【介護の基礎知識】生活相談員・支援相談員・相談支援専門員の役割と探し方

公開日:2021年12月22日更新日:2022年09月12日
相談員

介護施設や相談支援事業所には専門の知識を持った「相談員」がいます。「サービスの仕組みがよくわからない。」「誰に相談したらいいの。」といったような悩みに応えてくれる相談員ですが、各施設によって名称や役割が異なることもあり、ご利用者にとってはややこしいところもあるかもしれません。このページでは「相談員」の役割についてイメージしやすいように詳しく解説します。

暮らしを支える3種類の「相談員」

生活相談員・支援相談員・相談支援専門員は、介護や障がいに困っている人(ご本人・ご家族)の悩みを聞いて、支援することが主な役割です。

勤務場所によって名称や、一部対応内容が変わるのでここで理解しておきましょう。

  生活相談員 支援相談員 相談支援専門員
対象者 介護保険制度が適用される高齢者を中心とした40歳以上の者 介護保険制度が適用される高齢者を中心とした40歳以上の者 障害者総合支援法・児童福祉法が適用される00歳以上おおむね65歳未満の障害児・障害者
主な仕事 介護が必要な方・ご家族の相談援助
利用・入退所の手続き
関係機関との連絡・調整・連携
援助計画(介護計画)の立案・援助
介護が必要な方・ご家族の相談援助
入退所の手続き
関係機関との連絡・調整・連携、在宅復帰への支援
障がいを持つ方・ご家族の相談援助
関連機関への連絡・調整・連携
サービス等利用計画(ケアプラン)の作成
モニタリング
主な職場・接する場所 特別養護老人ホーム(特養〔介護老人福祉施設〕)
介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)
デイサービス(通所介護等)
ショートステイ(短期入所生活介護)
介護老人保健施設(老健) 指定相談支援事業所
基幹相談支援センター

生活相談員

「生活相談員」は、介護保険制度が適用される特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)やデイサービス(通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護)を利用するときにお世話になる相談員です。主に施設の入退所や利用の手続き、ご利用者やご家族の相談・アドバイス、その他専門的な知識を活かしてサポートに当たっています。

支援相談員

介護保険制度が適用される介護老人保健施設(老健)における相談員は「支援相談員」と呼ばれます。特別養護老人ホームなどで働く「生活相談員」と基本的に仕事の内容は同じで、入退所の手続きやご利用者、そのご家族による日々の相談、苦情などに対応します。

相談支援専門員

相談支援専門員は、障がいを持つ方やそのご家族が、必要な支援をうけて生活を送れるよう、さまざまなアドバイスや各種サービスの調整など対応してくれます。主に障害者総合支援法が適用される「相談支援事業所」や「基幹相談支援センター」などに配置されています。

生活相談員と支援相談員の違い

大きな違いは、勤務先です。基本的に、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームといった介護施設の相談員は「生活相談員」と呼ばれますが、介護老人保健施設(老健)の相談員については「支援相談員」となります。

名称が似ているためたびたび混同されますが、実際のところ、この2つの相談員の仕事内容はほとんど変わりません。ただし職場の性質が異なるため、生活相談員は施設の利用・入所前や利用・入所中の相談、支援相談員は在宅復帰のための相談を受けることが多いです。

ここからは、それぞれの「相談員」の仕事について詳しく解説していきます。

生活相談員の仕事

介護施設で活躍する生活相談員は、窓口の役割にあたります。入所を考えたとき時、最初に対応してくれるのが生活相談員です。詳しい業務を見ていきましょう。

相談・調整・連携業務を担う

生活相談員の仕事は多岐にわたり、また施設ごとに異なります。施設の説明や契約といった手続きのサポートに始まり、入所後の相談、アドバイス、関係者との連携などです。

手続き 施設入所希望者との面談
見学対応
入所受け入れの判断
入所時の契約
費用・施設の説明
退去時の調整
相談 ご利用者の生活
ご家族の悩み
苦情対応
連携・調整 ケアマネジャー、地域、自治体、医療機関など

働き先は介護施設や老人ホーム

生活相談員は介護施設やデイサービス、ショートステイで働いています。各施設によって仕事の内容は多少変わりますが、ご利用者やそのご家族の相談を受け、サポートするのが主な仕事です。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホーム(特養)は、原則要介護3以上の要介護者が入所できる介護老人福祉施設です。

生活相談員の仕事は、入退所の管理、他施設との連携、ご利用者やご家族の相談・苦情対応などです。施設の顔となる窓口業務から、ご利用者やそのご家族のサポートと幅広い業務に携わっています。

通所介護施設(デイサービス)

通所介護施設(デイサービス)は、ご利用者がご自宅から通い、入浴やレクリエーションなどのサービスを受けます。日中のみで、基本的に宿泊はありません。

生活相談員の仕事は、利用手続き、契約、計画書の作成、ケアマネジャーや他のサービス担当者との連絡調整です。入所施設と異なり、介護スタッフの一人として入浴や食事の介助などに携わることもあります。

介護付有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、食事、入浴、排泄、掃除などのサービスを提供してくれる入居施設です。24時間介護スタッフが常駐しています。

生活相談員の仕事は、入退所の手続き、入所中の日々の相談、苦情対応、他施設やサービス担当者との連携調整などです。ご利用者が安心して施設で生活できるように、ご本人の話をじっくり聞くなど重要な役割を担っています。

支援相談員の仕事

介護老人保健施設で働く相談員は「支援相談員」と呼ばれます。仕事内容は「生活相談員」とほとんど同じです。ここでは支援相談員の仕事内容や役割について解説します。

相談援助やクレーム対応を担当

生活相談員と異なるのは、介護老人保健施設に入所しているご利用者の在宅復帰を支援している点です。

手続き 入所・退所時の手続き
入所希望者との面談
相談 ご利用者の生活の悩み
ご家族の悩み
苦情対応
在宅復帰支援
連携・調整 ケアマネジャー、他施設など

働き先は介護老人保健施設

介護老人保健施設(老健)は、入院治療後に在宅復帰を目指したリハビリが必要な要介護1以上の要介護者が入所できます。

「支援相談員」は老健で働く相談員のことをいいます。ご利用者本人、そのご家族の相談を受ける窓口となるという点では、介護施設の「生活相談員」と同じです。施設の利用開始や退所時のサポート、日常生活での相談援助、苦情の対応を行います。

老健はご自宅へ帰ることを目的とした施設。そのため、支援相談員の仕事にはご利用者の在宅復帰に向けたサポートが加わります。施設内、また退所後もご利用者やご家族が安心して生活できる場を持てるよう支援します。

相談支援専門員の仕事

障害者総合支援法が適用される相談支援事業所などを拠点として、障がいを持つ方を支援するのが「相談支援専門員」です。

相談への助言や情報提供を中心に対応

相談支援には「基本相談」「地域相談」「計画相談」の3つがあります。以下、各相談支援事業所で相談できます。

基本相談支援

身体的、知的、精神障がいを持つ方や難病を患っている方の「どこに聞けばいい?」「受けられるサービスを知りたい。」といったさまざまな疑問の相談に対応しています。

一通り相談内容を把握した後、必要な情報を提供したり、希望や状況に合わせて利用できるサービスを紹介したりします。たとえば、障がい福祉サービスの利用が必要であれば、その事業所と連絡調整を行います。障がい福祉サービスの利用をしなくても相談支援専門員への相談は可能です。

地域相談支援

大きく分けて、二つのサポートがあります。対象者は障がい者支援施設や精神科病院などを出て、地域生活を目指す障がい者などです。

「地域移行相談支援」では、施設や病院を出た後に、障がいを持つ方が住みたい地域で生活を始められるよう支援しています。家を一緒に探す、外出に付き添う、関係機関との調整をするなどのサポートが受けられます。

「地域定着相談支援」では、地域で生活しはじめた方の悩みやトラブルに対応しています。

計画相談支援

こちらも大きく分けて、2つのサポートがあります。

「サービス利用支援」ではサービスが必要な方の状況に合わせて「サービス等利用計画書(ケアプラン)」を作成します。障がい者施設への入所や通所、ホームヘルパーの派遣、短期入所など、障がい福祉サービスが利用できるまでをサポートをします。

「継続サービス利用支援」では、障がい福祉サービスの利用が始まった後、定期的に見直したり更新をしたりします。必要があれば各サービス事業所へ連絡し、サービスを変更・改善します。

働き先は相談支援事業所や基幹相談支援センター

相談支援専門員は、主に地域の相談支援事業所や基幹相談支援センターで働いています。

相談支援事業所

相談支援事業所には「一般相談支援事業所」「特定相談支援事業所」「障害児相談支援事業所」があります。

  • 一般相談支援事業所…障がいを持つ方の相談に対応したり、暮らしたい地域で生活できたりするよう支援(上記の「基本相談支援」と「地域相談支援」を実施)
  • 特定相談支援事業所…障害福祉サービスを利用する方をサポート(上記の「基本相談支援」と「計画相談支援」を実施)
  • 障害児相談支援事業所…障がい児に対しての相談支援

基幹相談支援センター

障がいを持つ方がより快適に生活が送れるように、地域での相談支援の中心として市町村が設置しています。

多くの方が複雑なサービスシステムに戸惑い、「誰に相談したらいいの?」といった悩みを持つものです。そのような悩みに専門的な知識を持つ職員が対応し、それぞれの状況に合ったアドバイスを受けられる総合的な相談窓口です。

場面・内容に応じて相談先を選ぼう

最後に、改めて3つの職種についてまとめます。

生活相談員 支援相談員 相談支援専門員
介護を必要とする方・そのご家族が、
・どの介護施設を選んだらよいのかわからない
介護を必要とする方・そのご家族が、
・老健を退所後にご自宅で生活ができるか不安
障がいを持つ方・そのご家族、保護者が、
・どこに相談していいかわからない
・住みたい地域で生活したい
・入居の手続き方法が知りたい
・サービスご利用者がや入所中の日常生活の悩みや不安についてを相談したい
・クレームに対応してほしい
・相談があるので聞いてほしい
・支援サービスを受けたい

役割や呼び方は異なりますが、どの職種も困っているご利用者やご家族の悩みを聞き、アドバイスをしてくれたり、適切な施設、事業所、サービスの情報を提供し支援するプロフェッショナルです。

相談員は社会福祉士や精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格など相談援助の資格を保有していることが多く、専門の知識を持ち、多くの経験からご利用者がより良い生活を送れるように支援しています。困ったことがあったら、自分だけで悩まずに、まずは相談してみましょう。

監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)
川上 由里子
監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)

大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、大手不動産株式会社「ケアデザイン」の立ち上げに参画。支える人を支えるコンサルティングを開発実施。著書に[介護生活これで安心](小学館)「働きながら介護する〜ケアも仕事も暮らしもバランスとって〜」(技術評論社)。

自身も働きながら父親の遠距離介護を体験。介護、看護、医療サービスを利用しながら在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。現在は介護関連のコンサルティングの他、講演、執筆活動を行っている。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。

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