【表比較でわかる!】小規模多機能型居宅介護とは?料金や対象者、利用方法を解説

公開日:2021年12月22日更新日:2023年09月26日
小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護とは、ひとつの事業所で「介護スタッフの訪問」「高齢者の施設通い」「高齢者の施設宿泊」3つのサービスを提供するという介護保険サービスです。状況に応じて、必要なときに必要な介護を受けられるのが小規模多機能型居宅介護の特徴です。

本記事では、小規模多機能型居宅介護の詳しい内容や料金、利用方法などについて見ていきます。

小規模多機能型居宅介護(小多機)とは?

小規模多機能型居宅介護は、介護が必要な高齢者に対して、「訪問介護(自宅に訪問したスタッフに介護を受ける)」「通い(高齢者自身が施設へ通って介護を受ける)」「泊まり(短期の施設宿泊)」3つのサービスを提供するものです。また、これらのサービスはひとつの事業所から一貫して受けられます。

さまざまな介護サービスを組み合わせることで、要介護度が上がっても「在宅で生活を続けられる」ようにすることが、小規模多機能型居宅介護の目的です。一事業所の登録定員は29人で、1日あたり通いは概ね18人以下、泊まりは概ね9人以下と決められています。なお、小規模多機能型居宅介護は、「小多機(しょうたき)」とも呼ばれます。

ショートステイサービスとの違い

短期間の宿泊に対応しているのは、ショートステイサービスと同様ですが、小多機の場合は利用の自由度が高いのが特徴です。

看護小規模多機能型居宅介護とは
小多機の「泊まり(短期の施設宿泊)」 ショートステイ(短期入所生活介護)
・必要なタイミングで比較的柔軟に利用可能 ・事前予約が必須
・通い慣れた場所に泊まれる
・急な泊まりにも対応しやすい。ただし1日あたりの定員は概ね9人以下
・予約が取りにくいこともある
・急な予定変更等には対応しづらい

デイサービスとの違い

日帰りで施設を利用する場合も、小多機は行く日・行かない日や受けるサービスを自由に決めやすいのがメリットです。

小多機の「通い(通所介護)」 デイサービス
・必要なときにだけ行ける
・必要なサービスだけを受けられる(入浴のみなど)
・柔軟な対応が可能。ただし1日あたりの定員は概ね18人以下
・規定のプログラムに沿ってサービスを受ける
・あらかじめ決めた日に通う

訪問介護(ホームヘルプ)との違い

訪問介護も、小多機の場合は全体のバランスのなかで調整ができる分、柔軟な対応が可能です。

小多機の「訪問(訪問介護)」 ホームヘルプ
・その人の状態に合わせた介護
・必要に応じて、数分程度の短時間の利用も可能
・夜間などでも緊急対応が可能
・規定のサービス枠に沿った介護
・決められた時間にスタッフが訪問する

看護小規模多機能型居宅介護との違い

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)とはサービスを提供するシステムがよく似ていますが、医療ケアを含む「看護」がサービスに含まれている点が大きな違いです。

  看護小規模多機能型居宅介護 小規模多機能型居宅介護
利用条件 要介護1~5
事業者と同一地域に居住
要支援1~2/要介護1~5
事業者と同一地域に居住
サービス 介護・看護 介護

小規模多機能型居宅介護の対象者

小規模多機能型居宅介護を受けられるのは、以下の条件を満たす人です。

  • 要支援1~2、または要介護1~5の認定を受けている
  • サービスを提供する事業所と同じ自治体に住民票がある

介護度が上がっても住み慣れた地域で生活できるようにするため、利用対象者は原則として事業所と同一自治体に住民票がある人と定められています。

小規模多機能型居宅介護で受けられるサービス内容

小規模多機能型居宅介護で受けられる4種類の介護サービスについて、それぞれどのような使い方ができるのか見ていきましょう。

ケアプラン作成

利用する人の健康状態や要介護度、家族の状況などを確認しながら、適したケアプランを作成してもらえます。

通い

利用する人の自宅から施設までの送迎、健康状態のチェック、入浴介助、食事介助、リハビリ、レクリエーションなどのサービスが受けられます。利用する人の都合に合わせて、短時間や一部のみサービスの利用も可能です。

泊まり

施設への短期入所です。1泊だけでなく、数日間の連続した宿泊も可能です。宿泊中は、通いで受けられる各種の介助や口腔ケア、服薬介助のサービスを受けられます。急な宿泊にも対応してもらえます。

訪問

食事や入浴、排泄、服薬介助といったさまざまな介護サービスを自宅で受けられます。通いや泊まりでよく知っている顔なじみのスタッフが来てくれるので安心です。短時間の利用も可能です。

小規模多機能型居宅介護のメリット・デメリット

柔軟な介護サービスが受けられる小規模多機能型居宅介護ですが、メリットばかりではありません。メリットとデメリットの両方を理解した上で利用を検討しましょう。

小規模多機能型居宅介護のメリット

まずは、小規模多機能型居宅介護のメリットについて見ていきます。

時間の制限なくサービスを利用できる

一般的な訪問介護やデイサービスでは、あらかじめ決められた時間やスケジュールに沿ってケアプランが作成されます。一方、小規模多機能型居宅介護では、それぞれの人の状況に合わせて利用が可能です。

そのため、夜間の介護を受けたい場合や、短時間だけ利用したい場合などでも、時間の制限なく、いつでも必要なときに必要な分だけ介護が受けられます。ただし、前述のように1日あたり通いは18人、泊まりは9人までという定員があります。

必要なサービスを定額で利用できる

小規模多機能型居宅介護の利用料は、1ヶ月当たりの定額制です。回数や時間に応じて金額が嵩むわけではないため、安心して介護サービスを受けられます。

なお、具体的な金額は要介護度や自己負担割合によって異なります。また、食事代などは別途必要です。

個別の利用者に寄り添ったサービスを受けられる

小規模多機能型居宅介護のサービスは、利用者や家族の状況に合わせて選択されます。通い、訪問、宿泊、3つのサービスをひとつの事業者が行うため、「デイサービスに行った後、そのまま宿泊させてもらう」「早朝に訪問介護を受けて、そのままデイサービスに行く」といった使い方も可能です。

小規模多機能型居宅介護のデメリット

小規模多機能型居宅介護には、デメリットもあります。

併用できるサービスに限りがある

小規模多機能型居宅介護のような介護保険サービスは、通常、複数種類を組み合わせて利用できます。しかし、小規模多機能型居宅介護を利用している場合、併用できないサービスがあります。

訪問介護、デイサービス、ショートステイといったサービスをすでに利用している場合、解約しなければなりません。小規模多機能型居宅介護にサービスを集約する必要があるからです。

ケアマネジャーが変わるなど新たな環境やスタッフに慣れるところから始めなければならないため、うまく切り替えが進まない可能性もあります。

1日に利用できる人数に制限がある

小規模多機能型居宅介護は1日あたり通いは概ね18人以下、泊まりは概ね9人以下と定員が決まっています。希望どおりに利用できない場合もあります。

利用回数によっては費用が高くなることも

月額定額制という点は、小規模多機能型居宅介護のメリットです。しかし、利用頻度があまり高くない人の場合は、かえって高くつくこともあるでしょう。

要介護度が低く、それほど多くのサービスを必要としていない人や、基本的に家族が終日介護できる場合などは、訪問介護を個別に依頼するのとどちらが良いか検討が必要です。

小規模多機能型居宅介護はこんな人にぴったり

小規模多機能型居宅介護は、受けられるサービスに特徴があるため、向き不向きがあります。自分や家族にとって適したサービスかどうかを検討しましょう。

向いている人

小規模多機能型居宅介護が向いているのは、以下のような人です。

  • 住み慣れた自宅でこれからも暮らし続けたい人
  • 同居の家族の仕事が忙しく、介護との両立のため、家族の都合に合わせて、必要な時間に必要 な介護サービスを受けたい人
  • 小規模な事業所で顔見知りのスタッフに介護を受けるほうが安心できる人
  • 夜間や早朝、急な泊まりなどにも対応してほしい人
  • 月々にかかる介護費用がはっきりしていないと費用面が不安な人

向いていない人

反対に、以下のような人は、小規模多機能型居宅介護にあまり向いていない可能性があります。

  • すでに訪問介護やデイサービスを利用していて、スタッフと信頼関係が築けている人
  • 同じ人と常に顔を合わせるよりも、施設やサービスごとにいろいろな人と関わりたい人
  • 必要なときだけ介護サービスを利用して、利用した分だけ支払いたい人
  • 近い将来、老人ホームへの入居や別居家族との同居を検討している人
  • 多彩なアクティビティを楽しみたい人

小規模多機能型居宅介護の利用方法

小規模多機能型居宅介護の利用方法を見ていきます。

1.担当ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談

まずは、担当のケアマネジャーに小規模多機能型居宅介護を利用したい旨を相談しましょう。担当のケアマネジャーがいない場合や、相談しにくい場合は、地域包括支援センターの窓口も対応可能です。

その上で、地域の小規模多機能型居宅介護の中から、適した事業所を紹介してもらいます。また、事業者のHPを探して、自ら希望の小規模多機能型居宅介護事業所に連絡することもできます。

なお、小規模多機能型居宅介護を利用するとなると、それまでお世話になった顔なじみのケアマネジャーから、小規模多機能型居宅介護の事業所のケアマネジャーに変更となる、併用できない介護サービスがある点は押さえておく必要があります。

2.目的の施設を見学

小規模多機能型居宅介護を受けたい施設が見つかったら、連絡を取り、現地へ見学に行ってみましょう。利用できるサービスについて具体的な説明を聞くとともに、現地の雰囲気やスタッフの様子、どのような利用者がいるのかなどを確認します。

なお、見学は、必ず行わなければいけないものではありません。とはいえ、利用しやすいかどうか、事前に雰囲気を確認しておくと安心です。特に小規模多機能型居宅介護の場合、ほぼその小多機にお世話になることから、より慎重な判断が必要といえます。

3.サービス事業者との契約

登録したい事業所が決まったら、面談を行います。利用するにあたっての疑問点や不明点がある場合は、この時点で解消しておきましょう。料金や、利用にあたって必要な持ち物、書類の説明もこのタイミングで受けられます。

4.ケアプラン作成

利用する小規模多機能型居宅介護の専属ケアマネジャーが、利用者の状態や家族の希望に合わせたケアプランを作成してくれます。 その後、初回の日程を決めて利用開始となります。

小規模多機能型居宅介護で生活に合わせた柔軟な介護を

小規模多機能型居宅介護は、利用者にとっても家族にとっても、気心の知れた、使い勝手のよい介護サービスです。状況に応じて柔軟なサービスを提供してもらえることから、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるでしょう。

小規模多機能型居宅介護を活用して、無理のない毎日をおくりましょう。

監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー
岡本 典子
監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー

「高齢期の住まい」に着目し、東京や神奈川を中心に、介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、240ヶ所以上を訪問。現在、「終のすみか探し」コンサルタントとして、シニア期の住まい探し・住みかえ、執筆、講演と、幅広く活動している。

page-top