エピソード
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伴侶を亡くした喪失感で発症した「うつ病」がホームの生活で癒されて
2014年11月27日
最愛の伴侶を亡くされた喪失感から「うつ病」を発症され入院されていたA様。息子様より退院後の一人暮らしは難しいとご相談を受けました。
私(お客様相談担当N)がご相談を受けた事例を紹介いたします。
伴侶を亡くされた喪失感で発症した「うつ病」
息子様が独立されて以来、旦那様と二人暮らしだった60代のA様。もともと足が悪く、食事や掃除などの家事の一切を旦那様がされていました。そんな旦那様が急逝された後、A様は大きな喪失感を感じ「うつ病」を発症され、入院して治療をされていました。すべてを旦那様に頼られていたA様の生活を心配された息子様は、「退院後も人の手があるところでなければ生活が成り立たない」とホームを探し始められ、相談に来られました。
息子様にはアットホームな雰囲気を気に入っていただき、A様ご本人もホーム長、スタッフの話を聞き、ホームで生活していくことに納得され、退院に合わせてご入居いただくことになりました。
徐々に生活のリズムを作り、閉じこもりがちな生活に変化が
私は、A様と初めてお会いした時の少しぎこちない笑顔から、A様の第一印象を「子どものように、はにかんだ笑顔をする方だな」と感じていました。ところが、ホームへ入居された当初のA様は、お部屋のカーテンを閉め切り、お食事以外の時間はじっとお部屋に閉じこもられていました。お部屋を訪問したスタッフとは話をされますが、ほかの方とは一切お話をされず、お食事も一人で召し上がられていました。
私は、もっと積極的にホームの生活を楽しんでもらおうと思い、毎朝「おはようございます。今日は天気がいいのでお部屋の換気をしましょう」とカーテンと窓を開けにお部屋へうかがいました。
「明るいのは嫌なのよ」と当初は渋い顔をされていたA様ですが、毎朝お部屋にうかがいその日の予定などを話しているうちに、私がご挨拶にうかがうことを一日の始まりと感じていただけるようになり、生活のリズムも少しずつ整い、次第に積極的に世間話をしてくださるようになりました。
役割を持つことで、気持ちが前向きになり、生活の幅も広がり
毎日ホームの予定をお伝えしていたので、歌を歌うことなど気に入ったものから、徐々にホームのアクティビティにご参加いただけるようになりました。ある日、認知症をお持ちのご入居者様がご自身の部屋がわからずに困られていることをスタッフに伝えていただき、スタッフがお礼をお伝えするということがありました。それ以来、ほかのご入居者様が何かに困られている様子があると声をかけたり、都度スタッフに伝えてくださるようになり、ご本人も少しずつホーム内で役割を持ったことで、以前よりもいきいきされてきました。
買い物のアクティビティに参加したことをきっかけに、近所のお店に買い物に行きたいとおっしゃるようになり、「足が不自由だから、自転車を持ってきて置かせてもらいたい」とお申し出がありました。息子様からも「入院前は自転車に乗って買い物に行っていました。生活の幅も広がるのでぜひ、お願いします」とお申し入れをいただき、使いなれた自転車をうれしそうにお持ちくださいました。
さらに、しばらくすると「これ以上足を悪くしないようプールでウォーキングをしたいの」と、ご自分で近所のプールへ通われるようになりました。
ご入居当初、カーテンを閉めてお部屋に閉じこもられていた頃とは見違えるようなA様の姿に、息子様は大変喜ばれていらっしゃいました。
私も、「今日はこんなことがあった」とはにかんだ笑顔でお話しいただくA様の表情をうかがいながら、ホームにご入居いただいたことで自宅にはなかった「役割」や「生きがい」をもって生活いただけるようになったことを象徴的に思いだす事例です。