【表比較でわかる!】軽費老人ホームとは?定義や費用、入居までの流れを徹底解説

公開日:2021年12月22日更新日:2023年02月06日
軽費老人ホーム

世の中の高齢化が進む中で、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の数も増えています。しかし、このような施設の多くは、初期費用や月額費用が高額なこともあり、簡単に入居を決められないケースも多いでしょう。

そのような場合に検討したいのが、特別養護老人ホーム(特養)や軽費老人ホームのような、公的な高齢者施設です。

本記事では、有料老人ホームやサ高住などに比べ、比較的少ない費用で食事の提供や緊急対応といったサービスを受けられる「軽費老人ホーム」について、特徴や費用、入居条件、入居までの流れなどをまとめて見ていきます。

軽費老人ホームとは?

軽費老人ホームは、住宅や家族の事情などの理由により自宅で生活するのが難しい、60歳以上で自分の身の回りのことができ、共同生活に適応できる人が入居する施設です。食事や生活支援サービスを受けることができます。

なお、厚生労働省では、軽費老人ホームを『無料又は低額の料金で食事の提供(B型は自炊)その他日常生活上必要な便宜を供与することを目的とする施設』と定義しています。※
設置基準は原則個室で21.6㎡以上ですが、2人入居も可能で、その場合は31.9㎡以上です。

居室には洗面所、トイレ、ミニキッチン、収納設備が。共同設備として食堂、浴室、談話室などが設けられています。

運営主体は社会福祉法人や医療法人で、公的側面が強いこともあり、比較的安く生活できます。

※参照:厚生労働省(外部リンク)

軽費老人ホームの種類

軽費老人ホームには、A型、B型、ケアハウス(C型)の3タイプに大別できます。それぞれの違いについて見ていきます。

  軽費A型 軽費B型 ケアハウス(C型)
食事の提供 あり なし あり
介護サービス なし(外部サービス利用可能) なし(外部サービス利用可能) 一般型:なし(外部サービス利用可能)
介護型:あり

軽費老人ホームA型

軽費老人ホームA型の特徴は、食事の提供がある点です。60歳以上で、家族と同居できない人が入居できます。

なお、介護サービスは付いていませんが、外部の訪問介護事業所などと契約を結んで介護サービスを受けることが可能です。自立のほか、要支援や要介護の人でも入居できる場合があります(詳細の規定は各施設により異なります)。

軽費老人ホームB型

軽費老人ホームB型は、食事の提供がありません。

また、A型では一定数介護職員を配置することが義務付けられています。B型では必要ありませんが、スタッフは常駐していて、外部の介護サービスを利用することも可能です。

ケアハウス(C型)

ケアハウスは、介護の有無によって一般型(自立型)と介護型(特定施設)に分けられます。

一般型は、食事の提供があって介護サービスの提供がないため、軽費老人ホームA型と似た性質を持っているといえるでしょう。

介護型は、食事の提供のほか、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設のため、日常生活支援と介護サービスを受けて暮らせます。

軽費老人ホームは「高齢等の理由によって独立した生活が不安な人」を対象としています。しかし、その一種であるケアハウスは「身体機能の低下等があって独立した生活が不安な人」が対象とされています。また、ケアハウスには「家族による援助が困難」という要件もあります。

なお、軽費老人ホームA型とB型には所得制限がありますが、ケアハウスにはありません。
所得制限は自治体により異なりますが、毎月の収入が34~35万円程度以下となっています。

現在は「ケアハウス」に一元化

軽費老人ホームA型、B型は、今後なくなることが決定している施設です。

そもそも、軽費老人ホームは、自宅で生活するのが難しい高齢の方が、サポートを受けて安心して暮らすための施設です。しかし、その後「ケアハウス」が誕生したことで、制度が複雑になってしまいました。

これを解消し、一元化するために、A型とB型は今後新しく建てられないことになっています。現在存続しているA型・B型の軽費老人ホームについては、施設が老朽化するまで存続し、建て替え後は基本的にケアハウスに転換していくことになります。

軽費老人ホームの対象者・入居条件

軽費老人ホームに入居できる対象者について、あらためて条件を確認してみましょう。

軽費老人ホームの種類によって多少違いはあるものの、A型、B型、ケアハウス(一般型)については、おおよそ以下の条件を満たす人が対象となります。

  • 60歳以上(2人入居の場合は、いずれかが60歳以上)
  • 2人入居の場合は、夫婦か三親等以内の親族
  • 身体機能の衰えや高齢といった理由で、独立して生活するのが難しい
  • 家族による援助が難しい(ケアハウス)

軽費老人ホームの入居難易度は施設によりさまざま

前述の通り、軽費老人ホームのうちA型とB型は、年々施設数が減少していて、新たには建てられません。そのため、入居するのも難しい傾向にあるでしょう。

特にB型は数が少なく、そもそも近くにないという地域もあります。入居を希望する場合は、空きがあるかどうか市区町村窓口に問い合わせてみましょう。

一方、ケアハウスのうち介護型の入居条件は要介護度1以上です。特別養護老人ホームの入居条件(原則要介護度3以上)より要介護度が低くても入れることや、施設数がそれほど多くないことなどの理由から、入居までの待機期間が有料老人ホームに比べ、長い傾向にあります。

一般型は、ほぼ自立の人が入居がするため、周辺環境などによっても待機人数が大きく変わることから、待機期間も幅広くなっています。

軽費老人ホームで提供されるサービス

軽費老人ホームで提供される生活支援サービスについて見ていきます。

食事サービス

食事サービスは、軽費老人ホームA型・ケアハウスで提供されています。共用設備に食堂があり、そこで食べられます。

なお、軽費老人ホームB型では食事の提供サービスはありませんが、居室で自炊が可能です。また、別料金での宅食サービスの利用は可能です。

アクティビティ

施設によっては、お正月やお月見など、季節の行事に合わせた企画を実施しています。また、毎日体操を行ったり、入居者が自由に参加できるクラブ活動があったりと、生き生きと健康で暮らし続けるための活動が行われます。

このような活動への参加は、入居者にとって心身への刺激になるため、健康維持にもいい効果があります。また、ほかの入居者とコミュニケーションをとることは、社会とつながりを持つ喜びや孤独感の解消にも役立ちます。

緊急時対応

軽費老人ホームでは、スタッフが24時間常駐しており、緊急時の対応体制が整っています。夜間にトラブルが発生した際にも対応が可能です。

なお、スタッフの常駐は、A型やケアハウスだけでなく、介護職員の配置が義務付けられていないB型でも同様です。

医療・介護サービス

軽費老人ホームA型、B型、ケアハウス「自立型」は、「居宅(住まい)」という位置づけの施設です。そのため、必要に応じて外部の介護事業所と契約して訪問介護サービスを利用します。

一方、ケアハウス「介護型」は、介護職員または看護職員が、要介護者3人に対して1人以上配置されており、施設内のスタッフから介護サービスを受けられます。

なお、医療面に関しては、協力医療機関と連携していますので、必要な人は訪問診療の契約をしたり、通院する形式です。

軽費老人ホームの設備内容

軽費老人ホームには、以下の設備を設けなければならないと法律で定められています。

  • 居室 (洗面所、トイレ、収納、簡易キッチン、非常通報ブザーか代用可能な設備を有する)
  • 談話室、娯楽室または集会室
  • 食堂
  • 浴室
  • 洗面所
  • トイレ
  • 調理室
  • 面談室
  • 洗濯室または洗濯場
  • 宿直室
  • そのほか、事務室その他の運営上必要な設備

ただし、上記の設備のうち、ほかの施設を利用するといった理由で必要がないものに関しては、設置しなくてよいとされています。

実際にどのような設備があるのかは、それぞれの施設によっても異なります。入居を検討する際は、パンフレット等で設備を確認したり、見学することをおすすめします。

軽費老人ホームにかかる費用

ここでは、軽費老人ホームにかかる費用について見ていきます。実際にかかる金額は施設や所得によって変わります。より具体的に金額を知りたい場合は、担当のケアマネジャーや施設などに確認してみましょう。

  軽費老人ホームA型 軽費老人ホームB型 ケアハウス(C型)
初期費用 原則不要 原則不要 一般型:0~1,000万円
介護型:0~数百万円
月額費用 6.5万円~15万円程度
(前年所得による)
4万円程度 7~20万円程度
(前年所得による)
介護サービス費用 なし(外部業者を利用した場合は必要) なし(外部業者を利用した場合は必要) 一般型:なし(外部業者を利用した場合は必要)
介護型:要介護度による
その他の費用 日用品、医療費、光熱費、通信費等実費 日用品、医療費、光熱費、通信費等実費 日用品、医療費、光熱費、通信費等実費
所得制限 あり あり なし

軽費老人ホームA型

軽費老人ホームA型でかかる可能性がある費用は、以下の通りです。

  • 初期費用(なし、もしくは保証金程度)
  • 月額費用(居住費、食費、その他費用)
  • 光熱費(居室内で使用した実費)
  • 日用品など日常生活に必要な費用(個人で必要に応じて支払い)
  • 介護サービスにかかる費用(外部の訪問介護サービスを利用する場合)

ただし、初期費用はかからない場合が多いです。施設に支払う月額費用の目安は、前年度の所得や入居施設によっても異なりますが、目安としては、おおよそ6.5万円~15万円ほどの場合が多いです。

軽費老人ホームB型

軽費老人ホームB型の場合は、食事が提供されませんが、それ以外に必要な費用の内訳はA型とほぼ同様です。

  • 初期費用(なし、もしくは保証金程度)
  • 月額費用(居住費、その他費用)
  • 光熱費(居室内で使用した実費)
  • 食費、日用品など日常生活に必要な費用(個人で必要に応じて支払い)
  • 介護サービスにかかる費用(外部の訪問介護サービスを利用する場合)

こちらも、初期費用はかからない場合が多いでしょう。また月額費用は食事費用がない分、A型に比べると低額に設定されていることがほとんどなので、だいたい目安として4万円程度で利用が可能です。

ただし、食事の提供がないため、月額費用以外に食材料費やお弁当代等を用意する必要があります。

ケアハウス

ケアハウスへの入居にかかる費用の内訳は、軽費老人ホームA型とほぼ同様で、下記の通りです。

  • 初期費用(入居一時金・保証金等)
  • 月額費用(居住費、食費、その他費用)
  • 光熱費(居室内で使用した実費)
  • 日用品など日常生活に必要な費用(個人で必要に応じて支払い)
  • 介護サービスにかかる費用(介護型の場合。一般型の場合は、外部の訪問介護サービスを利用する場合のみ発生)

ケアハウスの場合、軽費老人ホームA型・B型と違い、保証金や入居一時金などの初期費用が必要な施設がほとんどです。また、介護型は介護サービスの費用がかかります。具体的な金額は、要介護度や所得に応じた自己負担割合分により異なります。

初期費用は、一般型(自立型)か介護型(特定型)かにより異なりますが、一般型は0~1,000万円、介護型は0~数百万円が目安です。

住居費などの月額費用の目安(実費支払いの日用品等を除く)は、一般型で7~15万円、介護型で8~20万円程度でしょう。また、加えて日常でかかる費用や、介護サービス費用が別途かかることになります。

都市型軽費老人ホーム

2010年より地価の高い都市部の一部地域において、居住面積や職員配置基準の特例を設け、利用料の低廉化が図られた「都市型軽費老人ホーム」が建てられています。設置できるのは首都圏、近畿圏、中部圏にある一定地域などの既成市街地です。

定員は20人以下(5人以上)で、居室面積は7.43㎡以上と狭くなっています。

見守りと食事の提供が行われています。入居できるのは、孤立していて、生活するのに不安があり、身の回りのことができる人で、かつ、施設所在地に住民票のある60歳以上の人です。

入居申し込みを行うと面接審査が行われ、緊急度の高い人から優先的に入居となります。

軽費老人ホームに入居するまでの流れ

最後に、軽費老人ホームに入居するまでの流れについて見てみましょう。

なお、軽費老人ホームA型、B型は今後なくなっていく施設ですから、ここではケアハウスを例にとってご説明します。ただし、軽費老人ホームA型やB型でも、手続きにそれほど大きな違いはありません。

1.地域内の軽費老人ホームを探す

軽費老人ホームは、高齢者施設の検索サイトやお住まいの市区町村役場のサイトなどから探せます。軽費老人ホームが独自のホームページを持っていることもあるので、探してみましょう。

うまく探せない場合は、地域包括支援センター等に相談してみてください。

2.施設見学

好印象を持った施設があったら、見学できるかどうか問い合わせてみましょう。申込書等がホームページからダウンロードできる場合もあります。しかし、いきなり申し込みをして、イメージに合わないと大変です。まずは見学して、雰囲気や設備を確認してみることをおすすめします。

3.入居の申し込み

入居したいと気持ちが決まったら、入居申請書を提出します。形式等はそれぞれの施設によって異なる可能性があるため、書き方で分からない部分は施設に問い合わせましょう。

4.入居面談

入居申請書が受理されたら、入居面談に進みます。面談では、本人の心身の状況などを確認されます。また、入居面談の前に健康診断書が必要です。

5.入居

入居が決定したら、転居して新しい暮らしをスタートします。

軽費老人ホームA・B型は「ケアハウス」へ

軽費老人ホームA型およびB型は、新しく建てられることはありません。古い施設が多く、建物が老朽化しているケースも多く見られます。

今後は、食事や生活支援が受けられる「ケアハウス」に転換していくため、軽費老人ホームだけをチェックするのではなく、ケアハウスの利用を視野に入れて、住みやすい施設を探しましょう。

選択肢を増やすためにも、下記記事でその他の高齢者施設・住宅の種類・特徴についても知っておくとよいでしょう。

監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー
岡本 典子
監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー

「高齢期の住まい」に着目し、東京や神奈川を中心に、介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、240ヶ所以上を訪問。現在、「終のすみか探し」コンサルタントとして、シニア期の住まい探し・住みかえ、執筆、講演と、幅広く活動している。

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