エピソード
vol
21

生活の場面を大切にした介護を求めて~認知症専門病院を退院されて~

2014年04月03日

認知症の進行により、病院に入院されていたお母様。治療の甲斐あってご状態が落ち着かれ、退院を検討。「好きな洋服を自分で選んで着る生活はできますか?」。ご家族様からのご相談には、お母様への願いが込められていました。

私(お客様相談担当O)がご相談を受けた事例を紹介いたします。

認知症専門病院で落ち着かれ

ご家族様と同居されていた78歳のお母様は、週5日、デイサービスに通われていましたが、徐々に認知症が進み、同じ単語を何度も繰り返されたり、お食事を口に詰め込み過ぎてむせてしまったり、ということが続くようになりました。ある日、お薬を大量に飲み過ぎてしまったことをきっかけに、きちんと専門家にみてもらおうと、認知症専門の病院へ入院されることになりました。
1年が経ったころ、病院からは「そのままずっと居てもよいですよ」と言われていましたが、ご状態が落ち着いてきたこともあり、ご家族様は「母には、もっと母らしい生活を送ってほしい」と、退院の検討を始められました。
しかし、共働きのご家族様が、車椅子の生活になったお母様をご自宅で看るのは難しいということもあり、いつでも通いやすいご自宅の近くにある老人ホームへご見学にいらっしゃいました。

本来のお母様のご生活を取り戻すために

ご見学時、ご家族様からは、ご生活の一つひとつの場面におけるご要望とご質問を、丁寧にいただきました。
「今はずっと病院着を着ていますが、もともとお洒落な母だったので、普段着を持って行って、自分で好きな洋服を選んで着る生活を送らせたいのですが、できますか?」
「母は、詩集や本をたくさん持っていて、以前は本に囲まれて暮らしていました。ホームに入居するときには本棚を持っていってもよいですか?」
「ゆっくりと母のペースで入浴してもらいたいのですが、病院では集団入浴となり、慌ただしく入っています。母とスタッフのマンツーマンで、ゆっくりと入れてもらうことはできますか?」
「病院では定時の排泄介助しかできないと言われて、おむつになってしまいましたが、本人の訴えがあれば、その都度お手洗いに座らせてくれますか?」
「お部屋にこもってテレビを観てばかりの生活ではなくて、声をかけてもらったり、昔の海外旅行の思い出話を聞いていただいたり、行事に参加しながら、いろいろな人と交流しながら過ごすことはできますか?」

治療を終えられたこともあり、「“患者として”ではなく、“一人の人として”生活をさせたい」。そんなお声が聞こえるようでした。
お元気な頃は、海外旅行がお好きで社交的。とてもお洒落で、ご自分のペースを大切にされていたお母様。認知症の症状がある今でも、昔から好きな作家の詩集のお話が弾みます。ご家族様がご要望として質問をされた数々のことは、お母様本来のご生活を取り戻すために、お母様のお気持ちを代弁されたものでした。

お母様らしい生活を大切にしながら

ご入居後は、詩集や本に囲まれたお部屋で、毎日のお洋服をスタッフと一緒に選ぶことから1日が始まっています。ゆっくりと熱めのお湯でご入浴されることや、おむつではなくお手洗いに座って排泄をすること―。お母様には、ご自分のペースで楽しみながらお過ごしいただいています。
さまざまな行事へも参加され、ホームでできたお友達と昔話で盛り上がり、さらに、歩行の練習なども始められました。
そんなご様子をご覧になり、ご家族様もたいへん喜ばれています。「母らしい生活ができるようになって満足です」というお声をいただけました。
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