【介護度を理解する!】要介護4とは?特徴や他の介護度との違いも解説
「家族が要介護4と認定されたけど、どのような状態なのかわからない」
「要介護4ではどのようなサービスが受けられるの?」
「要介護4と要介護3・5の違いは何?」
このような疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。
要介護4を簡単にまとめると以下のような状態です。
- 日常生活をひとりで送ることは困難
- 自力での移動、起き上がりもできない
- 認知機能の低下があり意思疎通が難しくなるケースも多い
本記事では、要介護4はどのような状態なのか、どのようなサービスを受けられるのか、などわかりやすく解説します。
要介護4について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
「要介護4」とは常時介護が必要な状態
厚生労働省による「要介護状態」の定義は以下のとおりです。
身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(要介護状態区分)のいずれかに該当するもの(要支援状態に該当するものを除く)
厚生労働省|要介護認定に係る法令
わかりやすく説明すると「人の手を借りずに自分だけで日常生活を送ることが難しい状態」ということです。
そのなかで「要介護4」とは、常時介護が必要な状態をいいます。
要介護4の認定基準
要介護度の判定は、厚生労働省が基準を定める「要介護認定基準時間(介護にかかる時間)」をベースに7段階で区分しています。
- 要支援1~2
- 要介護1~5
さらに「自立」を合わせ、合計8段階に分けられます。
要介護者を介護するために必要な時間は、下記の表に示してあるように要介護度別で定められています。
区分 | 要介護認定等基準時間 (介護をするために必要な時間) |
|
---|---|---|
要支援1 | 25分以上32分未満 | |
要支援2 | 32分以上50分未満 | |
要介護1 | 32分以上50分未満 | |
要介護2 | 50分以上70分未満 | |
要介護3 | 70分以上90分未満 | |
要介護4 | 90分以上110分未満 | |
要介護5 | 110分以上 |
上記に示しているように、要介護4では介護をするために必要な時間は「90分以上110分未満」とされています。
しかし、実際に必要な介護時間を正確に測定することは困難です。
そのため、要介護認定等基準時間を算出するために、要介護認定の「一次判定」を行います。一次判定は、市区町村の認定調査員による心身の状況調査(認定調査)と主治医の意見書をもとに、コンピュータで判定されます。
要介護4と認知症
要介護4では、身体機能の低下だけでなく認知機能にも大きな低下が見られる場合が多いです。
そのため、要介護認定基準時間(介護にかかる時間)以外にも、認知症の進行の程度も判断基準となっています。
認知症に関しては、「認知症高齢者の日常生活自立度」といった判断基準が設けられています。
認知症高齢者の日常生活自立度
ランク | 判定基準 | 見られる症状・行動の例 | |
---|---|---|---|
Ⅰ | 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立し ている。 | - | |
Ⅱ | 日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。 | - | |
Ⅱa | 家庭外で上記Ⅱの状態が見られる。 | たびたび道に迷うとか、買い物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等 | |
Ⅱb | 家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。 | 服薬管理ができない、電話の対応や訪問者との対応などひとりで留守番ができない等 | |
Ⅲ | 日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする。 | - | |
Ⅲa | 日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 | 着替え、食事、排便・排尿が上手にできない・時間がかかる、やたらに物 を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声・奇声を上げる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等 | |
Ⅲb | 夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 | ランクⅢaに同じ | |
Ⅳ | 日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。 | ランクⅢに同じ | |
Ⅴ | 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。 | せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等 |
認知症といっても一概にはいえず、症状は個人によって大きく異なります。
物忘れや以前できていたことができなくなるだけでなく、ひとりでは日常生活動作もできなくなるケースもあります。
要介護4が他の要介護度とはどのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。
要介護4と他の介護度との違い
要介護4と要介護3の違い
要介護4と要介護3の違いは、以下の表を参考にしてください。
要介護度 | 要介護認定の目安 | 状態の目安となる具体例 | |
---|---|---|---|
要介護3 |
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|
|
要介護4 |
|
|
要介護4では、要介護3よりさらにADL(日常生活動作)の低下が見られるケースが多く、介護をするための時間が必要です。
認知機能の低下が見られ、意思疎通が難しくなることも多くなってきます。
要介護3でも全般的なサポートが必要ですが、要介護4は昼夜を問わず常に介助が必要な状態です。
要介護3については、下記の記事にて詳しくまとめていますので参考にしてください。
要介護4と要介護5の違い
要介護4と要介護5の違いは、以下の表を参考にしてください。
要介護度 | 要介護認定の目安 | 状態の目安となる具体例 | |
---|---|---|---|
要介護4 |
|
|
|
要介護5 |
|
|
要介護5とは、要介護度区分のなかでも最も介護を必要とする状態です。
要介護4・5のどちらも、自力で起き上がったり移動したりできないため、ほとんど寝たきりのこともあります。
要介護4だとわずかに自分でできることがあるのに対し、要介護5は難しい状態です。
また、要介護5は意思疎通もできないケースが多いです。
要介護4の認定を受けても在宅介護は可能か?
要介護4の場合、介護者の負担がかなり増えるため、自宅での介護の継続が難しくなるケースも少なくありません。
日常生活全般の動作に介助が必要になるため、家族間での協力体制が必要不可欠です。
夜間帯の介護方法なども課題となりますが、在宅介護を本人・家族ともに望む場合は、ケアマネジャーと相談し安心・安全に暮らせるようケアプランを考えていくことが必要です。
ケアマネジャーとの上手な付き合い方を下記の記事でまとめていますので、ぜひご活用ください。
要介護4で利用できるサービス
要介護4で利用できるサービスを表にまとめました。
自宅で介護サービスを受ける (訪問型) |
訪問介護 |
---|---|
訪問看護 | |
訪問入浴 | |
訪問リハビリテーション | |
居宅療養管理指導 | |
夜間対応型訪問介護 | |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | |
施設に通ってサービスを受ける(通所型) | 通所介護(デイサービス) |
通所リハビリテーション(デイケア) | |
地域密着型通所介護 | |
療養通所介護 | |
認知症対応型通所介護 | |
訪問・通い・宿泊サービスを組み合わせて利用する | 看護小規模多機能型小規模看護(複合型サービス) |
小規模多機能型居宅介護 | |
短期入所型 | 短期入所生活介護 (ショートステイ) |
短期入所療養介護 (医療型ショートステイ) |
|
福祉用具 | 福祉用具の貸与費の支給 |
福祉用具の購入費の支給 | |
住環境を整備する | 住宅改修費の支給 |
地域密着型 | 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) |
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 | |
地域密着型特定施設入所者生活介護 | |
その他 | 特定施設入居者生活介護 |
要介護4では、上記すべて介護保険サービスの対象です。
サービス内容はそれぞれ異なるため、ケアマネジャーや家族とともにケアプランを作成し、利用するサービスを選択します。
代表的なサービスの内容に関しては、「【介護の基礎知識】介護保険サービスの種類一覧と料金表|3つの代表的サービスを徹底解説」 をお役立てください。
要介護4の区分支給額
居宅介護サービスや地域密着型サービスにおいて、要介護度別に区分支給限度基準額が設定されています。
その範囲内でサービスを選択し、要介護4の場合は月額309,380円となっています。
支給限度額内でサービスを利用する場合は、費用の1割(一定以上所得者の場合は2割、または3割)を負担し、超過した分のサービス費用は全額自己負担です。
「要介護4で支給限度額内におさめたい場合、サービスの利用頻度はどれくらいかな……」とお悩みの人は、以下のウェブサイトで介護サービスの概算が計算できます。費用の目安としてご活用ください。
要介護4で利用可能な助成制度
介護保険サービス以外にも、介護者の負担を軽減できるようなさまざまな制度があります。
介護費・医療費の負担を抑える制度
高額医療・高額介護合算療養費制度 |
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高額介護サービス費制度 |
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医療費控除 |
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遠距離介護で使いたい交通機関の割引制度 |
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詳しくは、下記の記事にまとめていますので参考にしてください。
また、自治体によってそれぞれサービスを提供しているところもあり、鹿児島市の場合は「理容・美容サービス」「寝具洗濯サービス」があります。
ご自身の住まいでどのようなサービスがあるのか、地域の市町村窓口や地域支援センターで確認できますので、一度確認してみるとよいでしょう。
要介護4で受けられる介護プラン・費用の例
要介護4で受けられるケアプラン・費用の例を、家族と同居の場合と高齢者向け施設に入居する場合に分けて見ていきましょう。
要介護3で家族と同居している場合
サービス内容 | 利用回数 | 費用額 |
---|---|---|
訪問介護(ホームヘルプサービス) | 8回 | 25,360円 |
訪問看護 | 8回 | 43,680円 |
訪問入浴 | 4回 | 57,120円 |
訪問リハビリテーション | 4回 | 13,480円 |
認知症対応型通所介護 | 4回 | 54,960円 |
短期入所生活介護 | 8日間 | 82,160円 |
福祉用具貸与 | -回 | 20,100円 |
1ヶ月の介護サービス費用試算額 | 296,860円 | |
自己負担額 | 29,686円 (1割負担の場合) |
※参照: 厚生労働省|介護サービス概算料金の試算
上記の費用はあくまでも目安です。ケアプランを作成する際はどのようなサービスが必要なのか、担当のケアマネジャーとしっかりと話し合って決めましょう。
要介護4で施設に入居する場合
要介護4で特別養護老人ホームに入居する場合、サービスを利用すると自己負担は以下のようになります。
特別養護老人ホームでサービスを受ける場合の月額利用料の一例
サービス内容 | 費用額 | |
---|---|---|
施設サービス費 | 29,517円(1割負担の場合) | |
食費 | 約4万円 | |
居住費 | 約1.1~6万円 | |
自己負担額 | 約6~15万円(1割負担の場合) |
※参照:厚生労働省「令和元年度改定における食費・居住費の基準費用額の対応」
医療・介護・生活環境が充実した施設になると、月額数十万円というケースもよくあります。そのなかでも特別養護老人ホームは、入居条件があるものの、比較的費用負担が軽い点が特徴です。
要介護4でも入居できる施設・費用
ご自宅での介護に不安や心配を感じることもあるでしょう。
このような場合は、第二の自宅として施設で暮らすこともひとつの選択です。
要介護4で入居できる施設を以下にまとめています。
施設 | 概要 | 入居金 | 月額利用料 |
---|---|---|---|
介護付有料老人ホーム | 介護スタッフが24時間配置されている施設 | 0円~数億円を超えるものまで幅広い | 15~30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 生活支援などのサービスが付帯した施設 | 15~30万円 | |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 認知症の診断を受けた高齢者が共同生活する施設 | 0円~数百万円 | 15~20万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 高齢者が暮らしやすいサービスが付帯した住宅 |
|
|
特別養護老人ホーム | 常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者に対して、生活全般の介護を受けられる施設 | 0円 | 6万円~15万円 |
介護老人保健施設 | 高齢者が自宅に戻るためのリハビリや医療ケアなどを受けられる施設 | 0円 | 6万円~17万円 |
介護医療院 | 長期療養を必要とする方が、医療や介護のサポートが受けられる施設 | 0円 | 9万~17万円 |
介護型ケアハウス | 自宅での生活が困難で、生活支援が必要な60歳以上の高齢者が生活する施設 | 0円~数百万円 | 8万円~20万円 |
費用はあくまでも目安のため、詳細は各施設にお問い合わせが必要です。
介護サービス費は1割負担(所得に応じて2~3割負担の場合もあり)ですが、日用品費や医療費は含まれないため自己負担となっています。
なお、要介護3~5の場合、特別養護老人ホームへの入居が可能となります。
特別養護老人ホームは「特養」とも呼ばれており、介護を受けながら最期まで暮らせる施設です。
特別養護老人ホームへの詳しい概要や入居条件に関しては、【表比較でわかる!】特別養護老人ホーム(特養)とは?特徴・費用・申し込み方法を解説 をご参照ください。
要介護4に関するよくある質問
要介護4に関するよくある質問にお答えします。
- ショートステイは利用するべき?
- 要介護4の場合、どのような施設へ入居しているの?
- 要介護4で障害者控除は受けられる?
- 要介護4では生活介護を受けられる?
ひとつずつ見ていきましょう。
ショートステイは利用するべき?
ショートステイとは、自宅で暮らしている要介護者が短期間だけ施設に宿泊して介護を受けるサービスです。
一般的に「ショートステイ」と呼ばれています。
要介護4では、日常生活において常時介護が必要な状態です。
そのため、介護者は一日の多くの時間を介護に充てる必要があります。
ショートステイは、家族の体調が悪い時や、用事があって夜間の介護ができない場合などに役立ちます。
ショートステイは、最低1日から入居することが可能です。
無理のない範囲で利用してみると良いでしょう。
要介護4の場合、どのような施設へ入居しているの?
要介護4の場合、特別養護老人ホームに入居している方が多いです。
次に利用している方が多いのは、介護療養型医療施設や介護医療院となっています。
特別養護老人ホームは公的施設にて費用負担は抑えられますが、入居を希望する人が多く待期期間があるので注意が必要です。
2022年の厚生労働省の発表によると、全国の特養入居待機者数は約25.3万人となっています。
※参照:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」
要介護4で障害者控除は受けられる?
障害者控除は、要介護4の認定を受けただけでは控除対象にはなりません。
障害者控除は、配偶者もしくは扶養親族に障害者がいる場合に、所得控除を受けられる制度です。
認定基準は自治体によって違いますが、要介護4の人であれば申請さえすれば対象になるケースもあります。
まずはお住まいの市区町村役所のホームページでご確認ください。
また、介護にかかる負担を減らすためにも、費用負担を抑えられる制度も活用できるように準備しておきましょう。
詳しくは下記の記事をお役立てください。
要介護4では生活介護を受けられる?
要介護4でも生活介護を受けることはできます。
生活保護を受給している場合、介護保険の給付範囲内であれば、介護サービスの利用料も自費で払う必要はありません。
生活保護を受けていても、介護保険サービスの内容に影響はないですが、介護保険負担外の費用に関しては支払う必要があります。(※デイサービスの食事、散歩のための外出介助、紙おむつ代など)
また、生活保護を受けている場合、入居可能な施設は限られてしまいます。
特別養護老人ホームだと費用負担が抑えられ、かつ介護サービスも充実していますが、人気があるためすぐに入居できないおそれがあります。
生活保護を受けながら介護施設への入居を検討する場合は、早めにケアマネジャーに相談するようにしましょう。
まとめ
本記事では要介護4について詳しく見てきました。
サービスを受けるために何から始めたらいいかわからない方は、居宅介護支援事業所に相談してみましょう。
ケアマネジャーがご自身に合ったサービス内容をアドバイス・相談にのってくれます。
可能な限り自立した日常生活を送れるよう、有効的にサービスを活用していきましょう。
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格
博士(早稲田大学)、福祉デザイン研究所所長、武蔵野大学名誉教授。
1994年、つくば国際大学教授に就任後、武蔵野大学大学院教授を歴任。専門は社会保障、高齢者福祉、地域福祉、防災福祉。シニア社会学会・世田谷区社会福祉事業団理事。