【知って損なし!】介護の負担軽減に役立つ支援制度とは?

公開日:2022年10月31日更新日:2023年06月05日
有料老人ホームの介護体制

自分の家族が必要になった(もしくはこれから必要になる)場合、介護をする側(介護者)としては、身体的・精神的・経済的な不安や心配事が頭をよぎる方も多いのではないでしょうか。

実は、日本には介護保険サービスをはじめとした、介護者の負担を軽減できるようなさまざまな制度があります。制度を活用するとしないでは、負担の大きさも全く変わってきます。

このページでは、介護の助けとなるさまざまな支援制度やサービスを解説しています。利用できそうなものがあがあれば積極的に検討してみましょう。

介護で役立つ制度とは?

ここでは、介護保険サービスの他に、介護に役立つ制度・サービスを大きく3つに分けて紹介していきます。

  • 介護をする際にお金を受け取れる制度
  • 介護にかかる費用の負担を軽減できる支援制度
  • 介護をサポートしてくれる制度など

本記事では、主にお金に関する支援である「介護をする際にお金を受け取れる制度」「介護にかかる費用の負担を軽減できる支援制度」について解説しています。

いつまで継続するかわからない介護において、金銭的な負担や不安を軽減することはとても大切です。安心して介護をしていくために、役立つ制度を知っておきましょう。

介護に必要なお金の支援制度

介護には、金銭的な負担がつきものです。たとえば、介護のために家族が休職、退職するとなった場合、その分収入は減るうえに、介護に必要なベッドや日用品などを購入するにもお金が必要です。

こうした負担を軽減するために、介護が必要になった人のための支援制度があります。

介護休業給付(金)

介護休業給付金は、雇用保険に加入している人が介護休業を取得した場合に、給与の一部が保証される制度です。

条件を満たせば、介護休業給付金として、給与所得の67%を給付金として受給することができます。

対象家族1人につき、合計93日(3回まで分割可能)まで受給が可能です。

受給条件では、「被介護者が2週間以上の常時介護を必要とする」「対象の家族の範囲」などのいくつかの条件をクリアする必要があります。

なお、介護休業給付金を受け取るためには、ハローワーク宛てに必要書類を提出して、手続きを取らなければいけません。手続きは、勤務先を通して行います。事前に介護休業を取得したい旨を伝えて、給付金の申請について説明を受けておきましょう。

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家族介護慰労金

家族介護慰労金とは、要介護認定を受けた家族の在宅介護をしている同居家族に対して、自治体による慰労金制度で、「住み慣れた自宅で家族の介護をしてあげたい」という家庭を経済的に支援するものです。

詳細な要件は自治体によって異なりますが、一般的な条件の一例としては、以下が挙げられます。

  • 介護をされる人、する人が1年以上該当の自治体に住んでいる
  • 介護をされる人、する人が同居か近くに住んでいて、実際に介護をしている
  • 介護をされる人が要介護4または5以上
  • 1年以上介護保険サービスを利用していない(1年で7日以内のショートステイを除く)
  • 介護をされる人、する人が市民税非課税世帯
  • 介護保険料を滞納していない

支給額は、年間10万円や、月額1万5,000円など、自治体によって異なります。

なお、東京都世田谷区のように、要介護度の条件が要介護度2(認知症)、または要介護度3となっている自治体や、東京都八王子市のように、対象期間中に90日以上入院していないことが条件になっている自治体などもあります。

制度の有無や詳細な条件は自治体によるため、住んでいる地域の制度を確認してみましょう。

居宅介護(介護予防)住宅改修費

「居宅介護住宅改修費」とは、要介護認定を受けた人の自宅において、介護環境を改善するために介護リフォームを行う際、条件を満たせば受け取ることができる介護保険制度を利用した補助金です。

上限金額は20万円で、申請をすることで、1人につき1回支給されます。また、20万円に満たない場合は、分割して申請することも可能です。

そして対象者が要支援認定者の場合は、「介護予防住宅改修費」として同様のサービスを受けることができます。

居宅介護(介護予防)住宅改修費のポイント
  • 介護保険制度の一環
  • 事前申請が必要
  • 自己負担割合(1~3割)に合わせて7~9割が支給される
  • 上限金額20万円の支給は原則1人1回(状況によっては再利用可)
  • 上限金額20万円までは分割申請が可能
  • 他の介護サービスの区分支給限度額とは別の区分となるため
  • 在宅サービスの支給限度額とは別枠で利用できる

注意点として、限度額20万円には、自己負担額も含まれることは理解しておきましょう。 例えば、自己負担割合1割の人が20万円の工事に対して申請する場合、20万円のうち9割(18万円)までが支給されることになります。また、残額分は今後の改修費用に充てることができます。

居宅介護住宅改修費は、原則として生涯で1度しか受給できませんが、要介護区分が重くなった場合や転居した場合は、再度受給が可能となります。

【豆知識】給付金・助成金・補助金の違いとは?

公的な機関や地方自治体などから支給されるお金には「給付金」「助成金」「補助金」といった種類があります。どれも金銭が支給されるという点は同一ですが、意味は少しずつ違います。

場合によっては曖昧な定義で使われる場合もありますが、ここでは一般的な意味の違いを紹介します。

給付金

国や地方自治体から支給されるお金で、使い道は自由、返済する必要もありません。ただし、受給するためには一定の要件を満たす必要があります。

助成金

国や地方自治体などから支給されるお金で、指定された用途のために支払った金額の一部が支給されます。

補助金

国や地方自治体などから支給されるお金で、助成金と似ているものの、一般的に審査があるものが大半なので、受給のハードルが高い傾向にあります。審査を経た後に、認められた場合にのみ受け取ることができます。

介護費・医療費の費用負担を抑える制度

介護にかかる負担を減らすうえで、各種制度の活用で入ってくるお金を増やすだけでなく、費用負担を抑えられる制度も活用できるように準備しておきましょう。

介護費や医療費の負担を軽減するための制度を紹介します。

高額医療・高額介護合算療養費制度

「高額医療・高額介護合算療養費制度」とは、介護保険と医療保険の両方を利用する世帯の経済的負担が大きくなり過ぎないようにするための軽減制度です。

世帯の年間(毎年8月1日~翌7月31日)の介護保険と医療保険の自己負担額を合算し、限度額を超えた場合、申請することによって限度額を超えた分の金額が払い戻されます。なお、払い戻しについては、介護保険と医療保険それぞれの保険者が按分して行います。

以下に課税所得区分ごとの限度額の目安をまとめましたので参考にしてみてください。 あくまで目安となりますので、正確な情報は各機関に確認しましょう。

高額介護合算療養費の自己負担限度額(年額)

介護を受ける人の世帯所得区分 70歳未満の世帯(※1) (介護保険+被用者保険または国民健康保険) 70歳~74歳の世帯(※1) (介護保険+被用者保険または国民健康保険) 75歳以上の世帯(※1) (介護保険+後期高齢者医療)
年収約1160万円~ (課税所得690万円以上) 212万円 212万円 212万円
年収約770万~1160万円 (課税所得380万円以上) 141万円 141万円 141万円
年収約370万~770万円 (課税所得145万円以上) 67万円 67万円 67万円
年収約156~370万円 (課税所得145万円未満)(※3) 60万円 56万円 56万円
市町村民税世帯非課税 34万円 31万円 31万円
市町村民税世帯非課税 (年金収入80万円以下など) 34万円 19万円(※2) 19万円(※2)

※1:対象世帯内に70~74歳と70歳未満の人が混在する場合、まず70~74歳の自己負担合算額に限度額を適用し、その後に残る負担額と70歳未満の自己負担合算額を合わせた金額に限度額を適用する。
※2:介護サービス利用者が世帯内に2人以上いる場合は31万円。
※3:収入の合計金額が520万円未満(1人世帯の場合は383万円)の場合や旧ただし書所得の合計金額が210万円以下の場合も含む。

【参照】
厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度について」
厚生労働省「高額介護合算療養費制度について」
厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(概要)」
内閣府「高額介護合算療養費制度 概要」

高額介護サービス費制度

介護保険サービスの自己負担額は1~3割の負担で済むものの、サービスの内容や頻度によっては、負担金額が大きくなってきます。

そこで助けになるのが「高額介護サービス費制度」です。1ヶ月間の介護保険サービスの自己負担額が上限額を超えると、超えた分は申請により払い戻し(高額介護サービス費)を受けることができます。

上限額は、世帯に属する65歳以上の人の課税所得額などに応じて決められています。なお、課税所得額は年収とイコールではありません。課税所得額380万円は年収約770万円、課税所得額690万円は年収約1,160万円に該当します。

所得区分別の月額介護サービス負担上限額(令和3年8月~)

所得区分 世帯または個人あたりの月額負担上限額※
年収約1160万円~ (課税所得690万円以上) 140,100円(世帯)
年収約770万~1160万円 (課税所得380万円以上) 93,000円(世帯)
年収約770万円未満 (課税所得380万円未満)の住民税課税世帯 44,400円(世帯)
世帯の全員が住民税非課税 24,600円(世帯)
世帯全員が住民税非課税かつ前年の合計所得額80万円以下の人など) 24,600円(世帯
15,000円(個人)
生活保護受給者など 15,000円(世帯)

参照:厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」

※住宅改修費・福祉用具購入費、介護施設での食費などは含まれません。

先述の高額医療・高額介護合算療養費制度と似ているように見えるかもしれませんが、高額医療・高額介護合算療養費制度は、介護保険だけではく、被用者保険(もしくは国民健康保険など)の上限額を合算して算出する点や、対象期間は1年の上限額が基準です。

高額介護サービス費制度は、介護保険の上限額を基準とし、対象期間は1ヶ月です。

介護における医療費控除

医療費控除は、病院にかかった際の診察代や治療費、薬代が一定額を超えた際に利用できる控除制度です。介護保険サービスの中にも適用できるものもあるので、計上漏れがないようにしましょう。

【豆知識】医療費控除とは?

医療費控除とは、1月から12月までの1年間の医療費が10万円、または総所得金額の5%のうちどちらか低い方を超えた際に利用できる所得控除です。確定申告で申告すれば、所得税や住民税を軽減できます。

医療費控除額の計算方法は以下です。

「(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円」

なお控除額は、10万円または総所得金額の5%を超えた金額のうち、保険金などによる補填分を除いた額です。算出した金額のうち、最高で200万円までが対象です。

介護保険サービスにおける医療費控除

医療費控除の対象となる医療費には、一部の介護保険サービスが含まれます。医療費控除の対象になる介護保険サービスは大きく分けて「居宅サービス」と「施設サービス」の2つ※で、そのうち一部が医療控除の対象となります。

※居宅サービス:在宅介護の方を対象とした介護保険サービス全般のこと。
※施設サービス:介護保険施設に入居して受ける介護保険サービス全般のこと。

居宅サービス

居宅サービスのうち、以下は医療費控除の対象になります。

  • 訪問看護
  • 介護予防訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 介護予防訪問リハビリテーション
  • 医師などによる居宅療養管理指導
  • 介護予防居宅療養管理指導
  • 医療機関の通所リハビリテーション
  • 介護予防通所リハビリテーション
  • ショートステイ
  • 介護予防短期入所療養介護
  • 一体型事業所の訪問看護と介護を利用する場合
  • 上記のいずれかと組み合わせて行われる看護・小規模多機能型居宅介護

そのほか、上記と組み合わせる場合に限って医療費控除の対象になる居宅サービスもあります。

  • 生活援助中心型を除く訪問介護
  • 夜間対応型訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • デイサービス(通所介助)など

施設サービス

介護施設において提供された介護保険サービスは、以下が医療費控除の対象となります。ただし、日常生活費や特別なサービス費用は含まれません。

施設の種類 医療費控除の対象となる金額
特別養護老人ホームなど 介護、食費、居住費の自己負担額の2分の1
介護老人保健施設 介護、食費、居住費の自己負担額
療養型病床など 介護、食費、居住費の自己負担額
介護医療院 介護、食費、居住費の自己負担額

参照:国税庁「No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」
参照:国税庁「No.1125 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価」

さまざまな介護サービスが医療費控除の対象となりますが、有料老人ホームやグループホームなど、医療費控除の対象にならない介護サービス費用もあります。対象になるものとならないものをしっかりと確認しておきましょう。

遠距離介護で使いたい交通機関の割引制度

公的な制度以外に民間企業でも介護の助けになるようなサービスを用意している企業もあります。 遠方で暮らす家族の介護をする場合は、交通費も大きな負担になります。一部の交通機関では、割引サービスを用意しているところもありますので、その一部を紹介します。

タイミングによってはサービスの有無や内容も変わることもありますので、最新の情報はしっかり確認しましょう。

航空会社の介護割引運賃

一部の航空会社では、介護割引運賃制度を用意しています。介護割引運賃がある航空会社と、利用できる対象を一覧にしました。なお、割引率や具体的な運賃は、路線や利用する日などによって異なるため、個別に確認をしておきましょう。

航空会社 サービス名 利用対象者
JAL 介護帰省割引
(※2023年4月11日まで)公式HP
要介護・要支援認定された人の2親等以内の親族、配偶者の兄弟姉妹の配偶者、子の配偶者の父母 (12歳以上)
ANA 介護割引公式HP 要介護・要支援認定された人の2親等以内の親族(12歳以上)、配偶者の兄弟姉妹の配偶者、子の配偶者の父母
Solaseed Air 介護特別割引Solaseed Air公式HP 「ソラシド介護事務局」発行の「介護割引パス」を持っている人
STARFLYER 介護割引運賃公式HP 要介護・要支援認定された人と、介護をする人(2親等以内の親族、配偶者の兄弟姉妹の配偶者、子の配偶者の父母)

※各社サービス情報は2022年10月時点の情報をもとに作成しています。

なお、利用できるのは介護者と被介護者の最寄り空港を結ぶ便の運賃としている場合が大半です。「介護をしている人なら旅行をするときも割引運賃を適用できる」というわけではありませんので注意しましょう。

鉄道会社の介護割引運賃

鉄道会社各社では、長距離移動用の割引制度が複数あります。利用できるものがないか検討してみましょう。

サービス名 内容
EX予約 あらかじめ会員申し込みをしておくと、割引運賃で指定席やグリーン車の新幹線チケットを購入できます。公式HP
JR西日本ジパングクラブ 男性満65歳以上、女性満60歳以上で入会できるクラブです。年会費が個人3,840円、夫婦6,410円かかりますが、全国のJRきっぷ最大30%引き、JRホテルグループの宿泊料金割引といった特典を利用できます。(2022年10月時点) 公式HP
えきねっと 東北・山形・秋田・北海道新幹線、上越・北陸新幹線、JR東日本の特急列車、JR北海道の特急列車が割引になります。利用にはえきねっとへの登録が必要です。公式HP

※各社サービス情報は2022年10月時点の情報をもとに作成しています。

そのほか、回数券や1日乗車券といったお得な切符がたくさんあります。利用する路線や区間に良い切符がないか、チェックしてみましょう。

いろいろある自治体独自の介護支援制度(サービス)

自治体のなかには、独自の介護支援制度を用意している自治体もあります。お住まいの自治体にはどのような制度があるのか調べてみるとよいでしょうか。

ここでは、一部の自治体で利用できる制度をピックアップして紹介します。

在宅介護を支援する手当制度

このページでも解説している「家族介護慰労金」も自治体独自の支援制度のひとつです。また、金額は自治体によって異なりますが、たとえば江戸川区の「熟年者激励手当」では、月額1万5,000円×在宅月数が支給されます。年間で最大18万円が受け取れますから、介護にかかる金銭負担の軽減につながります。

参照:東京都江戸川区「熟年者激励手当」

ヤングケアラーへの支援制度

近年ニュースでも取り上げられることが多いのが、中学生や高校生といった若年者が介護を担う「ヤングケアラー」です。

群馬県高崎市では「ヤングケアラーSOS」制度として、1日2時間、週2日まで無料でサポーターが対象者宅に派遣され、生活の援助や家族の介護などの支援を行っています。また、兵庫県では相談窓口の設置やシンポジウムの開催などが行われています。

参照:群馬県高崎市「ヤングケアラーSOS」

見守りサービス

徘徊してしまう高齢者向けの対策として、栃木県小山市では、杖などに貼って発見者に連絡先を知らせる「徘徊高齢者見守りシール」の配布を行っています。また、石川県能美市では月額50円で、高齢者の現在地が確認できる位置検索機器を貸してもらえます。

さらに、昼食の宅配と日常的な安否確認をセットにしたのが荒川区の「配色見守りサービス」です。230円から680円の費用負担で、栄養バランスの取れた食事の宅配と見守りを利用できます。

参照:栃木県小山市「徘徊高齢者見守りシールを交付します」
参照:石川県能美市「徘徊高齢者等家族支援サービス事業」

利用できる支援をしっかり活用して費用負担を軽減しよう

家族の介護が必要になったとき(もしくは将来的に)に大切なのは、悲観することではなく、少しでも負担を減らせるよう、情報を集め、早め早めに行動することです。

日本には、介護の負担を軽減するためのさまざまな支援制度が用意されています。公的支援制度、民間のサービスなど、自分が利用できる支援の内容や利用方法を確認し、利用できるものは積極的に活用していきましょう。

監修者:川村 匡由(かわむら まさよし)
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格
川村 匡由
監修者:川村 匡由(かわむら まさよし)
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格  

博士(早稲田大学)、福祉デザイン研究所所長、武蔵野大学名誉教授。

1994年、つくば国際大学教授に就任後、武蔵野大学大学院教授を歴任。専門は社会保障、高齢者福祉、地域福祉、防災福祉。シニア社会学会・世田谷区社会福祉事業団理事。

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