【介護の基礎知識】看護小規模多機能型居宅介護とは?料金や対象者、利用方法を解説

公開日:2021年12月17日更新日:2023年04月06日
看護小規模多機能型居宅介護

例えば、「親が退院したものの、日常的な医療処置が困難」という場合、どのようなサービスを選択したら良いか迷いますよね。そんなとき頼りになるのが「看護小規模多機能型居宅介護」です。在宅で訪問看護を含めた介護サービスを受けることができます。

本記事では、看護小規模多機能型居宅介護の特徴や料金、利用方法などを見ていきます。

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)とは?

看護小規模多機能型居宅介護とは、通称「看多機(かんたき)」とも呼ばれる介護保険サービスのひとつです。「通所介護(デイサービス)」「訪問介護」「短期入所(ショートステイ)」の3つの介護サービスに、「訪問看護」の機能を加え、看護と介護を一体的サービスとして受けられます。

本人に医療ケアが必要な人、退院したばかりで体調が不安定な人、家族の介護負担を軽減したい人などの在宅生活を支援するためにつくられた制度です。

看多機は、主治医と連携しつつ、訪問看護と訪問介護、通い、泊まりを、1つの事業所が提供します。1度の利用手続きで済む点もメリットです。

そして、同じ事業所が対応することにより、担当が変わることも少なく、顔なじみのスタッフが対応してくれるので、利用者も安心してサービスを受けられます。

小規模多機能型居宅介護との違い

同じような名称のサービスに「小規模多機能型居宅介護」があります。看護小規模多機能型居宅介護は、小規模多機能型居宅介護をベースとして、訪問看護サービスを加えたものです。医療ケアが必要な場合は、看護小規模多機能型居宅介護が向いています。

  看護小規模多機能型居宅介護 小規模多機能型居宅介護
利用条件 要介護認定1以上の人
施設と同じ市区町村にお住まいの人
要支援・要介護認定を受けた人
施設と同じ市区町村にお住まいの人
サービス 通い/訪問/宿泊/訪問看護 通い/訪問/宿泊

看護小規模多機能型居宅介護の対象者・利用条件

看護小規模多機能型居宅介護の対象者・利用条件は、要介護1以上の認定を受けていて、サービス事業所と同一の自治体に住民票を持っている人です。小規模多機能型居宅介護では対応可能な、要支援1~2認定の人は利用できないため注意しましょう。

具体的には、退院直後で在宅生活に不安がある人、看取り期または病状不安定期でありながら、在宅生活を継続したい人が利用する傾向にあります。

介護に当たるご家族が一時的にリフレッシュする目的(レスパイトケア)でも使えるため、利用条件を満たしている場合には担当のケアマネジャーに相談してみましょう。

看護小規模多機能型居宅介護で受けられるサービス内容

看護小規模多機能型居宅介護は、1つの事業所で通い・泊まり・訪問介護・訪問看護を受けられます。以下、それぞれの内容を詳しく見ていきます。

通い(デイサービス)

看護小規模多機能型居宅介護のデイサービスでは、食事や入浴、レクリエーションのほか、主治医の指示の下、医療ケアやリハビリが提供されます。

一般的なデイサービスは昼間の時間帯に限定されますが、看護小規模多機能型居宅介護のデイサービスは朝早くから夜遅くまで利用が可能な場合もあります。

なお、一般のデイサービスについては下記記事でまとめています。

泊まり(ショートステイ)

看護小規模多機能型居宅介護では、日中デイサービスを利用してそのまま宿泊するショートステイも行っています。デイサービスや訪問サービスのスタッフが対応してくれるため、安心して宿泊できます。

宿泊利用回数に上限はありません。ただし1日の宿泊定員は9人以下のため、空きがあるかの確認が必要です。なお、深夜の時間帯は看護師の配置は義務付けられていません。

訪問介護

看護小規模多機能型居宅介護では、デイサービスやショートステイと同じスタッフが訪問介護も提供します。利用者の自宅に出向いて食事や入浴の介助、調理や掃除などの生活支援を行います。

一般的な訪問介護サービスと異なり、看護小規模多機能型居宅介護の訪問サービスには時間制限がありません。

訪問看護

看護小規模多機能型居宅介護では、医療ケアのほか、看取りにも対応しています。退院したばかりで不安を抱えている人への相談や指導、服薬管理はもちろん、最期を自宅で迎えたい人のケアもしてもらえます。

なお訪問看護は主治医の指示書に基づき行われます。

看護小規模多機能型居宅介護のメリット・デメリット

看護小規模多機能型居宅介護は、1事業所と契約すれば通い・泊まり・訪問介護・訪問看護を受けられます。メリットとデメリットをよく把握したうえで、利用者が快適に過ごせるサービスを決めましょう。

看護小規模多機能型居宅介護のメリット

看護小規模多機能型居宅介護にはさまざまなメリットがあります。以下1つでも望むポイントがあれば、利用を検討する価値があるでしょう。

利用できるサービスの自由度が高い

看護小規模多機能型居宅介護は定額制で、回数に限りがないため何度でも使うことができます。利用者の状況に合わせてサービスの組み合わせが可能です。

例えば、ご家族に急用ができたときは「デイサービス後にそのまま宿泊」、「安否確認のために訪問」といった自由度が高いサービスを受けられます。

同じ事業所のスタッフからサービスを受けられる

看護小規模多機能型居宅介護は通い・泊まり・訪問介護・訪問看護とサービスが代わっても、常に同じ事業所のスタッフからサービスを受けられます。

サービスを代えるたびに新たに事業所を探す手間もなく、顔なじみのスタッフが対応してくれるため安心です。スタッフも利用者の身体の状況や家庭環境を把握しているため、きめ細かなサービスを提供してくれます。

高額な初期費用が要らない

看護小規模多機能型居宅介護は高額な初期費用がかかりません。月額費用の支払いだけで、まとまった費用を準備しなくてもよい点が人気です。サービス加算費や日常生活費を合算した金額が月額費用なので、計算方法もシンプルです。

少人数定員だから対応が細やか

看護小規模多機能型居宅介護の登録定員は最大29名です。少人数のため職員の目が届きやすく、利用者の体調変化にも気付きやすい環境です。

そして、どのサービスを利用しても同じスタッフが対応してくれるため、薬の追加や変更、飲み忘れのトラブルが発生しにくくなります。

 

看護職員による医療処置にも対応

看護小規模多機能型居宅介護は、看護職員による医療処置にも対応しています。主治医との連携・指示のもと、インスリン注射や吸引ができるため、自宅で医療ケアを受けながら過ごしたいという希望にも、細やかなサービスで寄り添ってくれます。自宅で看取りたい場合も対応してもらえます。

本人と家族の負担軽減(レスパイトケア)

看護小規模多機能型居宅介護を利用することで、利用者本人と家族の負担軽減が期待できます。看護・介護のプロからサービスを受けて利用者がリフレッシュできる、利用者がサービスを受ける時間に家族が息抜きできるというメリットもあります。

看護小規模多機能型居宅介護の訪問看護とデイサービスを利用した結果、家族が仕事に行けるようになったというケースもあります。

看護小規模多機能型居宅介護のデメリット

看護小規模多機能型居宅介護には、メリットだけではなくデメリットも存在します。冷静に検討するため、デメリットも確認し、利用を検討しましょう。

一日に利用できる人数に制限がある

看護小規模多機能型居宅介護は、一日に利用できる人数に制限があります。そのため、利用者が希望するときに利用できないケースもあります。通いは一日18人、泊まりは一日9人の制限があるため、サービス利用の際には、希望日を複数考えておく必要があります。

また看護小規模多機能型居宅介護を利用する場合は、ケアマネジャーが変わります。それとともに他のデイサービスやショートステイなどは併用できなくなります。

人間関係が継続利用に大きくかかわる

看護小規模多機能型居宅介護は、少人数の決まったメンバーが利用するため、人間関係が継続利用に大きくかかわります。大規模デイサービスなら利用人数が多いため、問題が表面化することは少なく、利用時間をずらすことも可能です。

しかし看護小規模多機能型居宅介護では、スタッフとの相性が悪い、人間関係がこじれるなどして継続が困難になるケースも。利用前に、スタッフや他の利用者の様子や雰囲気を見学し、うまくなじんで生活していけそうかを確認しておきましょう。

看護小規模多機能型居宅介護の利用方法

看護小規模多機能型居宅介護の利用方法を見ていきます。利用までの過程を把握して、スムーズに準備をしましょう。なお契約から利用開始まで2週間ほどかかるため、余裕を持って進めてください。

1.担当ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談

現在担当してもらっているケアマネジャーまたは地域包括支援センターに相談しましょう。利用者本人の状態を把握して、どのサービスが適しているかを判断してもらいます。 利用者に適した事業所が見つかれば、紹介してもらいましょう。希望や要望がある場合には、このとき伝えておくとスムーズです。

2.サービス事業者との契約

希望する事業所が決まったら、面談が行われます。事前にパンフレットをもらったり見学する場合には、疑問点や不安などを確認しておきましょう。 できれば、ほかの利用者の意見も聞いて参考にし、納得できたらサービス事業者と契約を結びます。

3.ケアプラン作成

前述のように要介護認定を受けていて担当のケアマネジャーがいる場合でも、看護小規模多機能型居宅介護の利用を決めると、そのまま担当してもらうことはできません。

その事業所専属のケアマネジャーがケアプランの作成担当者になります。看護小規模多機能型居宅介護は複数のサービスを一つの事業所が提供しているため、利用者の状況把握やプラン変更を素早く行うためです。

自宅で過ごしたい人を支える看護小規模多機能型居宅介護

看護小規模多機能型居宅介護は、医療ケアに加えてさまざまなサービスを利用したい人におすすめです。希望や環境に合った自由度が高いサービスを受けられます。

看護小規模多機能型居宅介護に適しているのは下記のような人です。

  • 体調の変化が大きな人が、柔軟に、各種サービスを利用したい場合
  • 新しい環境になじみにくい人
  • 介護してくれる家族の予定に合わせてもらえ、介護の負担を減らしたい人
  • さまざまな介護サービスの契約を一本化したい人

24時間体制でサポートが必要な場合には、看護小規模多機能型居宅介護のほか、看護師常駐の有料老人ホームや特養、介護医療院なども考えられます。

必要に応じたサービスを選択して、利用者本人や家族全員が無理なく暮らすことのできる選択を検討しましょう。

監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー
岡本 典子
監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー

「高齢期の住まい」に着目し、東京や神奈川を中心に、介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、240ヶ所以上を訪問。現在、「終のすみか探し」コンサルタントとして、シニア期の住まい探し・住みかえ、執筆、講演と、幅広く活動している。

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