【介護の基礎知識】介護助手(介護補助)とは?役割や対応内容をわかりやすく解説

公開日:2021年12月22日更新日:2023年05月27日
介護助手(介護補助)

介護サービスを提供する訪問介護事業所や介護施設には、多数の介護スタッフが在籍しています。「介護助手」は、このような介護スタッフのうち、「介護福祉士」などの資格をもつ介護スタッフのサポートをするのが主な役割です。

本記事では、介護助手の役割について詳しくみていきます。

介護助手(介護補助)とは?

介護助手とは、介護福祉士などの有資格者が、専門性の高い業務に専念できるようにサポートする役割を担っています。施設によっては「介護補助」と呼ばれる場合もありますが、本記事内では「介護助手」と表記しています。
介護助手は、原則として介護を受ける方の身体に触れる「身体介護(食事介助、排せつ介助、入浴介助など)※」を行いません。食事の配膳や掃除、ベッドメイキングといった「身体に触れることのない範囲」でのサポートを行います。
なお、「介護助手」という資格はなく、仕事内容に明確な定義はありません。一般的に資格のない介護スタッフ全般を介護助手(介護補助)と呼ぶことが多いです。自治体によっては、介護助手を目指す人向けに、介護の基礎的な講座を開設しているところもあります。
※身体介護(食事介助、排せつ介助、入浴介助など)を行うには、「介護職員初任者研修」修了以上の資格が必要になります。

介護福祉士との違い

介護福祉士と介護助手の違いは、資格の有無です。
介護福祉士は、介護関連の資格で唯一の国家資格です。養成施設や関連学校を卒業した人、もしくは実務経験を積んだ人が介護福祉士国家試験に合格することで資格を取得できます。
介護福祉士が、身体介護を含めたさまざまな介護サービスを提供できる一方で、資格をもたない介護助手は、前述の通り身体介護を基本的に行いません。

ホームヘルパーとの違い

ホームヘルパーと介護助手の違いも、資格の有無です。
ホームヘルパーは、訪問介護員の通称です。介護が必要な方の自宅を訪問して、介護サービスを提供する役割を担っています。ホームヘルパーになるには、「介護職員初任者研修」もしくは「介護職員実務者研修」の修了が条件です。なお、ホームヘルパーも身体介護が可能です。

看護助手との違い

看護助手は、介護助手と同様、資格を必要としない仕事です。
ただし、看護助手は名前の通り看護に関するサポートを行います。カルテの整理や、検査室・リハビリ室への付き添いなど、看護師の補助、患者の世話、環境整備が仕事です。介護領域での補助を行う介護助手とは、そもそもの業務範囲が異なるといえるでしょう。

介護助手(介護補助)の役割・仕事内容

介護助手の仕事内容について、身体に直接触れる身体介護(食事介助、入浴介助、排せつ介助など)以外ということになりますが、明確に定められていないため、所属場所によって対応内容は異なります。
多くの場合は以下のようなことを対応範囲することが多いようです。

  • 食事の配膳やベッドメイキング
  • 掃除や片付けなど
  • 備品の準備・整理など
  • 認知症の方の見守り
  • サービス利用者の話し相手など

介護助手(介護補助)導入の背景

「介護助手」の仕事は、近年新しくできたものです。各地に先駆けてモデル事業をスタートさせた三重県でも、始まりは2015年。まだ全国に広く根付いているとまではいえません。
しかし、厚生労働省は、介護領域における人材確保のため、2022年度に介護助手普及に向けた「介護助手等普及推進員(仮)」を設置する方針です。今後、介護の必要性が高まる中で、介護助手の活躍の場も広がっていくと考えられます。
介護助手が必要とされる背景については、大きく3つの目的があります。

介護人材の確保

少子高齢化が進む中で、介護人材の不足は大きな問題になっています。
平均寿命が延び、介護を必要とする高齢者が増加しているにもかかわらず、少子化により介護の担い手になれる若者や有資格者は増えないと予測されます。いずれ介護人材がいなくなり、適切な介護を受けられない高齢者が出てくるでしょう。
そこで、無資格でもできる介護助手制度を設けて介護職へのハードルを下げ、介護の担い手不足を緩和しようとしているのです。

介護サービスの質の向上

介護の仕事には、身体介護の他、特別なスキルを必要としない掃除や生活必需品の買い物も含まれます。これらの仕事をすべて有資格者が行うと、負担が大きくなってしまうでしょう。
資格が必要な仕事については、介護福祉士や訪問介護員(ホームヘルパー)が担当し、それ以外の補助的な業務を介護助手が担当する。このように分担できれば、有資格者の負担が軽減し、よりきめ細かな介護サービスを提供できるようになると考えられています。

高齢者の就労支援

一般的に65歳以上を「高齢者」と呼びますが、まだまだ元気な方も多いのが現状です。元気な高齢者が、介護助手として働ければ、毎日の生活にハリが出て、収入にもつながります。
また、介護助手の主な仕事は補助的な業務です。身体的負担が少なく、高齢者でも無理なく働けます。介護助手は、介護を受ける高齢者だけでなく、まだまだ元気で働きたい高齢者にとってもメリットのある制度なのです。

介護助手とご利用者が接する場所

介護業界で今後ますます重要視される介護助手。訪問介護事業所の他、特別養護老人ホームなどの介護施設や、デイサービスのような通所施設が主な所属先となります。
それぞれの施設について、概要を説明します。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上の方が入所できる公的な施設です。長期間の入所を前提としており、入所後は施設内で介護を受けながら生活します。
特別養護老人ホームでは、それぞれの施設に所属している介護スタッフが生活支援や介護サービスの提供を行います。介護助手も、配膳や食堂の掃除、食器洗い、居室の掃除、お風呂の用意、洗濯、備品管理、レクリエーションの補助など、さまざまな役割を担います。

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設(老健)は、入院していた方が退院をする際、スムーズに自宅の暮らしへ移行できるようにリハビリを行う施設です。「入院する必要はないけれど、医療ケアや介護が必要で今すぐ自宅に戻るのは困難」という方が対象の施設です。
そのため、特別養護老人ホームのような長期入所ではなく、短期の入所を前提としています。また、介護だけでなく、リハビリや医療ケアも行われます。 清掃や見守り、声がけの仕事は介護老人保健施設でも必要となるため、介護助手が担当する場合もあります。

有料老人ホーム

有料老人ホームも、特別養護老人ホームと同様に、高齢者が入所して生活を営む施設です。特別養護老人ホームとの違いは、民間企業が運営している点です。要介護認定がなくても入所できる施設も多く、レクリエーションやイベントが随時開催されます。
有料老人ホームにおける介護助手の役割は、特別養護老人ホームと同様です。特別養護老人ホームよりも要介護度の低い入所者が多かったり、サークル活動やイベントが活発だったりするため、利用者との距離がより近くなる可能性もあるでしょう。
ただし、実際の雰囲気や介護助手の業務は、それぞれの有料老人ホームによって異なります。

デイサービス

デイサービスとは、自宅で暮らしている高齢者が、施設・事業所に通って入浴や食事、排せつのサポートを受けられる介護サービスです。 特別養護老人ホームや有料老人ホームのように施設に入居するわけではありませんが、毎日の暮らしで必要となる介護サービスを施設・事業所内で受けられます。
デイサービスの介護助手も、利用者の見守りや掃除、片付けといった補助的な業務を行います。

訪問入浴介護

訪問入浴介護は、介護保険サービスのひとつです。訪問入浴車で利用者の自宅を訪れ、入浴を介助するサービスです。一般的に介護スタッフ2名、看護スタッフ1名の3名体制で対応します。この中で備品の準備や片付けなどを介護助手が対応します。

支援を必要とする高齢者の快適な生活を支える介護助手

介護助手は、専門資格を有しているわけではありません。しかし、専門職スタッフのサポートだけではなく、施設で暮らす高齢者の身の回りのサポートや見守り、話し相手などの重要な役割を担います。
特に、特別養護老人ホームや有料老人ホームのように入所して生活を行う施設においては、介護助手が担う役割も多岐にわたります。介護助手の存在によって、現場の対応がよりスムーズになるので、大変重要な存在と言えるでしょう。

監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)
川上 由里子
監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)

大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、大手不動産株式会社「ケアデザイン」の立ち上げに参画。支える人を支えるコンサルティングを開発実施。著書に[介護生活これで安心](小学館)「働きながら介護する〜ケアも仕事も暮らしもバランスとって〜」(技術評論社)。

自身も働きながら父親の遠距離介護を体験。介護、看護、医療サービスを利用しながら在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。現在は介護関連のコンサルティングの他、講演、執筆活動を行っている。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。

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