【介護のお悩み】老老介護とは?認認介護に発展するリスクや問題、解決策を紹介

公開日:2021年12月22日更新日:2023年04月06日
老老介護・認認介護

高齢化が進む中で、「高齢者を高齢者が介護しなければならない」という状況が増えてきています。こういった状態は主に65歳以上の「夫婦」や「親子」で発生し、このような状態は「老老介護」と呼ばれ、さまざまなリスクが指摘されています。

介護をする側が、ケガをしたり、腰を痛めたりする危険性もあるでしょう。さらに、介護で家の中にいる時間が増えることで、社会とのつながりがなくなり、認知症を発症してしまうケースなども少なくありません。

このような問題を発生させないためには、介護をする側が自分の状態を十分に理解し、ひとりで抱え込んだり、必要以上に頑張ったりしないことが大切です。

本記事では、老老介護の現状やリスク、解決のヒントについてわかりやすく解説します。

老老介護・認認介護とは?

「老老介護」とは、介護をする側とされる側、双方が65歳以上の高齢者である状態を指します。主に家族間での介護に使われる言葉で、90歳の親を65歳の子どもが介護する場合や、70歳の夫(妻)を68歳の妻(夫)が介護する場合などが、これに該当します。

老老介護の中でも、特に注意が必要なのが、認知症の高齢者が、同じく認知症の高齢者の介護を行う「認認介護」です。介護を続けるうちに、介護者(介護をする側)が軽度の認知症を発症してしまい、後から認認介護になってしまうケースもあります。

老老介護の現状について

老老介護の現状について、厚生労働省の調査結果を紐解きながら解説します。老老介護がどのように行われているのかを知ることで、そこに潜む問題も見えやすくなってくるでしょう。

老老介護の割合は増えつつある

厚生労働省が発表した「2019年国民生活基礎調査」によると、老老介護の割合は年々増加しています。

2001年には40.6%だった老老介護の割合は、2019年には59.7%と、全体の6割近くに上っています。さらに、全体の約3分の1は、介護する側も75歳以上の後期高齢者同士です。

高齢化が進む中で、老老介護の割合は今後も右肩上がりで増加していくと予想されます。

要介護者との続柄は配偶者の女性が圧倒的に多い

介護をする人とされる人の間柄は、同居家族が54.4%と半数以上です。その中でも、配偶者がもっとも多く、23.8%となっています。一般的に、配偶者は年齢が近い場合が多いため、老老介護になりやすいといえるでしょう。

さらに、介護を行う時間が「ほとんど終日」である同居の介護者については、介護者への負担が大きく、介護される人のみならず介護する方人への適切なケアが必要になると考えられます。

要支援1では、「必要なときに手をかす程度」が71.1%で最多であるのに対し、もっとも介護度の重い要介護5では、「ほとんど終日」が56.7%で最多、「必要なときに手をかす程度」は3.0%ともっとも少ない結果が出ています。

なお、要介護度の目安は以下の通りです。

  • 要支援1……ほぼ1人での生活が可能だが、一部介護予防のための支援や改善が必要
  • 要支援2……ほぼ1人での生活が可能だが、要支援1よりも介護予防のための支援が必要なシーンが多い
  • 要介護1……歩いたり座ったりはできるが、身の回りの生活能力が低下し日常生活に部分的な介護が必要
  • 要介護2……歩行が不安定で、食事・排泄など身の回りの生活の一部または全部に介護が必要
  • 要介護3……一人では生活ができず、ほぼ全面的な介護が必要
  • 要介護4……全面的な介護が必要な場合が多く、問題行動や認知機能の低下が見られることもある
  • 要介護5……寝たきりなどにより生活全般に全面的な介護が必要。意思の疎通ができない、問題行動が出るなどの場合も多い

老老介護の人口割合が増えている原因

そもそも、老老介護の割合が増えている原因はどこにあるのでしょうか。高齢化、寿命、核家族化の3つの要素を取り上げて解説します。

高齢者人口の増加と若者人口の減少

内閣府による「令和2年版高齢社会白書」によると、全人口のうち、65歳以上の高齢者が占める割合は28.4%です。

この割合は、1950年には4.9%、25年後の1975年も7.9%とわずかな上昇であったのが、そのさらに25年後の2000年には17.4%と大きく上昇し、その後も大幅な増加傾向にあります。一方、15~64歳の割合は59.5%、15歳未満は12.1%で、どちらも減少傾向です。

高齢者が増え、若者が減少したことから、自然と高齢者の介護を担う人も若者から高齢者へとシフトしていると考えられるでしょう。

健康寿命と平均寿命の差

厚生労働省の「令和2年度版厚生労働白書」の「平均寿命と健康寿命の推移」によると、健康寿命、平均寿命共に上昇傾向にあると報告されています。加齢によって日常生活に支障をきたすようになってから、亡くなるまでの間は、介護が必要な期間だといえるでしょう。この期間に該当する人の年齢が年々上昇していることから、介護を担う子どもや配偶者の年齢もその分高くなっていると考えられます。

核家族化の影響

夫婦のみや、夫婦と子だけで暮らす「核家族」世帯は、年々増加傾向にあります。

また、核家族世帯の中でも、夫婦と子どもで構成される世帯は減少傾向にあり、2050年には夫婦のみ世帯の数を下回ると推計されています。子ども世帯が親と別居するケースが増えていることも、老老介護の増加の一因だといえるでしょう。

老老介護と認認介護のリスク

老老介護や認認介護の増加は、介護をされる方だけでなく、介護をする人のリスクも高めてしまいます。老老介護や認認介護で想定されるリスクについて理解し、回避できるよう対処することが大切です。

老老介護のリスク

まずは、老老介護によって起こり得る3つのリスクについて解説します。

介護者が介護をできなくなる

介護をする側も高齢者の場合、介護される人を抱きかかえる際に腰を痛めてしまったり、一緒に転倒してしまったりするリスクが高まります。

また、身体的な負担の大きさや将来への不安が精神的な負荷につながることで、抑うつ状態になってしまうリスクもあるでしょう。

介護される側ではなく、介護する側に通院や入院の必要が出ると、結果として介護者がいなくなり、共倒れになってしまう可能性もあります。

介護に要する時間の増加

高齢者は、若い人のように体力がないことから、介護にかかる時間が長くなる可能性が高まります。

たとえば、ベッドに寝ている人の体を拭く動作の場合、力のある若者であればてきぱきとできても、高齢者が行おうとすると、体の向きを変えるだけでも多くの労力と時間を要する可能性があるでしょう。

社会的ネットワークの弱化

介護にかかる時間が増えたり、家を空けづらくなったりすることで、介護をする人と社会とのつながりが減少するケースもあります。

このような社会的ネットワークの弱化は、介護をする側の精神状態に悪影響を及ぼしたり、介護する側とされる側の孤立を招いたりします。

認認介護のリスク

認知症患者を同じく認知症の人が介護する認認介護のリスクについても、3点紹介します。認認介護は、老老介護に比べて生命の危険に直結する問題が起こりやすい傾向があります。

適切な健康管理が難しい

認知機能に問題がある人が介護者になると、服薬管理や食事管理、体調管理が難しくなります。

通常、介護者は、認知症患者を支援、またはご本人に代わってこれらの管理を行いますが、介護者も認知機能に問題があると、管理ができません。そのうえ、できていないことにも気づけない可能性があり、病状の悪化や脱水などのトラブルを招く恐れもあります。

火事の危険性

認知症では、火のつけっぱなしや鍵のかけわすれといった事態が起こることもあります。同居家族が全員認知症の場合、このような家庭の安全を守るための行動ができず、火事を起こす危険性が高まります。

緊急事態に対処しづらくなる

体調の急変や前述の家火事、転倒といった緊急事態が発生した際、介護をする側も認知症だと、適切な対処が取れないリスクが高まります。

どこに連絡をすればよいのかわからないというケースもあり、認知症が進んでいると、そもそも緊急事態が起こっている事実にすら気づけない可能性もあるでしょう。

老老介護や認認介護の解決のヒント

老老介護や認認介護の問題は、高齢家族だけで日々の生活を成り立たせようとすることで起こります。家族間だけですべてを背負おうとせず、公的支援等の活用を検討しましょう。外部の手を借りるのは、介護の質を上げるだけでなく、介護をする側の負担を軽減し、長く安心して暮らし続けるためにも効果的です。

対策①地域包括支援センターに相談する

地域包括支援センターとは、それぞれの地域に設置されている高齢者とその家族のための相談窓口です。
介護や認知症相談、高齢者の暮らしの不安など、さまざまな内容を相談できます。現在の状況に応じた支援制度やサービスなども教えてもらえるため、高齢世帯で不安を感じている方や、老老介護や認認介護を行っている方は、一度訪ねてみてください。
地域包括支援センターでは、医療、介護、住まい、生活支援、介護予防を地域内で連携して提供する「地域包括ケアシステム」を実現するために、上記のような各種の情報提供や相談受付などを行っています。

対策②介護サービスを利用する

要介護認定を受けている場合は、デイサービスやデイケア、訪問介護、などの介護(予防)サービスを利用できます。また、要介護認定を受けていない場合や、介護保険サービスだけでは不足する場合には、お住まいの区市町村や社会福祉協議会、民間企業やNPOの介護・生活支援サービスの活用が可能です。

こうしたサービスを上手に活用すれば、従来の生活を続けながら介護の負担を軽減できます。また、将来的に介護が難しくなった場合は、介護施設やグループホーム(認知症対応型共同生活介護)へ入居するという方法もあるでしょう。

将来どのような選択肢が取れるのかを知っておくだけでも、安心した暮らしを送りやすくなります。介護する方やその家族は、早い段階で、利用できる在宅・施設サービスを調べておくことが大切です。

監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)
川上 由里子
監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)

大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、大手不動産株式会社「ケアデザイン」の立ち上げに参画。支える人を支えるコンサルティングを開発実施。著書に[介護生活これで安心](小学館)「働きながら介護する〜ケアも仕事も暮らしもバランスとって〜」(技術評論社)。

自身も働きながら父親の遠距離介護を体験。介護、看護、医療サービスを利用しながら在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。現在は介護関連のコンサルティングの他、講演、執筆活動を行っている。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。

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