焦らず時期を待って迎えた体験入居。驚くほどスムーズにホームの生活に入れました
Tさんのお母様は、ホームに入居するまでお一人で暮らしておられました。社交的なご性格でご近所付き合いも多く、80歳を過ぎてもグラウンド・ゴルフを楽しまれるほどお元気だったそうですが、ある時期から認知症の症状が見られるようになったのです。
「入居の2~3年前の夏に猛暑の影響で家にこもりがちになってご近所付き合いが減り、その頃から認知症の症状が顕著になってきました。同じものを何個も買い込んで買ったこと自体を忘れるようになり、話のつじつまが合わないことが増えてきて、心配になり、二人の姉と日程を調整しながら様子を見に行くようになりました。もともと週2回お願いしていたヘルパーさんに毎日来てもらうようにし、入居前の1年程は毎日朝と夕方の2回来てもらっていたのですが、それでも、一人の時間に転んで頭にケガをしていたり、オレオレ詐欺に遭いかけたり……。『電話が壊れた』と言って近所のお宅を何度も訪ねるなど、家族以外にも迷惑をかけるようになってしまったことも、これ以上の一人暮らしは難しいと痛感した一件でした」
ホーム探しはTさんのお姉様方が中心になって進められたそうです。けれども、ご入居には大きな壁がありました。お母様が、ホームでの生活に納得されなかったのです。
「ホームは母の生活圏内で探しました。なにしろ40年以上住んだ家を離れるのです。ちょうどこちらのホームはお隣の方が先に入られていたため以前から知っていて、母が毎日のように通ったスーパーにも近く、土地勘があるので安心感があるだろうと思っていました。また、上の姉は社会福祉士、下の姉はヘルパーの資格があって介護のことは私よりもずっと詳しいのですが、その二人が、こちらのスタッフの方の対応や設備が良いと言うので、きょうだいの意見はすぐに一致しました。
ただ、問題は母の気持ちでした。ホームへの入居を勧めてみると、母は自分には関係がないといった様子で聞く耳を持ってくれません。私たちが『こういう所もいいんじゃない?』と言っても『私はホームにお世話になる必要はない』という感じです。実はそれまでにも、姉たちが何度か母をデイサービスに誘ったことがあったのですが、それも当日になって『行かない』と言い出し、結局行かずじまいになっていました。大正の終わりの生まれですし、自分はしっかりしているんだというプライドもあったのだと思います。とはいえ認知症は少しずつ進行していきますし、心配ばかりが募っていきました」
ご心配がありながらも、ごきょうだいは無理に説得するようなことはされませんでした。
「ホームのことは、ときどき話題にしたりチラシを見せたりしていましたが、くどくならない程度に気を配っていました。するとある時期から、母も『最近訳がわからなくなることがあって困るのよね』と不安を口にするようになりました。物忘れがひどくなり、自分でもおかしいなと感じたり、トイレのことで出先で苦労したこともあったようで。そのうちに、ふと『ホームに行ってみようかしら』と口にしたのです。ちょうどホームで1週間の“お試し入居”ができるタイミングだったので、それなら一度お世話になってみようと。
なんとか体験入居までこぎつけたものの、私たちは母がいつ『帰りたい』と言い出すのかと心配していました。それが、ひとたびホームに入るとすぐに他の入居者の方やスタッフの方に自分から声をかけ、ごく自然に馴染んでしまったのです。もともと社交的な性格ですし、皆さんと話ができて安心したのでしょう。1週間の間にすっかり以前からこちらに住んでいる気になっていました。それだけすぐに忘れてしまうということでもあるのですが、あんなにすんなりと馴染んでくれたのは家族にとってはありがたいことでしたね。そして、そのまま正式な入居になりました」
日頃、ホームのロビーでご入居者様同士のおしゃべりを楽しまれているというお母様。Tさんは、最後に今のご自身のお気持ちも語ってくださいました。
「母には、人との交流があることが何よりだと感じています。同時に、家族のストレスも軽減しました。私たちきょうだいが交代で母の様子を見ていた頃は、一対一で同じことの繰り返しや話が噛み合ないことが続くので、こちらも疲れていました。今は日々のことは安心してお任せできるので、家族の気持ちや生活の変化はとても大きいですね。そういう点でも、こちらに入居できてよかったと思っています」
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