【独居老人とは?】高齢者の一人暮らしの見守り・支援策を知っておこう

公開日:2021年12月18日更新日:2023年08月30日
独居老人

少子高齢化が進む中で、一人で暮らす高齢者世帯(独居老人)も増加の一途をたどっています。そんななか、家族や自分が高齢者となり、「独居老人」となる可能性もあります。「独居老人」はさまざまなリスクがあり、事前に対策をうっておくことが重要です。

このページでは、独居老人が抱える課題・リスクと対策のヒントをまとめました。現状と向き合い、今のうちからできる対策をしていきましょう

独居老人とは その定義

独居老人とは、言葉の通り、一人で暮らしている老人のことを言います。「老人」は年を取った人全般に対して使われる言葉ですが、独居老人と言った場合の老人は「高齢者(65歳以上の方)」を指すのが一般的です。

人数、世帯数は今後ますます増え、2040年には896万人に上る

高齢化が進む日本において、65歳以上の数も、65歳以上の一人暮らしの数も年々上昇しています。 内閣府の調査によると、2016年時点で65歳以上の人がいる世帯(一人暮らし世帯を含む)は、全世帯の48.4%と約半数に及んでいます。さらに、そのうち27.1%は一人暮らし世帯です。

1980年の高齢単身世帯は、男性4.3%、女性11.2%でした。これが、わずか35年後の2015年には男性13.3%、女性21.1%にまで上昇しています。

この傾向は今後も続き、2015年に625万人だった独居老人は、2040年には896万人に増加すると予測されています。これは、65歳以上が世帯主の家庭の40%を占める割合です。同様に、世帯主が75歳以上の後期高齢者世帯のデータを見ても、独居割合は年々増加していく見込みです。

なぜ、独居の割合は増えていくのか?

独居の割合が増加しているのは、それだけ「一人で生きていく」を選択した人が増えているからだと推察されます。 国立社会保障・人口問題研究所が、2015年の国勢調査を元に「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」を公開しました。

【参考】日本の世帯数の将来推計(全国推計) - 国立社会保障・人口問題研究所

65歳以上の未婚率は、2015年には男性5.9%、女性4.5%でした。しかし、2040年には男性14.9%、女性9.9%に上昇すると見られています。

結婚していない高齢者は独居になる可能性が高いことから、今後も独居老人は増加すると考えられます。

また、たとえ結婚したとしても、子どもが独立し、配偶者に先立たれれば独居となるでしょう。核家族化が進んだ昨今、結婚した子どもが親と住むのは当たり前ではなくなりました。こうした状況も、独居老人の増加に影響していると考えられます。

自立した暮らしを続けるメリットと不安材料

独居老人という言葉は、どことなく後ろ向きのイメージを感じさせるものです。しかし、高齢者が、一人で自立した暮らしを送ることは、デメリットばかりではありません。

実際に、内閣府の「平成26年度 一人暮らし高齢者に関する意識調査結果」によると、78.7%が「自分の生活に満足している」、76.3%の人が「今のまま一人暮らしでよい」と答えています。同居のストレスを感じず、気ままに暮らしていきたいと考える人や、子どもに迷惑をかけたくないと感じている人も多いと予想されます。

しかし、健康なうちは問題がなくても、介護が必要になったり、人の手がないとスムーズに生活を送れなくなったり、一人暮らしの継続が困難になる可能性などの不安材料もでてきます。

高齢者の一人暮らしにおいては、将来、思うように体が動かなくなった後や、看取りの問題についても考えておく必要があります。

病気や孤独死 独居老人が抱える問題点

前述したように、同じ一人暮らしの高齢者でも、日々を謳歌している人もいれば、問題を抱えている人もいます。一人でも快適に暮らし続けるために、起こる可能性が高い問題について理解し、対策を取ることが大切です。

社会的な孤立

家族がいれば、自然と日常の何気ない会話が生まれます。また、世帯同士のつながりも生まれやすいでしょう。ところが、単身世帯では話し相手がおらず、地域や社会とのつながりも薄れてしまいがちです。

以前であれば、出入りの業者や近隣の商店で話をする機会も作りやすかったものの、近年では、通信販売の普及により、人と触れ合わなくても問題のない暮らしを送りやすくなっています。これは利便性の意味ではプラスになりますが、高齢者の孤立という点では問題があるともいえるでしょう。

さらには、2020年から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の流行により、家族以外と行うサークル活動や知人との気軽な会話の機会も減っています。こういった事情も、高齢者の孤立に影響していると考えられます。

生きがいを感じられない、寂しい

一人で暮らしていると、「ありがとう」といったちょっとした感謝を伝えたり、伝えられたりする機会も少なくなります。

「子どもが生きがい」「孫が生きがい」といった言葉をよく耳にしますが、常に近しい人がいる環境にいない独居老人の場合、孤独感が増し、寂しさや生きづらさを感じることもあるでしょう。

生きていくための活力や楽しみを失い、日々の張り合いがなくなってしまう方もいます。

生活費などの負担増食事生活が偏るリスクが高まる

老後資金に関する問題は、将来の不安要素として大きく取り上げられます。特に独居老人は1人分の年金だけでやりくりをしなければならないケースも多く、生活の困窮が問題となっています。

生活保護受給者の割合推移※を見ても、65歳以上が2.86%と、65歳未満の1.24%よりもずっと高い割合です。推移は右肩上がりで、高齢者の生活費の問題は今後も続いていくと考えられます。

十分な生活費がないと、食事内容が偏ってしまうかもしれません。また、そもそも一人暮らしであることから、栄養バランスの整った食事作りを意識しなくなる可能性もあります。

衣食住が整った暮らしは、心身のバランスを整えるために必須です。食事の問題に加えて、一人暮らしで見た目を気にしなくなる、アパートなど賃貸住宅への入居が難しくなる、といった問題が起こるケースも少なくありません。

※参照:厚生労働省「2017年 年齢階級別生活保護受給者数、保護率の年次推移」

病気やけが、認知症などの発見の遅れ

独居老人が抱える大きな問題が、病気やけがに関する備えです。発見が遅れることで重篤化したり、入院が必要な際に保証人が見つからなかったりといった問題が起こりやすいのは、家族のいない独居老人です。

さらに、認知症の問題もあります。認知症は、本人が異変に気付きにくい特徴を持った病気です。独居老人は、家族が異変に気付いて病院へ連れて行くことができないため、治療までに時間がかかる可能性があります。また、認知症が進み、一人暮らしが困難になった際も、自分で手続きを取れません。このような事態にどのように対処していくのか、元気なうちに検討しておく必要があるでしょう。

孤独死が起きやすくなる

病気やけがの際に発見が遅れると、そのまま孤独死につながる可能性が高いと考えられます。

孤独死は、心情的な問題に加えて、死後の手続きの問題や、相続の問題にもつながります。生前、まったくかかわりを持っていなかった遠い親戚などが相続手続きを行う場合、財産や負債の把握から始める必要があり、手続きは非常に困難です。

行政による見守りサービス

独居老人が抱える各種の問題に対応するために、さまざまな支援やサービスが増えています。
行政による見守りサービスはそのひとつ、地域で心強い支援が行われています。

厚生労働省では、住まい・医療・介護・介護予防・生活支援を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の推進を行っています。地域包括ケアシステムとは住み慣れた地域で、最期までその方らしく暮らし続けられるように地域が主体となって高齢者を支援する体制のことを指します。

今回ご紹介している見守りサービスはそれぞれの地域が主体となって行われるもので、介護予防、生活支援サービスに該当します。

東京都 見守りネットワーク

東京都では、見守りネットワークという「区市町村」「地域包括支援センター」「地域住民」が連携し合って高齢者の見守りを行うシステム構築を進めています。

これに基づいて、都内の各行政区は独自の見守り体制を整えています。一例としては、立川市の「見守りホットライン」の設置、「地域見守りネットワーク事業」の推進、自治会による高齢者サロン運営、クラブ活動の推奨などです。官民と一般事業者が協力し合い、住み慣れた町での暮らしを継続することを目指しています。

東京都 大田区 支援が必要な人を見守り・支え合う 新たなネットワークモデル

大田区「おおた見守りネットワーク みま~も」は、地域住民、民間企業による「見守りささえあい(気づき)のネットワーク」と、医療・保健・福祉分野の専門職による「支援のネットワーク」の連携により、すべての人が安心して暮らし続けられるまちづくりを目指しています。

見守り支援やサービスでの対策

自治体が主体となる見守りサービスのほか、民間の見守りサービスも併用するとさらに安心です。
テレビやガス、家電製品の利用状況をメールで知らせてくれる家電センサー型、人による訪問安否確認型、電話コミュニケーション型など様々なサービスがあります。
主な対策方法に、アプリなどを使って離れて暮らす家族が安否を確認できるサービスや、緊急時に緊急連絡先に通報ができるとれる緊急通報システムなどがあります。

安否確認サービスや見守りサービス

家族が遠方にいて直接様子を見守ることが難しい場合に便利なのが、各社が提供している安否確認サービスや見守りサービスです。機能はさまざまですが、高齢者の自宅内にセンサーを設置して、一定期間動きがないと家族や介護事業者などに通知が届く仕組みのものが代表的です。家族はアプリ等を通じて離れたご家族の様子を確認できるものもあります。

高齢者が自分の意思で通報ボタンを押したり、電話をかけたりする必要がないため、「迷惑をかけたくない」と自分から通報することを遠慮してしまう方や、急に倒れて連絡がとれなくなるといった事態にも対応が可能です。

緊急通報システム

本人が異変や転倒などの緊急時にボタンを押すことで、設定しておいた連絡先に通報されるシステムです。24時間対応しているため、一人暮らしの方や健康に不安がある方は備えておくとよいでしょう。駆けつけサービスの有無は事業者により異なります。緊急通報のほか、日常の相談や呼び出しに使える機能を持つものもあります。

このサービスは、年齢や要介護度などの条件はありますが、自治体がサービスを提供している場合もあります。無料、もしくは月額数百円程度で利用できるケースが多いためお住まいの地域で確認してみましょう。

行政が提供するものも含め、上記のようなサービスや取り組みの多くは介護保険外サービスとなり自分で申し込みが必要です。まずは、今お住まいの地域の地域包括支援センターで相談し、利用できるサービスを調べてみてください。

介護(介護予防)サービスを上手に使う

一人暮らしで介護が必要になったとしても、ショートステイや介護施設、介護支援サービスをうまく活用することで、快適な暮らしを続けやすくなります。

見守ってもらうだけでなく、施設などを利用し、自ら社会に参加していく

独居老人の大きな問題に、社会とのつながりが挙げられます。自ら社会とつながりを持ち、関わり合おうとしなければ、人との縁は簡単に途切れてしまうでしょう。

生きるための活力を得るためにも、ちょっとした異変に気付いてもらうためにも、自ら社会に参加する姿勢を持ちましょう。 まずは、地域包括支援センターを訪れることから始めてみてはいかがでしょうか。地域の高齢者サロンなど通いの場の情報は地域包括支援センターで教えてもらうこともできるので、まずは自分に合いそうなコミュニティを見つけてみましょう。

無理せず、要介護認定を受け、介護支援サービスや介護予防サービスを使う

一人暮らしに不安を感じたら、地域包括支援センターを訪ね積極的に相談しましょう。「基本チェックリスト」に回答することで、自分の生活機能をチェックし、生活上の改善点を知り、その改善に向けたサービスを利用することができます。介護予防や介護が必要な場合は、要介護認定をすすめられます。

要支援や要介護の認定を受けると、要介護1から5の方は介護サービスを、要支援1〜2の方は介護予防サービスを介護保険で利用できます。また、自宅に手すりを付けるといったリフォーム時の補助金も受けられます。

要介護認定結果が自立や要支援の場合でも利用できる「介護予防・日常生活支援総合事業」も増えてきています。

要介護認定を受けた方が良いかもしれないと感じたら、役所や地域包括支援センターで相談してみてください。元気なうちに、手続きの流れなどの説明を聞いておくのもおすすめです。

地域で見守るやさしい社会に

一人暮らしの高齢者が増加していく昨今、地域全体で高齢者を支えていく仕組みづくりの重要性が増しています。高齢者が安心して暮らせる環境を作ることは、将来高齢者になる働き盛り世代や、若者世代にとっても大切です。

同時に、支えられる高齢者側も、「迷惑をかけている」と支援を拒むのではなく、積極的に適切なサービスの利用を心掛けましょう。こうした姿勢が健康寿命を延ばし、地域の一員として暮らし続けられる未来を作ります。

併せて、将来に向けた準備も大切です。元気なうちに、将来使えるサービスを確認したり、老人ホームの見学に行ってみたりと、先々の暮らし方についての選択肢を知り、自分の希望や行動を考えておきましょう。
また、日頃から地域や友人知人とのコミュニケーションを心がけ、趣味や社会活動に参加することも将来への備えとなるでしょう。




監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)
川上 由里子
監修者:川上 由里子(かわかみ ゆりこ)
ケアコンサルタント(看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー・福祉住環境コーディネーター2級)

大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、大手不動産株式会社「ケアデザイン」の立ち上げに参画。支える人を支えるコンサルティングを開発実施。著書に[介護生活これで安心](小学館)「働きながら介護する〜ケアも仕事も暮らしもバランスとって〜」(技術評論社)。

自身も働きながら父親の遠距離介護を体験。介護、看護、医療サービスを利用しながら在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。現在は介護関連のコンサルティングの他、講演、執筆活動を行っている。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。

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