族のつながり

そんな日が3ヶ月ほど続いたある日、息子様は、「僕たちはお母さんのことを本気で心配しています。だから、このままこのホームに居てほしい。お願いします」とお母様に頭を下げられました。すると、お母様は、「私も、このままここに居たい」とおっしゃったのです。そのお言葉をお聞きになり、息子様は涙を流されていました。
お父様が亡くなられた直後は、お母様の本当の気持ちになかなか気づくことができなかった2人の息子様。今は、お母様の寂しさに応えていらっしゃいます。お嫁様同士もとても仲がよく、お義母様を心配されています。『このご家族の繋がりがあれば、もうお母様は寂しさを埋めるために他の誰かを求めるようなことはしないだろう』と、私は強く確信しました。寂しさを拭えるのは、家族の深い愛情にほかならない、ということを教えていただきました。
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