体験談
vol
30

帰宅願望が見られた母も今は、お仲間に囲まれ愛嬌をふりまくほど暮らしになじんでいます。

2016年11月30日
  • ご入居時期
    2015年8月
  • ご入居者様
    98歳 女性
お話を
伺った方
O様75歳(ご長女)
ホーム名
リハビリホームくらら砧公園

集合住宅の1階にお母様、3階にご自身のご家族とスープの冷めない距離でそれぞれ自立して暮らしていたO様ですが、お母様が90歳で認知症を発症されてから、お金への執着が見られるようになりました。毎晩のように呼び出されるO様は心身ともに疲れきり、お母様に優しく接することができなくなったそうです。

私たち家族は、40年前から実家の2世帯住宅で同居していました。同居して5年後に父が亡くなり、集合住宅に建て替えて1階に母、3階に私たちが住むようになりました。当時、母は50代の若さでしたので、父の死を乗り越えてからはお稽古事をしたり、友人たちと旅行や観劇に行ったりして、私から干渉されるのを嫌がるほど一人暮らしを満喫していました。母はとてもおしゃれで服装に気を使い、週1度の美容院通いも欠かしませんでした。
私は25年前に夫を亡くし、2人の子どもを育てるためにもずっと仕事をしていましたので、元気に一人暮らしをしている母に安心していました。80歳を超えてからは、だんだんと一人暮らしの愚痴を親戚中にこぼすようになったものの、仕事をしている私には頼らず、ヘルパーさんをお願いして一人の生活を維持していました。
ところが、90歳で認知症と診断されてから「お金がなくなった、盗られた」と頻繁に言うようになり、お金への執着が見られるようになりました。連日のように夜中に「なくなったお金を探して」と電話で呼び出され、家中をひっくり返すことが続くようになり、仕事をしている私は心身ともに疲れきり、だんだんと母に優しく接することができなくなりました。

お母様が97歳まで、O様は仕事をしながら介護を続けましたが心身の限界を感じ、老人ホームへの入居を決めました。背中を押してくださったのは、ケアマネジャーと遠方に住む妹様でした。

母はお金への強い執着だけでなくヘルパーさんに作っていただいた食事を「おいしくない」と拒否したり、「あの人嫌い」と避けてしまったりするので、ヘルパーさんを何人も交代していただきました。私は、ヘルパーさんたちへの心苦しさと母に対して優しくできない自分を責める毎日に疲労困憊し、ケアマネジャーさんに相談したところ、老人ホームへの入居をすすめてくださったのです。
遠方に住む妹も「そろそろホームに入居してもらおうよ」と言ってくれ、妹と手探り状態でホームを探し始めました。ケアマネジャーさんに紹介してもらったり、自分たちで探したりと12軒ほど見学していくうちに、経営母体がしっかりしていて、どのホームも清潔でスタッフの方たちの対応がよかったベネッセに絞ることにしました。
ある日、妹と自宅近辺を歩いていて見つけたのが『リハビリホームくらら砧公園』でした。パンフレットをいただこうかと話していたとき、偶然ホーム長さんが外にいらして「何かお力になれますか?」と優しく声を掛けられ、とても印象がよかったので見学をしてすぐに入居を決めました。
母を説得するのは手ごわいとホーム長さんやスタッフの方に相談した結果、「私の体調が悪くしばらく入院するので、ホテルのようなところに泊まって」と言うことになりました。母は、意外なほど素直に「ああ、いいわよ」と納得してくれました。

帰宅願望が見られたお母様でしたが、スタッフの顔を覚えお部屋を行き来するお仲間ができてからはすっかり落ち着かれ、険しかった表情もやわらかくなり、O様も優しく接することができるようになったとおっしゃいます。

入居当初は、帰宅願望が強くスタッフの方たちが大変だったと思います。「帰りたい、帰りたい」と玄関の前に立ち尽くし、夕方になると強引に外に出ようとしたそうです。そのたびにスタッフの方が散歩に連れだしてくださるなど、気分転換をするとホームに戻って食事をする、そんな繰り返しがずいぶん続いたと聞いています。
私は、入院という設定でしたし、会ってしまうと帰宅願望がより強くなりそうで、しばらくは訪問を控えていました。入居して半年ほど経ってからはスタッフの方たちの顔を覚え、お部屋を行き来するお仲間までできて、険しかった表情がやわらかくなってきました。
今年の2月に左の大腿骨、9月に右の大腿骨を骨折して手術をしましたが、いずれも2週間で退院して、ホームでは「歩きたい」とリハビリに前向きに取り組み、歩けるようになりました。スタッフの方たちが廊下を歩くリハビリを根気よく続けてくださったおかげと感謝しています。食事も普通食を完食し、スタッフの方たちやお仲間に愛嬌を振りまくほどホームの暮らしになじんでいますが、私の顔をみると思い出したように「私も一緒に帰る」と言います。それでも帰る場所が自宅ではなく生まれ育った実家らしく、私のことも娘ではなく母の姉だと思っているようです。
私は今年6月に定年退職し、子どもたちも独立したので母を連れて帰ったほうがいいのかと日夜葛藤していますが、ホームにお願いしていることで母に対して優しくなれるので、なんとか自分の思いを克服していきたいと考えています。

page-top