【介護度を理解する!】要介護5とは?状態や他の介護度との違いも解説

公開日:2023年06月30日
要介護5とは

「家族が要介護5と認定されたけど、どのような状態なのかわからない」
「要介護5ではどのようなサービスが受けられるの?」
「要介護5と要介護4の違いは何?」

このような疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。

要介護5を簡単にまとめると以下のような状態です。

  • 要介護度認定で最も介護を必要とする時間が長い
  • 昼夜問わず常時介護が必要
  • コミュニケーションが取れない場合が多い

本記事では、要介護5はどのような状態なのか、どのようなサービスを受けられるのか、などわかりやすく解説します。

要介護5の内容について気になっている人はぜひ参考にしてみてください。

「要介護5」とは生活のすべてにおいて介助が必要な状態

厚生労働省による「要介護状態」の定義は以下のとおりです。

身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(要介護状態区分)のいずれかに該当するもの(要支援状態に該当するものを除く)

厚生労働省|要介護認定に係る法令

わかりやすく説明すると「人の手を借りずに自分だけで日常生活を送ることが難しい状態」です。

そのなかで「要介護5」とは介助なしに日常生活を送れず、コミュニケーションをとることも困難です。 昼夜問わず常時介護が必要な状態をいいます。

要介護5の認定基準

要介護度の判定は、厚生労働省が基準を定める「要介護認定基準時間(介護にかかる時間)」をベースに7段階で区分しています。

  • 要支援1~2
  • 要介護1~5

さらに「自立」を合わせ、合計8段階に分けられます。

要介護者を介護するために必要な時間は、下記の表に示してあるように要介護度別で定められています。

区分 要介護認定等基準時間
(介護をするために必要な時間)
要支援1 25分以上32分未満
要支援2 32分以上50分未満
要介護1 32分以上50分未満
要介護2 50分以上70分未満
要介護3 70分以上90分未満
要介護4 90分以上110分未満
要介護5 110分以上

※参照:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」

上記に示しているように、要介護5では介護をするために必要な時間は「110分以上」とされています。

しかし、実際に必要な介護時間を正確に測定することは困難です。

そのため、要介護認定等基準時間を算出するために、要介護認定の「一次判定」を行います。一次判定は、市区町村の認定調査員による心身の状況調査(認定調査)と主治医の意見書をもとに、コンピュータで判定されます。

要介護5になる原因

2022(令和4)年の厚生労働省の調査によると、要介護5になる主な原因は1位「脳血管疾患(脳卒中)」26.3%、2位「認知症」23.1%です。

脳血管疾患により、麻痺が残ったり認知症を併発したりと、以前のような生活レベルで暮らすことが困難となるケースも多いです。

また、高齢になると転倒によって骨折に至ることも多く、ベッド上で生活する時間が長くなり認知機能の低下を及ぼすこともあります。

※参照:構成労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」

要介護5と要介護4の違い

要介護4と要介護5の違いは、以下の表を参考にしてください。

要介護度 要介護認定の目安 状態の目安となる具体例
要介護4
  • 自力での移動ができないなど、介助がなければ日常生活を送れない。
  • 排泄、食事、入浴、着替えなどすべてにおいて介助が必要。
  • 思考力の低下などもみられ、認知症の諸症状への対応も必要になることもある。
要介護5
  • 介助なしに日常生活を送れない。
  • コミュニケーションをとることが困難で、基本的に寝たきりの状態。
  • 日常生活全般が自分で行えないため、寝返りやおむつの交換、食事などすべてで介助が必要。
  • 会話などの意思疎通も困難。

要介護5とは、要介護度区分のなかでも最も介護を必要とする状態です。

要介護4・5のどちらも、自力で起き上がったり移動したりできないため、ほとんど寝たきりのこともあります。

要介護4だとわずかに自分でできることがあるのに対し、要介護5は難しい状態です。

ベッド上で過ごす時間も長く、介護や医療ケアにかかる時間も要介護4に比べ長くなっています。また、要介護5の多くは意思疎通が困難です。

要介護4の詳しい概要については、以下の記事にまとめていますので参考にしてください。

要介護5で利用できるサービス

要介護5で利用できるサービスを表にまとめました。

自宅で介護サービスを受ける
(訪問型)
訪問介護
訪問看護
訪問入浴
訪問リハビリテーション
居宅療養管理指導
夜間対応型訪問介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
施設に通ってサービスを受ける(通所型) 通所介護(デイサービス)
通所リハビリテーション(デイケア)
地域密着型通所介護
療養通所介護
認知症対応型通所介護
訪問・通い・宿泊サービスを組み合わせて利用する 看護小規模多機能型小規模看護(複合型サービス)
小規模多機能型居宅介護
短期入所型 短期入所生活介護
(ショートステイ)
短期入所療養介護
(医療型ショートステイ)
福祉用具 福祉用具の貸与費の支給
福祉用具の購入費の支給
住環境を整備する 住宅改修費の支給
地域密着型 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
地域密着型特定施設入所者生活介護
その他 特定施設入居者生活介護

要介護5では、上記すべて介護保険サービスの対象です。

サービス内容はそれぞれ異なるため、ケアマネジャーや家族とともにケアプランを作成し、利用するサービスを選択します。

代表的なサービスの内容に関しては、「【介護の基礎知識】介護保険サービスの種類一覧と料金表|3つの代表的サービスを徹底解説」 を参考にしてください。

要介護5の区分支給限度額

居宅介護サービスを利用する場合、利用できるサービスの量(支給限度額)が、要介護度別に設定されています。要介護5の場合は月額362,170円です。

※参照:厚生労働省「サービスにかかる利用料」

支給限度額内でサービスを利用する場合は、費用の1割(一定以上所得者の場合は2割、または3割)を負担します。超過した分のサービス費用は全額自己負担です。

「要介護5で支給限度額内におさめたい場合、サービスの利用頻度はどれくらいかな……」とお悩みの人は、以下のウェブサイトで介護サービスの概算が計算できます。

費用の目安としてご活用ください。

※参照:厚生労働省「介護サービス概算料金の試算」

要介護5で利用可能な助成制度

介護保険サービス以外にも、介護者の負担を軽減できるようなさまざまな制度があります。

高額医療・高額介護合算療養費制度
  • 世帯の年間(毎年8月1日~翌7月31日)の介護保険と医療保険の自己負担額を合算。
  • 限度額を超えた場合、申請することによって限度額を超えた分の金額が払い戻されます。
  • 基準額は世帯員の年齢構成や所得区分に応じて設定されています。
高額介護サービス費制度
  • 1ヶ月間の介護保険サービスの自己負担額が上限額を超えると、超えた分は申請により払い戻し(高額介護サービス費)を受けられます。
  • 上限額は、世帯に属する65歳以上の人の課税所得額などに応じて決められています。
医療費控除
  • 1月から12月までの1年間の医療費が10万円、または総所得金額の5%のうち、どちらか低い方を超えた際に利用できる所得控除。
  • 確定申告で申告すれば、所得税や住民税を軽減できます。
遠距離介護で使いたい交通機関の割引制度
  • 一部の航空会社では、介護割引運賃制度を用意しています。
  • 鉄道会社各社では、長距離移動用の割引制度が複数あります。(※タイミングによっては実施していない場合もあるので事前に確認しておきましょう)

上記の他にも、介護に必要なお金を支援する制度があります。詳しくは、下記の記事にまとめていますので参考にしてください。

また、自治体によってそれぞれサービスを提供しているところもあり、鹿児島市の場合は「理容・美容サービス」「寝具洗濯サービス」があります。

ご自身の住まいでどのようなサービスがあるのか、地域の市町村窓口や地域支援センターで確認できますので、一度確認してみるとよいでしょう。

要介護5で受けられるケアプラン・費用の例

要介護5で受けられるケアプラン・費用の例を、家族と同居の場合と施設に入居する場合に分けて見ていきましょう。

要介護5で家族と同居する場合

サービス内容 利用回数 費用額
訪問介護(ホームヘルプサービス) 20回 67,800円
訪問看護 8回 46,960円
訪問入浴 4回 57,440円
訪問リハビリテーション 4回 13,280円
通所介護 4回 46,680円
短期入所生活介護 8日間 89,600円
福祉用具貸与 -回 24,280円
1ヶ月の介護サービス費用試算額 346,040円
自己負担額 34,604円
(1割負担の場合)

※参照: 厚生労働省|介護サービス概算料金の試算

上記の費用は厚生労働省の介護サービス料金ページで試算しています。

『要介護度』と『介護サービス』を選択して、ひと月の利用回数を入力すると1ヶ月の介護サービス費用試算額が表示されますが、あくまでも目安です。

ケアプランを作成する際はどのようなサービスが必要なのか、担当のケアマネジャーとしっかりと話し合って決めましょう。

要介護5で高齢者向け施設に入居している場合

要介護5で特別養護老人ホームに入居する場合、サービスを利用すると自己負担は以下のようになります。

特別養護老人ホームでサービスを受ける場合の月額利用料の一例

サービス内容 費用額
施設サービス費 31,672円(1割負担の場合)
食費 約4万円
居住費 約1.1~6万円
自己負担額 約6~15万円(1割負担の場合)

医療・介護・生活環境が充実した施設になると、月額数十万円というケースもよくあります。そのなかでも特別養護老人ホームは、入居条件があるものの、比較的費用負担は軽い点が特徴です。

要介護5で入居できる施設・費用

ご自宅での介護に不安や心配を感じることもあるでしょう。

このような場合は、第二の自宅として高齢者向け施設で暮らすこともひとつの選択です。

 

要介護5で入居できる高齢者向け施設を以下にまとめています。
各施設に入居する際に必要な入居金(入居時に必要な費用)、月額で支払う費用の目安も記載しています。

施設 概要 入居金 月額利用料
介護付有料老人ホーム 介護スタッフが24時間配置されている施設 0円~数億円を超えるものまで幅広い 15~30万円
住宅型有料老人ホーム 生活支援などのサービスが付帯した施設 15~30万円
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 認知症の診断を受けた高齢者が共同生活する施設 0円~数百万円 15~20万円
サービス付き高齢者向け住宅 高齢者が暮らしやすいサービスが付帯した住宅
  • 一般型:数万円~数百万円
  • 介護型:数万円~一部に数千万円
  • 一般型:5万円~25万円
  • 介護型:15万円~40万円
特別養護老人ホーム 常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者に対して、生活全般の介護を受けられる施設 0円 6万円~15万円
介護老人保健施設 高齢者が自宅に戻るためのリハビリや医療ケアなどを受けられる施設 0円 6万円~17万円
介護医療院 長期療養を必要とする方が、医療や介護のサポートが受けられる施設 0円 9万~17万円
介護型ケアハウス 自宅での生活が困難で、生活支援が必要な60歳以上の高齢者が生活する施設 0円~数百万円 8万円~20万円

費用はあくまでも目安のため、詳細は各施設にお問い合わせが必要です。

介護サービス費は1割負担(所得に応じて2~3割負担の場合もあり)ですが、日用品費や医療費は含まれないため自己負担となっています。

なお、要介護3~5の場合、特別養護老人ホームへの入居が可能です。

特別養護老人ホームは「特養」とも呼ばれており、基本的には介護を受けながら生涯にわたり暮らせる入居先となります。

要介護5に関するよくある質問

要介護5に関するよくある質問を紹介します。

  • 要介護5で一人暮らしや在宅介護は可能?
  • 要介護5の人が多く利用している高齢者向け施設は?
  • 要介護5の平均寿命は?

ひとつずつ見ていきましょう。

要介護5で一人暮らしや在宅介護は可能?

要介護5では、日常生活において昼夜問わず常時介護が必要な状態です。

一人暮らしだと安全性の確保が難しいため、高齢者向け施設への入居を検討する方が多いようです。

在宅介護の場合、介護者は一日の多くの時間を介護に充てる必要があります。

介護を中心としたライフスタイルになり、介護負担が大きくなる恐れもあるでしょう。

また、要介護5では経管栄養や吸引、酸素などの医療処置が必要なケースもあります。

在宅介護を選択する場合はケアマネジャーと十分に話し合い、安全に暮らせるようケアプランを考えていくことが重要です。

要介護5の人が多く利用している高齢者向け施設は?

要介護5の場合、特別養護老人ホームに入居している方が多くいらっしゃいます。

特別養護老人ホームは介護サービスも充実しており、看取りまで対応できる施設も増加の傾向です。

身の回りの生活面での介護だけでなく、機能訓練やレクレーションなども行っています。

特別養護老人ホームは他の施設と比べても費用負担が少ないため、入居先として選ばれることも多いです。

特別養護老人ホームへの詳しい概要や入居条件に関しては、「【表比較でわかる!】特別養護老人ホーム(特養)とは?特徴・費用・申し込み方法を解説」をご参照ください。

要介護5の平均寿命は?

令和4年度のデータによると、健康寿命(日常生活に制限のない期間)と平均寿命は以下のとおりです。

  資格 平均寿命
男性 72.68年 81.48歳
女性 75.38年 87.45歳

※参照:内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」

健康寿命と平均寿命の間には差があるため、その期間は介護が必要です。

令和4年時点では、男性の場合は約9年、女性の場合は約12年ほど介護期間を要すると予測されます。

とはいえ、介護期間はひとりひとりの状況によって大きく異なるので、ひとつの目安として認識しておくとよいでしょう。

まとめ

本記事では要介護5について詳しく説明しました。

要介護5では、昼夜問わず常時介護が必要な状態です。要介護度のなかでも最も介護に要する時間が必要であり、医療ケアが必要なケースも多くあります。

さまざまな介護サービスを組み合わせながら活用していくと良いでしょう。

本人と家族に合う介護施設や介護サービスを選ぶことが大切です。

監修者:川村 匡由(かわむら まさよし)
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格
川村 匡由
監修者:川村 匡由(かわむら まさよし)
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格  

博士(早稲田大学)、福祉デザイン研究所所長、武蔵野大学名誉教授。

1994年、つくば国際大学教授に就任後、武蔵野大学大学院教授を歴任。専門は社会保障、高齢者福祉、地域福祉、防災福祉。シニア社会学会・世田谷区社会福祉事業団理事。

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