【介護の基礎知識】在宅介護の強い味方「ホームヘルパー(訪問介護員)」とは?

公開日:2021年12月22日更新日:2022年09月12日
ヘルパー

高齢になると、身体が思うように動かず、一人で自立して暮らし続けるのが大変になってきます。ご家族が同居している場合でも、仕事や育児などと介護の両立は負担が大きいもの。

介護を受ける方にとっても、「迷惑をかけたくない」という遠慮から我慢してしまうことが増えるかもしれません。

このような状況を解決する方法のひとつが、訪問介護(ホームヘルプサービス)の利用です。ご家族の負担の軽減だけではなく、介護を受ける方にとって快適な暮らしの支えにもなってくれます。

本記事では、訪問介護の概要や、受けられるサービス、サービスの利用方法などをわかりやすく解説します。

訪問介護とは

訪問介護とはホームヘルパー(訪問介護員)がご利用者のご自宅へ訪問し、食事、排せつ、入浴介助などの「身体介護」や調理、洗濯、掃除などの「生活援助」を提供する介護保険サービスです。

ホームヘルパーがご利用者のご自宅でケアを提供し、住み慣れた環境で暮らし続けたいというその方の思いを支援します。

ホームヘルパー(訪問介護員)とは

ホームヘルパーとは、介護が必要な高齢者などの住まいに訪問し、日常生活のサポートを行う職種の総称として使われる言葉で、訪問介護員とも言います。
できるだけ住み慣れた地域で、自立した生活を送ることができるように、支援をしてくれる存在といえるでしょう。

介護福祉士との違い

介護福祉士は、介護に関する知識や技能を身に付けていることを証明する国家資格のことを指します。 混同されがちなホームヘルパーと介護福祉士ですが、ホームヘルパーは訪問介護サービスに従事する介護職の職種名で、介護福祉士は訪問介護サービスを含め各種介護サービスに従事する介護職が取得する国家資格だとわかれば難しくありませんね。

下記では訪問介護サービスを提供するホームヘルパーが取得している資格について解説します。

ホームヘルパーが取得している資格

  • 介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)

訪問介護サービスを提供するには「介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)」という資格が最低限必要で、130時間の研修と修了試験を受けることで、資格を取得することができます。
ホームヘルパーに限らず、他の介護サービスの介護職でも多くの方が初めの一歩として取得する資格です。

  • 介護職員実務者研修(旧ホームヘルパー1級)

介護職員実務者研修は上記で紹介した介護職員初任者研修の上位の資格となり、さらに深い知識が求められる資格となっています。研修時間も、450時間に及びます。

この資格を持っていることが国家資格である介護福祉士の受験要件となっています。

  • 介護福祉士

介護関連の資格の中で唯一の国家資格である介護福祉士の資格取得のためには、以下のいずれかの条件を満たした上で国家試験に合格しなければいけません。

  • 専門学校などの養成施設で2年以上学ぶ
  • 福祉系高校で学ぶ
  • 実務経験3年以上で、なおかつ介護福祉士実務者研修を修了する

介護に関する唯一の国家資格である介護福祉士は、介護に関する知識や技能についての12の学習科目があり、専門性の高い資格だといえるでしょう。国家試験は毎年1月に実施され、合格率は約70%となっています。

ホームヘルパー(訪問介護員)が提供する訪問介護のサービス内容とは

ホームヘルパー(訪問介護員)が提供する訪問介護サービスは、介護・支援を必要とする方の自宅に訪問して行う「身体介護」と「生活援助」の2種類があります。なお、ホームヘルパーによる支援は、介護保険法に基づく「介護保険サービス」です。無料ではなく、一部、利用者の自己負担金があります。ただし、費用の大部分は介護保険で賄われます。

具体的にどのようなサービスなのか、それぞれ解説します。

排泄、食事、入浴の介助を行う「身体介護」サービス

身体介護サービスとは、介護を受ける人の体に触れながら行う介護全般を指す言葉です。

具体的には、以下のような内容が含まれます。

  • 排泄介助……おむつ交換や、トイレに行く際の介助
  • 食事介助……飲食の介助
  • 入浴介助……お風呂に入る際の介助
  • 更衣介助……パジャマから普段着など、着替えの介助
  • 歩行介助……家の中を移動する際の歩行の介助
  • 口腔ケア……歯磨きなど、口の中のケア

その他、爪切りや耳掃除、血圧測定や体温測定といった日常の健康管理に関する介助も身体介護に含まれます。

掃除や買い物をサポートする「生活援助」サービス

生活援助サービスは、介護を受ける方が日常生活を送る上で不便がないように支援するサービスです。具体的には、以下のような一般的な家事が該当します。

  • 掃除
  • 洗濯
  • 食事づくり
  • 片付け
  • 日用品や食品等の買い物
  • シーツなどの交換
  • 病院や薬局へ訪問しての薬の受け取り

ただし、このような生活にかかわる家事は、家族が担うこともできます。そのため、家族と同居している方は、原則として生活援助サービスは受けられません。

ただし、家族にも持病がある場合や、なんらかの理由によって家事をするのが困難な場合は、利用できる可能性もあります。詳細は訪問介護サービスを行っている事業者に問い合わせてみましょう。

なお、訪問介護で受けられる自宅内でのサービスは身体介護と生活援助の2種類ですが、そのほか、病院への移動の「通院介助」も受けられます。これは、病院へ行くための車の乗り降りのなど移乗・移動の介助と車で病院までの移動をサポートするサービスです。

ホームヘルパー(訪問介護員)へサービス提供を依頼する際の注意点

ホームヘルパーには、対応できることと、できないことがあります。どんなことでもお願いできるわけではないため、頼める内容と、頼めない内容を把握しておきましょう。

なお、できないことがあるのは、ホームヘルパーが介護保険法という法律に基づいたサービスを提供しているからです。各事業所やヘルパー個人の采配でサービスの提供範囲を変えることはできません。

ホームヘルパーが対応できない業務は、主に次の3点です。

医療行為

ホームヘルパーは、あくまでも介護職のため医療行為はできません(他の介護サービスでも同様です)。

たとえば、身体介護サービスに含まれる血圧測定や体温測定はできますが、血圧測定の結果に対してコメントしたり、対処法を伝えたりできないのです。

同様に、服薬介助(服薬の手伝い)や病院や薬局へ行って薬を受け取ってくることは可能でも、服薬管理(投薬や指示)はできません。服薬管理は介護を受ける人にとって大切ではありますが、ホームヘルパーの業務範囲外です。看護師や薬剤師が支援の役割を持ちます。

インスリン注射なども同様です。

家族へのサービス

ホームヘルパーが提供できるのは、あくまでも介護が必要な方に対するサービスだけです。家族の生活援助はできません。

ホームヘルパーの業務範囲のうち、生活援助サービスは、ハウスキーパーの仕事とイメージが重なります。そのため、ハウスキーパーのように家の中のさまざまな用事を頼めると誤解するケースがあります。

しかし、ホームヘルパーは、家族が食べる食事を作ったり、犬の散歩をしたり、家族の服を洗濯したりすることはできません。また、掃除も、介護を受ける方が日常的に利用している範囲のみの対応です。

日常生活に必須ではないこと

日常生活を送る上では、「本を読みたい」「オシャレをしたい」といった命にはかかわらないさまざまな欲求が起こります。しかし、訪問介護ではこのような用事に対応することはできません。

たとえば、食品や生活必需品の買い物は行えますが、たばこやお酒のような嗜好品の買い物は頼めません。同様に、草むしりや洗車、大掃除なども、行わなくても介護を受ける人の生活に支障はきたさないとみなされるため、対象外です。

訪問介護サービスを利用するには

ホームヘルパーが自宅に訪問してくれる訪問介護は、介護保険を使えば自己負担を抑えて利用できます。

全額自費の介護サービスを提供している事業者もありますが、非常に高額な費用がかかるため、特別な事情がなければ介護保険サービスの利用がおすすめです。

介護保険サービスを利用するための条件は、下記の通りです。

  • 65歳以上の介護保険加入者、あるいは40歳以上65歳未満の介護保険加入者で特定疾病該当者
  • 要介護(要介護1~5)

なお、介護保険の保険料を滞納していると、介護保険サービスを利用できない可能性があります。多くの場合は年金から天引きされますが、年金額が低い場合など、ご自身で納付しなければいけない場合もあります。納付漏れがないようにしましょう。

要介護認定の申請から利用開始までの流れ

介護保険の訪問介護サービスを利用するためには、要介護か、要支援の認定を受ける必要があります。申請から、訪問介護サービスの利用開始までのおおまかな流れは以下の通りです。

  • 1.「介護保険認定申請書」と「介護保険被保険者証(65歳以上の場合。65歳未満の場合は、医療保険被保険者証)」を市区町村役場に提出する
  • 2.調査員が自宅を訪問し、本人や家族へのヒアリングや状況の確認を行う(認定調査)
  • 3.かかりつけ医に意見書をかいてもらう(主治医意見書)

※意見書は申請書に記載した病院と市区町村が郵送でやりとりするため、介護を受ける方がもらいに行く必要はありません。

※かかりつけ医がいない場合は、少しでも本人の身体状況がわかるように、診察履歴のある医師に意見書の作成を依頼するのがよいでしょう。(また、市区町村が指定する医師の診察を受ける方法もあります)

  • 4.要介護1~5のどれに該当するか結果通知がくる
  • 5.介護度に応じた「ケアプラン(介護サービスをどのように行うかを決める計画書)」を作成する

※ケアプランの作成は、本人や家族の希望を聞き取りながら、ケアマネジャーが行います。要介護1~5と認定された場合は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当します。

※要介護認定において、(介護度が比較的軽い)「要支援」と認定される場合があります。その場合は、自宅がある地域を担当する市区町村の地域包括支援センターにお問い合わせください。また、お住いの市区町村の介護保険課、もしくは地域包括支援センターで、居宅介護支援事業所の名簿や「ハートページ」という冊子をもらい、そこからケアマネジャーを探すことができます。

  • 6.ケアマネジャーの推薦紹介や本人の希望で、訪問介護を担当する事業所を決める
  • 7.ケアプランに応じた訪問介護がスタートする

なお、要介護認定や、ケアマネジャーによるケアプラン作成については、自己負担はありません。

ホームヘルパーによる介護保険サービスの種類

ホームヘルパーがご利用者のご自宅を訪問して提供する介護保険サービスは、「訪問介護」のほかに、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」、「夜間対応型訪問介護」、「小規模多機能型居宅介護」というサービスもあります。必要に応じて選択しましょう。

【訪問介護】

自宅にホームヘルパーが訪れて身体介護や生活援助を行います。1回の訪問は、必要に応じて、30分位から90分ほど。主に日中の利用となります。早朝や夜間にサービスを提供している事業所もあります。介護度に応じて、週1回から週数回、1日1回から2~3回と、ケアマネジャーに相談しながら、必要に応じて調整することが可能です。

【夜間訪問介護】

おむつ交換など身体介護を中心とした定期・随時の訪問介護サービスを提供します。また、ベッドから落下した際や急激な体調変化時にホームヘルパーを呼び、救急車の手配などの随時対応も受けることができます。22時から翌6時までのサービス提供を基本としていますが、より長時間対応している事業所もあります。日中の訪問介護との併用も可能で、夜間に介護を必要とするような介護度の重い利用者に対応できるサービスです。

【定期巡回・随時対応型訪問介護看護】

24時間365日、必要に応じた定期・随時の訪問介護サービスを提供します。また、看護師による訪問サービス(訪問看護)も利用できるため、昼夜の介護を必要とするような介護度の重い利用者に加えて、医療行為を必要とする利用者にも対応できます。なお、このサービスを利用する場合は、上記の「訪問介護」「夜間対応型訪問介護」は利用できません。どのサービスが必要かは、担当のケアマネジャーに相談しながら決めていくことになります。

【小規模多機能型居宅介護】

自宅からの通所に、訪問や宿泊を組み合わせて介護サービスを提供します。介護度が重くなっても、一つの事業所で通所・訪問・宿泊のサービスを柔軟に調整しながら、継続してサービスを受けることができます。また、通所・訪問・宿泊のサービスを同じ介護職が提供するため、「顔なじみ」になりやすく、認知症のご利用者にも向いていると言われています。宿泊のサービスによりご家族の負担軽減を図ることも可能です。なお、このサービスを利用する場合は、上記の「訪問介護」「夜間対応型訪問介護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は利用できません。担当のケアマネジャーに相談しながら、必要とするサービスを決めていくことになります。

訪問介護サービスを活用し、ホームヘルパーの支援を受けながら自宅での暮らしを続けよう

訪問介護などを利用し、ホームヘルパーからの必要な支援を受けることで、介護が必要になっても、住み慣れた地域やご自宅で自立した暮らしを続けたいという思いが実現しやすくなります。ご自分やご家族だけで無理をせずに、積極的にサービスを活用しましょう。

ただし、ご自宅で受けられる訪問介護サービスは、24時間常に誰かが見ていてくれるわけではありません。限られた時間内でのサービスでは生活に支障をきたすようになったり、一人の時間に不安を感じたりしたときは、ケアマネジャーに相談しながら、24時間スタッフが常駐している有料老人ホームへの入居という選択肢もあります。

将来も見据えた上で、介護を受ける方の心身の状態や、家族の状況に応じたサービスの選択が大切です。

監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)
川上 由里子
監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)

大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、大手不動産株式会社「ケアデザイン」の立ち上げに参画。支える人を支えるコンサルティングを開発実施。著書に[介護生活これで安心](小学館)「働きながら介護する〜ケアも仕事も暮らしもバランスとって〜」(技術評論社)。

  

自身も働きながら父親の遠距離介護を体験。介護、看護、医療サービスを利用しながら在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。現在は介護関連のコンサルティングの他、講演、執筆活動を行っている。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。

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