【介護の基礎知識】生活支援コーディネーターの役割とは?

公開日:2021年12月22日
生活支援コーディネーター

「生活支援コーディネーター」とは、高齢者ご本人やご家族の実態や地域資源を把握しながら高齢者が暮らしやすい環境づくりを推進していく役目を担った存在です。

生活支援コーディネーターは、”地域内の生活支援・介護予防サービスの提供体制の構築に向けたコーディネート機能を果たす者”とされ、高齢者にとって最初の窓口になることも多いです。

本記事では、生活支援コーディネーターの役割や活動内容などをわかりやすく紹介します。

地域包括ケアシステムを支える生活支援コーディネーター

生活支援コーディネーターを理解するうえで、まずは「地域包括ケアシステム」から理解しておきましょう。

地域包括ケアシステムとは

少子高齢化が進む日本では、2025年に団塊の世代が75歳以上になります。そのため、今後介護や医療に対する需要はますます増えると予想されています。そこで厚生労働省では、介護が必要になっても、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるように、「医療・介護・予防・住まい・生活支援の5つを柱とした地域の包括的な支援・サービスの提供体制」を構築しようと試みています。これが、「地域包括ケアシステム」です。

住民と地域をつなぐ生活支援コーディネーター

生活支援コーディネーターの役割をひとことでいうと、「住民と地域との“つながり”を創る橋渡し役」です。
地域包括ケアシステムでは、地域の特性に応じて、自治体や各事業所、民間企業が主体的に連携しながら高齢者の暮らしを支えることを目指しています。生活支援コーディネーターは、このシステムの中で、支援を必要とする人とサービス(各機関)をつなげたり、ニーズに合わせた新たなサービスをつくったり、各機関同士の連携をサポートするなど、地域の高齢者支援全体をコーディネートする役割を担っています。そのため、「地域支え合い推進員」と呼ばれることもあります。

なお、生活支援コーディネーターになるための資格の規定は特にありませんが、地域に根ざした活動が基本となるため、地域の特性の理解と地域サービス提供機関と連絡調整できるコミュニケーション能力は必須と言えるでしょう。国や都道府県が実施する研修を修了した者が望ましいとされています。

生活支援コーディネーターが担う役割

生活支援コーディネーターの活動範囲は、領域によって大きく第1層・第2層・第3層の3つに区分できます。
ただし、区分は完全に独立しているわけではなく、相互に重なる部分もあります。

第1層 市区町村全域におけるサービスの開発

第1層では、担当市区町村全域において、地域の社会資源を把握し、地域住民のニーズに合わせた新たなサービスを開発し、新サービス供給のための人材育成も行っていきます。また、地域のボランティアなどの支援団体への情報提供なども行いながら、地域サービスの向上を目指します。

第2層 小地域のネットワーク構築

第2層では、市区町村全域を小地域(日常生活圏域)に分け、それぞれの小地域で、住民のニーズや、社会資源を確認しながら、サービス提供事業者と地域内の団体間でのネットワークを構築し、連携を支援していきます。

第3層 個別ニーズとサービスとのマッチング・人材育成

第3層においては、支援を必要とする方への支援も行います。アセスメント(客観的評価)と生活支援プランづくりなど通して、ニーズとそれに対する適正なサービスとのマッチングを支援していきます。

生活支援コーディネーターの配置先

生活支援コーディネーターがどこに配置されるのかは、市区町村によって異なります。小規模の自治体では、地域包括支援センターとの連携を前提とした上で、市役所や役場内の福祉関連部門への配置されることが多く、規模の大きい自治体では、社会福祉法人やNPO(特定非営利法人)などの団体への業務委託する場合もあり、委託先に配置されることもあります。

地域の支援体制構築に携わる生活支援コーディネーター

生活支援コーディネーターは、暮らし慣れた場所で高齢者が安心して暮らし続けられるように、地域のニーズを掘り起こし、そのニーズに合った福祉サービスを発掘し、適切な事業者や関係機関につなげ、コーディネートする役割を担う存在です。
ただ、高齢者ご自身はもちろん、高齢になるご家族の今後について不安があるのであれば、いきなり生活支援コーディネーターを探すのではなく、お住まいの地域を管轄している地域包括支援センターに相談してみることおすすめします。地域包括支援センターは高齢者のさまざまな相談に対応してくれる存在です。どこにセンターがあるのか、ほとんどの場合は市町村役場のホームページなどで確認することができます。相談をしながら納得できる選択を検討していきましょう。

監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)
川上 由里子
監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)

大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、大手不動産株式会社「ケアデザイン」の立ち上げに参画。支える人を支えるコンサルティングを開発実施。著書に[介護生活これで安心](小学館)「働きながら介護する〜ケアも仕事も暮らしもバランスとって〜」(技術評論社)。

自身も働きながら父親の遠距離介護を体験。介護、看護、医療サービスを利用しながら在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。現在は介護関連のコンサルティングの他、講演、執筆活動を行っている。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。

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