【介護の基礎知識】ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?役割や選び方、付き合い方を解説
要介護認定を受けた方が介護保険サービスを利用する場合、「ケアマネジャー」に相談のうえ、サービスを利用することになります。しかし、そもそもケアマネジャーとはどのような役割なのかをしっかり理解できている方は少ないのではないでしょうか。
ケアマネジャーのことをしっかりと理解しておくことで、今後の相談もスムーズになるはずです。
そこで、本記事では、ケアマネジャーがどのような立場の人で、介護が必要な方やご家族に対して何をしてくれるのかについて解説します。ケアマネジャーの役割や選び方、上手な付き合い方を知って、安心して介護保険サービスを利用しましょう。
ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?
ケアマネジャーとは、正式名は「介護支援専門員」で、介護保険法に規定された介護保険全般のスペシャリストです。よく「ケアマネ」の略称でも呼ばれます。
要介護認定を受けた方がニーズに応じた適切な介護サービスを受けられるように、心身の状況や家庭環境に合ったケアプラン(介護サービス計画書)の作成、見直しをはじめ、介護サービス事業者との連絡・調整などをとりまとめる専門職です。
そもそも、介護保険に基づく介護保険サービスの利用には、要介護認定を受け、ケアプランを作成する必要があります。ケアプランの作成は自分でも可能ですが、書類の準備や、自治体との調整を自分で対応するのは大きな負担となりますので、ケアプランの作成などはケアマネジャーに対応してもらうのが一般的です。
ケアマネジャーを務めるために必要な要件
ケアマネジャーへの理解を深めるために、職種の要件についても簡単に知っておきましょう。ケアマネジャーになるためには「介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネジャー試験)」に合格した後、実務研修を受ける必要があります。
また、試験の受験資格については誰でも受験できるわけではなく、以下の2つの条件を満たさなければいけません。
- 医師や保健師、看護師、介護福祉士等、関連資格として指定された資格を有する
- 上記資格を有した日の翌日以降、通算5年、900日以上の実務経験を有する
ケアマネジャーの役割
ケアマネジャーは要介護者や家族に必要な支援をマネジメントする専門職で、介護における総合的な役割を担っています。
ケアマネジャーの詳しい仕事内容について見ていきましょう。
ケアプラン作成・管理・モニタリング
ケアプランの作成は、ケアマネジャーの担う非常に大きな役割です。介護を受けるご本人の心身の状況はもちろん、ご家族の希望や家庭環境にも配慮して、必要なときに必要な介護サービスを受けられるプランを検討します。
なお、介護保険サービスでは、介護度に応じて受けられる介護サービスの利用限度が決まっています。そのため、利用できる枠内で、希望するサービスを受けるためにはどうすればいいのかをご本人やご家族と相談しながら決めていくことになります。
さらに、ケアプランを作成した後、定期的にご自宅を訪問し実際に必要なサービスが適切に行われているかどうか、目標が達成できているかなどの管理・評価などのモニタリングもケアマネジャーの役割の一つです。
介護保険給付費用の管理
介護保険サービスを利用した際の費用は、7~9割が介護保険給付から支払われ、1~3割がご利用者の自己負担となります。
ケアマネジャーは、この介護保険給付に関する手続きや管理も行います。ケアマネジャーを通してサービスを利用する場合は、ご利用者が自分で給付手続きをする必要はありません。
相談対応・サービス事業所との調整業務
ケアマネジャーはケアの内容を組み合わせたケアプランを作成しますが、それを元に実際の介護を行うのは、訪問介護事業所等に所属する介護職員です。
要介護認定業務
要介護認定を受けるには、書類提出だけでなく、調査員との面談も必要です。
調査員は、原則として市区町村の担当者が行い、ケアマネジャーと役割は異なります。状況によっては、市区町村から業務を委託されたケアマネジャーが担当するケースもあります。
しかし、ときには介護職員や事業所に対する要望や不満が出てくる場面もあるでしょう。直接言いにくい内容については、チームのまとめ役であるケアマネジャーに相談すると、事業所や介護スタッフとの調整をしてもらえます。
また、ケアプランのサービス内容を変更したいときや、訪問時間を変えて欲しいときなども、ケアマネジャーに相談して調整を依頼できます。このようにケアマネジャーはつねにサービス事業所と連携し、ご利用者の問題解決や目標達成のためサービス内容の見直しを行ってくれます。
ケアマネジャーとご利用者が接する主な場所
上記のような業務を担当するケアマネジャーの所属先は、主に「居宅介護支援事業所」ですが、「ホームなどの介護施設」「地域包括支援センター」にも所属しています。
どこに所属するケアマネジャーと接するのかは、利用したい介護サービスによって変わります。
居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所とは、ご自宅で生活を送る介護が必要な人の支援を行う事業所です。要介護認定調査を受けた後、「自宅で訪問介護サービスを利用したい」「自宅からデイサービスに通いたい」といった要望がある場合は、居宅介護支援事業所と契約します。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、「居宅ケアマネ」とも呼ばれ、原則、要介護度1以上の方を対象とした居宅サービス計画の作成や、実際に介護を行うサービス事業者との調整などを行います。
なお、居宅介護支援事業所には、実際に介護を行う訪問介護事業所が併設されているケースも少なくありません。
介護施設
介護施設とは、有料老人ホームや特別養護老人ホームのように、介護を必要とする人が入居して過ごせる施設です。
このような施設に所属するケアマネジャーは、主に施設利用者のケアプラン作成を担当します。また、施設内での行事に参加したり、ご家族やご本人の相談に応じたりとご利用者との距離も自然と近くなります。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、地域ごとに設置されている高齢者や高齢者のいるご家族などの相談窓口です。
保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどの専門職が相談に対応し支援します。
地域包括支援センターのケアマネジャーは、「要支援1・2」と認定された方の介護予防を目的とした介護予防ケアプランを作ります。※
居宅介護支援事業者や施設のケアマネジャーが要介護者の「介護を目的としたケアプラン」を作成するのに対して、地域包括支援センターのケアマネジャーは、「介護予防のためのケアプラン」を作成するという違いがあります。
※「要支援認定」を受けた場合は、「介護保険サービス」ではなく、「介護予防サービス」の利用となります。
ケアマネジャーの探し方
介護保険サービスを利用するには、基本的にケアマネジャーを探す必要があります。ケアマネジャーの探し方として一般的なのは、以下の方法です。
- 地域包括支援センターで紹介してもらう
- 居宅介護支援事業所に連絡をする
- かかりつけ医に相談する
地域包括支援センターの場所は、お住まいの自治体のホームページや介護保険課などで教えてもらえます。
また、居宅介護支援事業所は、基本的にお住まいの自治体の介護保険課や地域包括支援センターで紹介してもらえるので問い合わせてみましょう。介護サービスに関する情報をまとめた情報誌「ハートページ」を発行している自治体であれば、同冊子や公式ホームページからも探せます。
なお、多くの居宅介護支援事業所には、それぞれ併設しているサービスがあります。訪問介護やデイサービスを希望する場合、事業所へ問い合わせると、スムーズにサービスを受けやすいでしょう。
ご利用者に合うケアマネジャーの選び方
介護サービスを受ける上で、ケアマネジャーとの相性は非常に大切です。ケアマネジャーと信頼関係を築ければ、希望のサービスの相談などもスムーズになります。ここで、ケアマネジャーを選ぶ際のポイントを知っておきましょう。
ケアマネジャーの保有資格を確認する
前述の通り、ケアマネジャーになるには、介護福祉士や看護師などの資格を持っていなければいけません。そのため、どのケアマネジャーでも、規定の資格自体は保有しています。
しかし、資格にはいろいろな種類があり、それぞれ専門範囲が異なります。特に受けたいサービスや、重視したい分野の知識が豊富なケアマネジャーを選ぶと安心です。
たとえば、末期癌で常に医療行為が必要である場合は「医療面を重視したいので、看護師資格を持ったケアマネジャーを選ぶ」といった選び方がおすすめです。希望がある場合はケアマネジャーを探すときに、問い合わせ先に状態を伝え相談してみましょう。
親身に対応してくれる人を選ぶ
相談ごとをする際に、親身に話を聞いてくれるか、適切なアドバイスをくれるかは、ケアマネジャーと長く付き合えるか判断をするための重要なポイントです。
ただし、どれだけ親切であっても、考え方が合わなかったり、相性が合わなかったりする場合もあるでしょう。親切かどうかに加えて、信頼できるか、伝えたい内容をうまく汲み取ってくれるか、といった観点もチェックしましょう。
近隣事業所に所属する人を選ぶ
ケアマネジャーとの付き合いは、最初にケアプランを作成してもらえば終わりではありません。その後も定期的に訪問してもらう必要がありますし、相談したいことや困ったことがあった場合は、「すぐに会いたい」という場面も出てくるでしょう。
なるべく迅速に対応してもらうには、ご自宅から近い事業所に所属するケアマネジャーを選ぶのがおすすめです。移動時間が短ければ、緊急時やトラブル発生時にも、気兼ねなく相談しやすいでしょう。
経験や知識の豊富な人を選ぶ
介護や看護の知識・経験の量は、それぞれのケアマネジャーによって異なります。また、介護保険に関する制度は度々変更されているため、最新の知識を有しているかどうか、どんな専門性を持っているかも重要なポイントです。
知識が欠けている状態だと、必要な助言を受けられなかったり、適切なサービスを紹介してもらえなかったりする可能性が出てきます。相談の中で最近の介護保険の状況などを聞くなどして、できるだけ知識や経験が豊富で、必要に応じて適切な対処を取ってもらえるケアマネジャーを選びたいところです。地域や身近な人からの評判も参考にするとよいでしょう。
ケアマネジャーとの上手な付き合い方
ケアマネジャーとスムーズなやり取りができるかどうかは、介護を受ける人や家族の対応によっても変わります。ケアマネジャーとうまく付き合うポイントを4点紹介します。
具体的な要望伝達・情報提供
ケアマネジャーは、介護を受けるご本人とご家族からの情報をもとにケアプランを作成します。介護を受けるのがどのような人なのかを十分知ってもらえれば、それだけ適切なケアプランを作ってもらいやすくなるでしょう。
後から「実は○○は希望していなかった」と齟齬が生まれないよう、これまでの生い立ちや性格、好き嫌い、ケアをする上で留意して欲しい点など、ご家族の情報や要望をしっかり伝えるようにしてください。
定期的にコミュニケーションを取る
ケアマネジャーとのやり取りが「定期訪問やケアプランの変更など、必要なときに必要なことだけを話す」と事務的である場合、伝えられる情報量が限定的になります。
仕事の邪魔をするような長話は論外ですが、ちょっとした会話や相談の際の対応に気を配って、良好な関係を築けるように努力しましょう。依頼側が丁寧なコミュニケーションを心がければ、ケアマネジャーも親身になってくれます。
感謝の気持ちを伝える
ケアマネジャーは、多くのご利用者を抱え、ご利用者からのトラブル相談も受け付けています。
「仕事でやっているのだから」と当たり前にサービスを受け取るのではなく、してもらった行動に対する感謝の気持ちを伝えることが大切です。トラブルに対応してもらったときや、イレギュラーな対応をしてもらったときは、きちんと感謝の気持ちを伝えましょう。
合わない場合は担当者の変更を検討
上記のような努力をして、ケアマネジャーと良い関係を作っていこうと心がけていても、対応してくれない、提案がない、信頼性に欠け相談できないなど、良い関係性が築けないときもあるでしょう。しかし、信頼関係が築けないまま無理に対応してもらうと、ご利用者もケアマネジャーもストレスが溜まります。
このような場合は、無理をせずに「担当者を変えて欲しい」と、ケアマネジャーの所属先である居宅介護支援事業所に相談しましょう。また、事業者ごと変更したい場合は、地域包括支援センターに相談しましょう。変更理由を明確にし、契約を解除、再度事業所を選定し契約が必要ですが、ケアマネジャーは一度担当が決まっても、後から変更可能です。
ケアマネジャーを頼りながらサービスを最大限に利用しよう
介護保険サービスを上手に活用するには、ケアマネジャーと良い関係性を築いていくことが大切です。 ケアマネジャーは、どんな介護サービスを利用したいかといった相談はもちろん、日頃の介護に関する問題の相談や、介護施設への入所の相談にも対応してくれます。介護保険サービスの仕組みは複雑です。ケアマネジャーに相談しながら、ご自身やご家族に適した介護サービスの受け方を見つけましょう。
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)
大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、大手不動産株式会社「ケアデザイン」の立ち上げに参画。支える人を支えるコンサルティングを開発実施。著書に[介護生活これで安心](小学館)「働きながら介護する〜ケアも仕事も暮らしもバランスとって〜」(技術評論社)。
自身も働きながら父親の遠距離介護を体験。介護、看護、医療サービスを利用しながら在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。現在は介護関連のコンサルティングの他、講演、執筆活動を行っている。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。