【介護のお金】有料老人ホームの費用相場まとめ|費用負担を抑える方法もわかりやすく解説

公開日:2023年01月31日
有料老人ホームの費用とは

有料老人ホームを検討するにあたり、気になるのはその「費用」ではないでしょうか。

「有料老人ホームの費用はどのくらい必要なの?」
「できるだけ費用は抑えたいけど何か方法はあるの?」

このように考えている方も多いのではないでしょうか。

有料老人ホームの費用はホームによって異なり、介護度や所得によって入居できるホームも変わります。

そこで本記事では、有料老人ホームの費用相場をわかりやすくまとめました。

記事の中では、支払いに不安がある方のために、費用負担を抑える方法もわかりやすく説明しています。ぜひ参考にしてください。

有料老人ホームの費用・相場

有料老人ホームは以下の3つに分けられます。

  • 介護付有料老人ホーム
  • 住居型有料老人ホーム
  • 健康型有料老人ホーム

さらに、介護付有料老人ホームには、入居時のお身体の状況によって3つのタイプ(介護型・混合型・自立型)に分けられます。

それぞれ費用相場は異なります。参考までに目安の費用を下記の表にまとめました。

施設の種類 介護付有料老人ホーム
(入居時自立型)詳細を見る
介護付有料老人ホーム
(介護専用型)詳細を見る
介護付有料老人ホーム
(混合型)詳細を見る
住宅型有料老人ホーム詳細を見る 健康型有料老人ホーム詳細を見る
入居時の費用 0円~数億円を超えるものまで幅広い
月額費用(目安) 15~30万円程度 15~30万円程度 15~30万円程度 15~30万円程度
(介護サービス費がかかる場合は別途)
15~30万円程度

入居時の費用相場はあくまでも目安のため、詳細は各ホームにお問い合わせが必要です。

また、おおよその費用を知りたい方は、介護事業所・生活関連情報検索(介護サービス情報公表システム)でシミュレーションできます。

費用は「入居金」と「月額利用料」に分けられる

有料老人ホームに入居するための必要な費用は、大きく分けて以下の2つに分けられます。

  • 入居金
  • 月額利用料

有料老人ホームの費用は、基本的に利用者本人が支払います。

ここからそれぞれ解説していきます。

入居金とは

多くの有料老人ホームでは、「入居金」「入居時費用」「入居一時金」などと呼ばれる、初期費用としてまとまった金額が必要です(※当サイトでは『入居金』で統一しています)。

入居金は有料老人ホーム特有の仕組みで、入居時に一定期間分の家賃やサービス費を前払いするものです。

入居金は高額なケースもあり、償却(しょうきゃく)期間を設けられているのが一般的です。

償却とは、支払った入居金を毎月の家賃などに一定額ずつあてることをいいます。

入居金はホームによって異なり、不要なところもあれば、数千万から数億かかるところもあります。

なお入居金が不要な場合は、その分月額利用料が高めに設定されている場合も多いので、事前に確認しておきましょう。

入居金には返還金制度がある

入居金には返還金制度があります。

想定入居期間を償却期間とし、償却期間内にホームから退去した場合は、払いすぎているお金が返還されるという仕組みです。

住んでいる期間が長くなるほど入居金は償却されるため、退去時に返還される金額は少なくなります。

なお、入居金が償却される仕組みには2つの方法があります。

  1. 初期償却
  2. 均等償却

初期償却とは、入居金が一定の割合で償却(減額)されることをいいます。

償却される割合はホームによって異なるため、ご入居を検討する段階で必ず確認していきましょう。

一方、均等償却とは、初期償却後の残高を入居期間に応じて償却することです。
償却期間はホームによって異なりますが、一般的には5〜15年程度です。

なお、償却期間が終わる前にホームを退去した場合は、未償却分の入居金を返還してもらえます。

クーリングオフも可能

有料老人ホームはクーリングオフが可能です。

クーリングオフ(短期特例解約)とは、契約の申し込み・締結したあとでも、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です。

多くの有料老人ホームでは、入居時に多額の費用を支払う「入居金」の料金体系を採用(もしくは選択できるように)しています。

そのため、ご入居者様を保護するための制度として、入居後90日以内に解約した場合はクーリングオフが適用されます。

とはいえ、入居時に支払った費用がすべて返ってくるわけではありません。

実際に有料老人ホームへ入居していた日数の家賃や食費などは支払う必要があります。

有料老人ホームはクーリングオフ制度が適用されるとはいえ、後悔しないよう契約前にしっかりと理解することが重要です。

また、契約する場合はおひとりで判断せずに、ご家族様やケアマネジャーと話し合うことがおすすめです。

月額利用料とは

月額利用料とは、毎月ホームに支払う費用を指します。

月額利用料の内訳は「家賃」「管理運営費(管理費)」です。

ホームや要介護度、支払い方法によって異なりますが、目安は月15万〜30万円(なかには100万円のホームも)ほど支払う必要があります。

月額利用料の内訳

家賃 利用する居室や共用部分の利用金額。建物の地価、グレード、各居室の面積などにより設定されている。
管理費 光熱費、水道代、設備費、メンテナンス費用、事務費用、人件費などが含まれる。
施設介護サービス費 介護付有料老人ホームで、お食事、入浴、排泄の介助などを行う分の費用を「施設介護サービス費」という。介護保険が適用されるため、ご入居者様は施設介護サービス費の1割(所得によっては2〜3割)を負担。
介護保険対象外のサービス費(自費サービス費) 教養娯楽費(レクリエーションや任意のサークル活動費用)、理美容などが対象。
追加サービス費(上乗せサービス費) 入浴や通院などの送迎が一定の回数を超えた場合に追加費用がかかることもある。
食費 1日3食30日分のお食事代。ホームごとに異なるが、約5〜8万円程度。欠食する場合は事前の申し出が必要。
日用品費 個人が使う歯ブラシ、歯磨き粉、石けん、ティッシュペーパーなどの消耗品。
医療費 訪問診療や訪問歯科、ケガや病気で受診した場合は医療費がかかる。

有料老人ホームの支払い方法は3種類

有料老人ホームの支払い方法は、大きく分けて3種類あります。

  1. 全額前払い方式
  2. 入居一時金方式(一部前払い・一部月払い方式)
  3. 月払い方式

それぞれ詳しく説明していきます。

支払い方法①:全額前払い方式

入居時に入居金を全額支払うことを「全額前払い方式」といいます。
入居時に全額を支払うことで、入居後は家賃の支払いが必要ありません。

前払い方式では、想定居住期間の家賃相当を入居金と定めます。

想定居住期間とは、これから入居し続ける平均的な期間として、有料老人ホームごとに定められている期間のことです。

平均的な期間とは、その住まいに入居し続けることが予想される期間をいいます。
年齢や性別、心身の状況などに応じて、ご入居者様の平均余命を参考に設定されます。

なお、入居期間が想定居住期間を超えた場合、追加の家賃などの支払いが発生することはありません。

支払い方法②:一部前払い方式

「一部前払い方式」では、想定居住期間の家賃相当の一部を入居時に前払いします。

払いきれなかった残りの金額を、入居中に毎月支払う方式です。

前払いする金額は、利用者が払える範囲内の金額となっているため、全額前払い方式と比較して入居時の負担が減ります。

資金に余裕があるならば、全額前払方式または一部前払方式を選ぶことで、毎月の支払いにも余裕ができます。

支払い方法③:月払い方式

「月払い方式」は入居時に前払いはせず、月額利用料として家賃を支払う方式です。

前払いの必要がないため、入居時は金銭的にも余裕を持って入居できますが、毎月の費用負担は大きくなります。

毎月の支払いが高額だと、ホームの利用を継続することが難しくなる状況に陥ってしまう可能性も。

一般的な賃貸住宅と同じ支払い方法でも、想定入居期間を超えて入居し続けると、前払い方式よりも割高になります。

退去することになった場合の返還金の額に違いが生じる場合もあるため、支払い方法は契約内容をよく理解して慎重に選びましょう。

費用の負担を抑えるための方法3つ

「毎月の費用がけっこう負担になりそう……」という方もいるかと思います。そこで、ここからは費用を抑えられる可能性のある3つの方法を解説していきます。

  1. 高額サービス費支給制度
  2. 介護保険施設の特別減額措置
  3. 高額医療・高額介護合算制度

順番に見ていきましょう。

①高額サービス費支給制度

「高額サービス費支給制度」とは、介護保険サービス費が月々の上限額を超えた場合、超過分が払い戻しになる制度です。

適応になる介護保険サービスは以下のとおりです。

  • 訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 通所介護
  • 通所リハビリテーション
  • 短期入所生活介護

なお、食費や居住費、日常生活費(理美容代・洗濯代など)は支給対象になりません。 負担上限額は所得によって異なるため、下記の表に限度額をまとめました。

区分 自己負担の上限額(月額)
※1 生活保護受給者等 15,000円(個人)
※2 住民税非課税で、年金収入+その他所得の合計80万円以下 24,600円(世帯)
15,000円(個人)
住民税非課税で、※1・2以外の人 24,600円(世帯)
住民税が課税されていて、課税所得額が380万円(年収約770万円)未満の人 44,400円(世帯)
住民税が課税されていて、課税所得額が380万円(年収約770万円)以上690万円(年収約1,160万円)未満の人 93,000円(世帯)
住民税が課税されていて、課税所得額が690万円(年収約1,160万円)以上の人 140,100円(世帯)

※2021年8月~適用(出典:厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」

②介護保険施設の特別減額措置

「介護保険施設の特別減額措置」とは、長期的な視点から介護施設に対する支払いが困難だと思われる場合、入居中の食費と居住費が減額される仕組みです。

特例減額措置は、介護保険施設に入所している方のみ対象となり、短期入所(ショートステイ)の利用には適用されません。

次の要件6つすべてを満たす方が対象です。

  • その属する世帯の構成員の数が2名以上であること
  • 介護保険施設に入所または入院し、利用者負担第4段階の食費・居住費の負担を行なうこと。(施設入所にあたり世帯分離をした場合に、利用者負担第3段階以下になる方はこの軽減制度の対象にはなりません。) また、ショートステイの利用にあたっては、この特例減額措置は適用になりません。
  • 世帯の年間収入から、施設の利用者負担(施設サービス費の1割又は2割負担額、食費・居住費の年間合計額)の見込額を除いた額が80万円以下となること。(施設入所に当たり世帯分離をした場合でも、世帯の年間収入は従前の世帯構成員の収入で計算します。)
  • 世帯の現金、預貯金等の額が450万円以下であること。(預貯金等とは、預貯金のほか、有価証券、債券等も含まれます。)
  • 世帯がその居住の用に供する家屋その他日常生活のために必要な資産以外に利用し得る資産を所有していないこと。
  • 介護保険料を滞納していないこと。

引用:江東区|負担限度額認定住民税課税層における特例減額措置について

③高額医療・高額介護合算制度

「高額医療・高額介護合算制度」とは、介護費と医療費それぞれにかかった自己負担金が上限を超えた場合に、超えてしまった費用を払い戻す制度です。

この制度は、介護費だけでなく医療費も多く支払っている方の負担を軽減するために作られています。

持病があり定期的に通院、治療をしている方においては、自己負担額を抑えるためにも知っておくと良いでしょう。

基準額や負担軽減の例は、高額介護合算療養費制(厚生労働省)が参考になります。

また、社会福祉法人等が提供するサービスを利用する際には「利用者負担限度額措置」を活用する方法もあります。

利用者負担限度額措置とは、社会福祉法人が運営するサービスを利用される際に、ご利用者の負担や食費・居住費について、その一部を軽減することをいいます。

参考:埼玉県|社会福祉法人等による低所得者に対する利用者負担額軽減制度

有料老人ホームの費用に関するよくある質問

  • 入居中に費用が払えなくなった場合は?
  • 有料老人ホームに入居させたいが金銭的に余裕がない場合は?

それぞれ説明していきます。

入居中に費用が払えなくなった場合は?

万が一、何かしらの理由で費用を滞納してもすぐに退去になるわけではありません。

多くの場合、1〜2ヶ月の猶予がありますが、期間についてはホームによって異なります。

事前に契約書や重要事項説明書に記載されている内容を確認しておきましょう。

なお、利用者が払えない状況になってしまった場合は、身元引受人(連帯保証人)に請求されます。

そのような事態にならないためにも、支払いに不安がある場合は早めにスタッフやケアマネジャーに相談しましょう。

ちなみに、支払いが困難な場合は、持ち家を売却して資金を捻出する「リバースモーゲージ」という制度もあります。

リバースモーゲージとは、自宅を担保にして金融機関から融資を受ける方法です。
近年注目をあびており、自宅がある方はリバースモゲージを利用して、費用を捻出するのもひとつの方法です。

しかし、利用条件や、不動産の評価額の下落などのリスクがありますので、しっかりと検討が必要です。

有料老人ホームに入居させたいが金銭的に余裕がない場合は?

ホームの入居を検討していても、金銭的に余裕がないと諦めてしまうこともあるかと思います。

そのような場合、まずはケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談してみましょう。

もしかすると、いま検討している有料老人ホーム以外にも選択肢があるかもしれません。

有料老人ホームの費用はそれぞれで異なるため、ほかのホームだと入居できる可能性もあります。

もしくは、そもそも有料老人ホーム以外の選択肢が出てくるかもしれません。

たとえば「特別養護老人ホーム(特養)」。特別養護老人ホームは、比較的費用の負担が少ない点が特徴です。

なお入居条件や注意事項は、「【表比較でわかる!】特別養護老人ホーム(特養)とは?特徴・費用・申し込み方法を解説」で解説していますので是非お役立てください。

さらに、ホームへ入居するのではなく、自宅で介護保険サービスを利用しながら暮らす方法もあります。

金銭的な不安がある場合などもケアマネジャーなどに相談してみるとよいでしょう。

まとめ

この記事では、有料老人ホームの費用相場について説明しました。

有料老人ホームの費用は、ホームによって異なります。

費用の支払いに不安がある場合は、負担を抑えるための減額制度や助成制度をうまく活用していきましょう。

もしくは、公的施設であるケアハウスや特別養護老人ホームなども検討してみると、費用を抑える余地があるかもしれません。

利用者が無理のない範囲で支払いが継続できるよう、自身の経済状況に合ったホームを選択していくことが大切です。



監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー
岡本 典子
監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー

「高齢期の住まい」に着目し、東京や神奈川を中心に、介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、240ヶ所以上を訪問。現在、「終のすみか探し」コンサルタントとして、シニア期の住まい探し・住みかえ、執筆、講演と、幅広く活動している。

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