【介護の基礎知識】老人ホーム・高齢者向け住宅の種類を理解しよう!

公開日:2022年08月22日更新日:2023年01月10日
高齢者施設・住宅の種類・特徴

高齢者の住まいには、たくさんの選択肢があります。一般的にすべてを「老人ホーム」とひとことでまとめて言われる場合がありますが、これは正しくありません。このページでは、老人ホーム・高齢者向け住宅の種類について詳しく解説します。

ここではまず、「老人ホーム」と名の付くところを挙げてみました。

老人ホームの種類

こちらのように、「老人ホーム」には4類型、それぞれの類型ごとに数タイプに分かれています。 しかし、上記4類型のほかにも、高齢者施設には、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、介護療養型医療施設、グループホーム。高齢者住宅には、サービス付き高齢者向け住宅、シニア向け分譲マンションがあります。
それぞれの高齢者施設・住宅にはどのような特徴があり、どのような人が入居できるのか、おおよその費用はいくらくらいかかるのか、という目安をまとめました。

「民間施設・住宅」と「公的施設」に大別できる

高齢者施設・住宅には、上記のように数多くの種類があります。全体像を一覧表にすると下記のようになります。

高齢者施設・住宅一覧

このように、高齢者施設・住宅を大別すると、主に民間企業などが運営する「民間施設・住宅」と、地方自治体や社会福祉法人などが運営する「公的施設」に分けることができます。まずは「民間施設・住宅」と「公的施設」の大きな違いから見ていきます。

民間施設・住宅の特徴

民間企業などが事業主体となる民間施設は、入居一時金や家賃、食費などの費用は、各施設・住宅で別々に設定されています。

そのため、利用者のニーズに合わせて、「設備やサービスの質を重視したタイプ」や、「費用を抑えた施設」など、多種多様な選択肢があるのが特徴です。

その中でも、「特定施設入居者介護※」の認定を受けた施設は「介護付」と表示ができるようになり、介護保険サービスの提供をその施設の介護職員から受けられます。

※「特定施設入居者生活介護」とは、厚生労働省の定めた基準をクリアした施設で受けられる介護保険サービスを指します。この基準をクリアした施設が「特定施設」です。「特定施設入居者生活介護」と「特定施設」はサービスと施設の違いはあるものの、これらはセットのため、一般的にまとめて「特定施設」と表記されることが多いです。

【該当施設】
  • 有料老人ホーム
  • 高齢者向け住宅
  • グループホーム

公的施設の特徴

公的施設の運営主体は主に、国や地方自治体、社会福祉法人、医療法人などで、知事の認可をうけた民間企業も含まれます。

中でも、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、介護療養型医療施設があります。

これらは介護保険で賄われているため「介護保険3施設(現在介護医療院へ移行期間中のため、4タイプに)」と呼ばれます 。

社会福祉という目的が前提となるため、入居は申し込みの順番ではなく、比較的介護度が重い人や、介護できる家族がいない人が優先されます。

民間施設に比べ比較的料金が安いことから、入居希望者が多く、待機期間も長い傾向にあります。

その他には、介護の必要はないが経済的理由で自立した生活ができない高齢者向けに、養護老人ホームがあります。

こちらは社会復帰が前提のため、原則長期利用はできません。

【該当施設】
  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • ケアハウス(介護型)
  • 養護老人ホーム

各老人ホームの特徴

ここでは老人ホームの特徴を見ていきます。各施設の目安となる特徴を一覧表にまとめています。同じタイプでも、細かい条件は異なる場合もありますので、詳細を知りたいときは各施設、もしくはケアマネジャーなどの専門家に確認しましょう。

各老人ホームの特徴

〇=受け入れ可能/提供有 ✖=受入/提供不可 △=施設による/個別外部契約で利用可、またオプション利用可

「民間施設」6種類の特徴

介護保険制度の開始から、民間企業が運営する老人ホームも多くつくられてきました。ここでは、6種類の民間施設について解説します。
※掲載費用はあくまで目安となりますので、詳細はご希望の施設にお問い合わせください。

介護付有料老人ホーム

「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた介護サービスを受けられる民間施設です。介護スタッフが24時間配置されています。設備やサービス、介護体制など、さまざまな特徴のある施設があるため、選択肢が多いのが特徴です。

利用対象者

入居は原則として、65歳~(もしくは60歳~)の高齢者で要介護1~5の人が対象です。施設によっては自立や要支援の方も受け入れています。
要介護認定を受けていて、介護が必要な人におすすめの施設です。

費用

入居一時金が必要になる施設があり、0~数億円まで施設により幅があります。 月額費用(居住費や食事など)は、施設によって幅があり、10~100万円程度が目安となります。その他、要介護度や所得に応じた自己負担割合分の介護サービス費用がかかります。
なお、介護サービス費用は、要介護別に決まった金額があります。さらに、所得に応じて自己負担割合が1割・2割・3割となっています。これはすべての高齢者施設において、また居宅サービスにおいても同様です。

住宅型有料老人ホーム

生活支援などのサービスが付いた高齢者が暮らしやすいように整備された老人ホームです。介護が必要になった場合には、担当のケアマネジャーと相談し外部の介護サービスを利用することになります。施設における介護サービスの提供はありませんが、施設内に訪問介護事業所やデイサービスが併設されている住宅型有料老人ホームもあります。その介護サービス事業者と契約することで、介護付有料老人ホームと同程度の介護サービスを受けられるところもあります。

住宅型有料老人ホームでは、介護付有料老人ホームと異なり、介護保険で福祉用具のレンタルやお気に入りのデイサービスに通うこともできます。要介護度がそれほど高くない人は、介護保険サービスをうまく組み合わせて利用することで、自分に合った快適な介護生活を送ることも可能です。

ただし重度になり、十分な介護サービスを受けようとすると介護費用が高額になったり、そこでの生活が難しくなり、住み替えが必要になるケースもあります。

アトリエやキッチンスタジオ、シアタールームなどの設備や、レクリエーションなどのサービスに強みをもつ施設も多くあります。

利用対象者

自立または要支援の高齢者が主な対象者ですが、軽度の要介護の人も受け入れている施設もあります。 対象の要介護度は「自立~要介護5」ですが、前述のように、要介護度が重くなると、住み替えが必要になる場合もあります。自立もしくは、手厚いサポートは必要ないという人という人におすすめです。

費用

介護付有料老人ホームと同様、0~数億円の入居一時金が必要になる場合があります。月額費用(居住費や食事など)は12~40万円程度が目安となります。加えて外部の介護サービスを利用する場合は、要介護度や所得に応じた自己負担割合分の介護サービス費用がかかります。

健康型有料老人ホーム

自立した生活が可能な人だけが入居できます。自立が前提となるため、提供サービスとしては、希望者には建物内レストランや食堂での食事の提供、掃除、見守りサービスなどが提供されています。また、介護が必要になるなどの変化があった場合は退去となります。全国的にも数が少ない施設です。

利用対象者

健康で活動的な高齢者が対象です。要支援・要介護の人は入居ができません。

費用

入居一時金が不要、もしくは低廉な施設と一部に数千万円必要という施設もあります。管理費とオプションで3食の食事代を含めた場合で月額12万円~40万円が目安となります。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

バリアフリー仕様の賃貸住宅で、基本的にフロントにスタッフが配置されていますが、24時間体制なのかは施設によって異なります。バリアフリー仕様、居住スペースの床面積、手すりの設定まで細かく規定されています。「一般型」と一部に「特定施設の認定を受けたタイプ」がありますが、どちらのタイプも安否確認と生活相談サービスはついています。 その他の食事、掃除、健康の維持管理、また介護などのサービスは別途契約をして利用します。

利用対象者

60歳以上の自立した生活が可能な人が中心ですが、サ高住により要支援や要介護の人も入居できるところが多くなっています。外出制限なども基本的にないので、安心感と自由な暮らしを両立させたい人におすすめです。 サービス付き高齢者向け住宅は賃貸住宅のため、入居時に2~3ヶ月分の敷金が必要なところが大半です。しかし敷金0~数千万円と高額なところまで、幅広くなっています。

費用

入所一時金は0~数千万円まで幅広いです。また月額費用(居住費や食事など)は施設によって差がありますが、10~25万円程度が目安となります。介護サービスを利用する場合は、介護度や収入に応じた介護サービス費用がかかります。

シニア向け分譲マンション

高齢者の暮らしに配慮された分譲マンションです。バリアフリー設計なのはもちろんですが、レストラン、大浴場、フィットネスルームやシアタールームなど、設備が充実しているところもあります。また、レクリエーション、コンシェルジュサービス、緊急時の対応といったサービスを提供されているケースが多くなっています。分譲タイプのマンションのため、購入後は売却や譲渡、賃貸に出すなども自由です。

利用対象者

60歳以上の方を対象としているマンションが多いようですが、統一された条件はなく、50歳以上、55歳以上となっているシニア向け分譲マンションあります。不動産としての価値を保ち、快適にアクティブに生活過ごしたい人におすすめです。介護が必要になれば、外部の介護サービスを利用します。マンションの管理人などが介助を行うことはありません。所有権はありますが、要介護度が高くなると、住み続けていくのが難しくなります。

費用

間取りや立地など同じ条件の一般住宅と比べ、設備の充実などもあり物件価格は比較高額に設定されていることが多いです。1,000万~1億円以上です。購入後は修繕費や管理費、固定資産税などがかかります。なお、新築物件だけでなく、中古物件もあります。

グループホーム(認知症高齢者専用)

認知症の高齢者が、介護職員のサポートを受けながら生活するための施設です。日頃の生活は、5~9名ほどのグループ(ユニット)での共同生活が基本となり、各々できる範囲で役割分担をして生活します。ユニット単位での生活の理由は、認知症の人は環境の変化による精神的負担が大きいことから、顔なじみの人間関係の中での生活であれば、環境の変化は最小限に抑えられると考えられるためです。

利用対象者

グループホームの入居対象者は認知症と診断を受けた要支援2以上の人が対象です。また、施設と同じ地域の住民票があることが前提です。認知症の診断を受けていて、住み慣れた地域でアットホームに落ち着いて生活したい人向けの施設です。

費用

入居一時金は不必要な場合もありますが、多くは数十万程度です。月額費用は15~20万円程度が目安ですが、加えて要介護度や所得に応じた自己負担割合分の介護サービス費用が追加されます。

「公的施設」5種類の特徴

費用が比較的低額などのメリットのある公的施設ですが、各施設で特徴が異なります。それぞれの公的施設の特徴について見ていきます。

特別養護老人ホーム(介護保険施設)

特別養護老人ホームは介護保険上は「介護老人福祉施設」と言われますが、一般的には「特養」の名称で知られています。基本的に要介護度3以上の人が入居条件となっており、日常的に介護が必要な人向けの介護施設です。

特別な医療対応などが必要にならない限りは、基本的に終身で利用することが可能で、入居一時金は不要です。月額費用に関しても公的施設の場合は居住費・食費が助成を受け軽減されます。

特に特別養護老人ホームは費用が安く、終のすみかとなることから、人気が高く、待機期間は数年という施設も多くなっています。

利用対象者

特別養護老人ホームの入居対象者は原則、要介護3以上の介護認定を受けた人です。要介護1、2の場合は特別な状態にあれば入居が可能です。特別な状態とは、例えば家族による虐待や、周囲の生活に支障が生じるほどの認知症を患っているケースなどが挙げられます。このような形での入居を、「特例入所」といいます。
また、要介護3~5であっても、医療依存度が高く、介護よりも医療を優先的に行わなければならないケースでは、入居できない場合もあります。

費用

食費や居住費などの月額費用は月額およそ6~15万円が目安です。それに加えて要介護度と所得に応じた自己負担割合分の介護サービス費用がかかります。

介護老人保健施設(介護保険施設)

介護老人保健施設は、病院からの退院が決まっても、リハビリや看護・介護が必要な高齢者が自宅に戻るまでの数ヶ月間、医療ケアと日常生活介護を受けるための介護施設です。「自宅と病院の中間施設」とされています。「老健」の略称で呼ばれています。

利用対象者

要介護1~5の人が対象です。介護老人保健施設は在宅復帰が目的で、入居期間は原則3ヶ月です。3ヶ月ごとに継続可否の判断がされていきます。特養との違いは、平日の日中は医師が常勤していて、医療も受けられる点です。

費用

医師が配置されている分、特養と比較して月額費用が高めに設定されています。居住費や食費などの月額費用は、およそ5~17万円が目安です。それに加えて要介護度や所得に応じた自己負担割合分の介護サービス費用がかかります。

介護医療院(介護保険施設)

長期間の療養が必要で、介護だけではなく医療ケアも必要な人のための施設です。病院や診療所に併設されているケースが多く、通常の高齢者施設では対応が難しい医療ケアや、緊急時の対応が可能で、状況に応じてターミナルケアも行われています。この介護医療院の制度は、介護療養型医療施設 の廃止に伴い、2018年4月からスタートしました。

利用対象者

要介護1~5の方が対象で、介護とともに医療を重要とする人が利用できます。また、介護医療院は「介護医療院Ⅰ(手厚いケアは必要な人向け)」と「介護医療院Ⅱ(容態が安定している人向け)」の2種類があります。医療的なサポートが必要な方向けの施設といえます。

費用

特養や老健と同程度で、食費や居住費などの月額費用は月額およそ5~17万円が目安です。それに加えて要介護度や所得に応じた自己負担割合分の介護サービス費用がかかります。

軽費老人ホーム・ケアハウス(公的施設)

軽費老人ホームには、A型、B型、ケアハウス(C型)のタイプがあります。食事付きのA型、自炊型のB型、食事・生活支援サービスのついたC型(ケアハウス)があります。その名の通り、利用費用が比較的安いのが特徴です。A型とB型については、今後新設はされずに、C型(ケアハウス)に一本化されていきます。また、ケアハウスについては、自立型(一般型)と、介護サービスのある介護型(特定)の2種類あります。
なお、都市部の一部の地域では、居室の狭い「都市型軽費老人ホーム」もあります。その自治体の居住者だけが利用でき、数も少ないのが現状です。

利用対象者

家庭環境および住宅事情の理由により、自宅で生活することが困難な60歳以上の人が対象です。介護サービスのある介護型ケアハウスについては、原則65歳以上で、要介護1以上の認定を受けている人が対象です。A型・B型については所得の制限もあります。諸事情で一人暮らしに不安がある人は検討できる施設です。

費用

ケアハウスの場合、初期費用(0~1,000万円程度)と、居住費や食費などの月額費用がおよそ7~20万円必要です。それに加えて要介護度や所得に応じた自己負担割合分の介護サービス費用がかかります。

養護老人ホーム(公的施設)

養護老人ホームは、経済的理由や、精神・身体・家庭環境上の理由で、自宅での生活が難しい高齢者の社会復帰を支援する福祉施設で、基本的に長期利用はできません。約半数は特定施設入居者生活介護の指定を受けていますが、自立支援が前提でもあり、介護サービスは受けられないところが大半です。

利用対象者

65歳以上で、諸事情を理由に自宅での生活が難しい人が対象です。
入居後に介護度が重くなった場合、退去が必要になる場合もあります。
入居の可否は、市区町村の審査によって決定されます。

費用

前年度の収入によって費用が変わり、月0~14万円とされています。入居一時金は不要で、月額費用は居住費、食費が基本です。また、被災や生活保護を受けている人の場合は、費用の減額・免除となる場合もあります。
なお、今回は養護老人ホームに関するページは設けておりません。

まとめ

高齢者の住まい、施設にはたくさんの選択肢があります。入居したい施設と、実際に入居できる施設に違いがあると感じた人も少なくはないでしょう。

経済的な問題、心身状況、要介護状態度、認知症の状況などによって、ある程度入居できる施設が絞られることになります。

施設の検討において、自分で調べることは大切ですが、担当のケアマネジャーや行政窓口、施設担当者などの専門的な知識をもった人に相談することをおすすめします。

しっかりと検討し、納得のできる施設を探していきましょう。

監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー
岡本 典子
監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー

「高齢期の住まい」に着目し、東京や神奈川を中心に、介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、240ヶ所以上を訪問。現在、「終のすみか探し」コンサルタントとして、シニア期の住まい探し・住みかえ、執筆、講演と、幅広く活動している。

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