【介護の悩み】親の施設入居を検討するタイミングは?入居を拒否するときの対処法5つも解説
自分が歳を重ねてくると「親が高齢になってきたけど、ホームへの入居も視野にいれた方がいいのかな?」このようにお考えの方も多いのではないでしょうか。
さらに、ホームへの入居を検討する時にも
「どのタイミングで入居を検討した方がいいの?」
「親は自宅で暮らし続けたいと望んでおり、家族のあいだで考えが異なる」
という疑問や悩みが出てくる方もいるのではないでしょうか?
そこで本記事では以下の内容を中心にお伝えします。
- ホームへの入居を検討するタイミングの目安
- 親が入居を望んでいない場合の対処法
- ホームの入居費用
ご本人・家族の両者にとって最善の選択をするためには、ホームへ入居を検討するタイミングを事前に知っておくことは重要です。
その理由も含め、本記事では親の入居に関わる内容を詳しく解説していきます。
親の施設入居を検討するタイミングの目安は「在宅での生活に限界を感じた時」
親のホーム入居を検討するタイミングは非常に悩むかと思います。
- 介護者の身体的、精神的な疲労が限界にきた時
- 介護できる人がそばにいないため、不安や危険を感じる時(転倒や誤飲など)
- 在宅での生活が厳しいと感じた時
タイミングはそれぞれ個人差がありますが、在宅での生活に限界を感じた時が大きなきっかけとなります。
しかし、住み慣れた自宅で長く暮らしたいと考える方が現状多いです。
過去の調査では「介護を受けたい場所」として「自宅で介護してほしい」と答えた方の割合は男性が42.2%、女性が30.2%で最も多い回答となりました。(※参照:高齢者の健康に関する意識調査(平成24年))
とはいえ、年齢を重ねるにつれて、親の介護度も上がってくることもあります。
また、親だけでなく介護する方も年齢を重ねることで体力は落ちていき、徐々に介護負担は大きくなることが多いです。
なお、在宅で生活に限界を感じた時に、いざ行動を始めてもタイミングを逃してしまうこともあります。
なぜなら現在は高齢化により、利用者が増加しており、希望するホームへはすぐに入居できないケースもあるからです。
余裕のある時期から、親を含めて家族みんなでこれからの暮らし方について話し合っておきましょう。
施設入居までの流れ・5つの手順
ホームへ入居するまでの一連の流れについて説明していきます。
- 1.本人・家族で話し合い
- 2.施設の情報を集める
- 3.入居したい施設を選ぶ
- 4.施設見学・体験入居
- 5.契約をして入居する
順番に見ていきましょう。
【手順①】本人・家族で話し合い
ホームへ入居を検討する時は、まずご本人を含めた家族全員での話し合いが必要です。
「できる限り親の希望に添った介護をしたい」と思っていても、ご本人に具体的なことは尋ねにくいものです。
何かあった場合の延命治療についてや、葬儀・お墓の希望があるかなど、「まずは考え方を聞いてみる」という向き合い方から始めてはいかがでしょうか。
他にも、世間話の延長で今後の暮らし方について聞いてみるのもひとつの方法です。
気軽に会話をしているうちに、ご本人の本音がポロッと出てきて、希望する介護環境の形が見えてくることもあります。
話し合いの時に確認しておきたい点を下記にまとめました。
- もし介護を受けるとしたらどのような環境が良いか
- 誰に介護してもらいたいか(家族・専門のスタッフなど)
- 介護に関するお金の使いみちの希望(在宅サービスを利用・自宅を改築・施設へ住み替えなど)
ご本人の希望を尊重するためにも、介護について家族で話し合っておくことが大切です。
また、ご本人の経済状況や、費用が払えなくなった場合のサポートはどうするのかなど、気兼ねなく話し合える関係を築いておきましょう。
ホームへの入居は、すぐに結論を出す必要はありません。
何度もご本人と家族で話し合いながら、お互いにとって最善の選択肢を見つけていきましょう。
こちらの記事では、いまからできる介護への備えについてまとめています。
介護準備のヒントとして、ぜひお役立てください。
【手順②】施設の情報を集める
ご本人含め家族で話し合ったあとは、入居するホームの希望条件をまとめながら情報を集めていきます。
希望条件をまとめる時のポイントを下記にあげました。
費用 | ・予算内で選ぶ ・入居金が不要のホームから選ぶ |
|
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立地 | ・ご自宅に近いホームを選ぶ ・家族の居住先に近いホームを選ぶ ・交通の便がよいホームを選ぶ |
|
設備 | ・個室か相部屋かで選ぶ ・共用施設以外の設備が充実しているかで選ぶ |
|
サービス内容 | ・生活の自由度が高いホームから選ぶ ・介護サービスの有無から選ぶ |
|
費用 | ・介護職員や看護職員が24時間体制のホームから選ぶ |
ホーム選びの判断材料とするためにも、情報はできるだけ多く集めましょう。
高齢者の住まいには、多くの選択肢があります。
入居できるホームや住宅にはそれぞれどのような特徴があるのかなど、下記の記事でまとめています。
また、下記を利用するとより情報を集めやすくなります。
- 最寄りの地域包括支援センター
- ケアマネジャー
- 老人ホーム紹介センター
- インターネット
ケアマネジャーがまだ決まっていないという方は、「ケアマネジャー(介護支援専門員)の職業解説」の記事にて、探し方について詳しく解説しています。
【手順③】入居したい施設を選ぶ
情報を集めたら、希望条件に合うホームを選びます。
しかし、希望条件がすべてそろったホームはなかなか見つからないこともあります。
そのため、希望条件に優先順位を付けておくことをおすすめします。
あらかじめ優先順位を付けておくことで、数あるホームから何を優先すべきなのかわかります。
たとえば「自宅からの距離」が優先度が高い場合、自宅から近いホームを選択肢の1番目にする、などです。
また、ピックアップするホームはひとつに限らず、複数を比較しながら検討していくことをおすすめします。
【手順④】施設見学・体験入居
入居したいホームを選んだあとは、ホームの見学予約を入れます。
ウェブサイトやパンフレットから受けたイメージと、実際のホームの状況は異なるケースもあります。
必ず見学は行い、スタッフや他の利用者の雰囲気も確認しておくことが大切です。
また、急ぎではない入居の場合は体験入居もおすすめです。
ホームの環境やお食事など実際に過ごしてみて、ご本人にとって快適かどうか体感してみましょう。
しかし、体験入居に関してはすべてのホームで実施しているわけではないため、各ホームに確認が必要です。
なお、見学の時に入居前の面談・入居審査についても聞けると今後の準備がスムーズできます。
ベネッセスタイルケアの公式サイトでは、希望の地域や予算に応じたホームをご案内しています。ぜひご活用ください。
ベネッセの老人ホームを探してみる【手順⑤】契約をして入居する
希望するホームが決まれば申し込みを行い、面談や入居審査を経て契約を結びます。
契約の時には、「重要事項説明書」を用いて契約内容の説明を受けます。
重要な情報が記載されている書類なので、隅々まで確認しましょう。
なお、ホームに入居する際は、入居金や月額利用料が必要なことがあります。
なかには入居金が不要なところもあるので、契約前に確認しておきましょう。
親(家族)が入居を拒否する時の対処法5つ
ご本人がホームへの入居を嫌がるケースも少なからずありえます。
そのような場の対応例として5つ紹介します。
- 本人の希望を聞く
- 本人含めて家族みんなで話し合う
- 施設の生活について理解を深める
- 話を聞き入れない場合は第三者にも介入してもらう
- 短期入所できる施設(ショートステイ)から始めてみる
ひとつずつ詳しく解説していきます。
【対処法①】本人の希望を聞く
最初に行うべきことは、ご本人の希望を確認しましょう。
住み慣れたご自宅から離れることは、誰しも不安を感じます。
ご本人がどのように暮らしていきたいのか、話をしっかり聞くことが重要です。
その際に、なぜホームへの入居を嫌がるのか理由を聞いてみましょう。
「まだまだ自分は元気だから自宅で大丈夫」
「住み慣れた自宅でずっと暮らしたい」
などの他にも、ホームへマイナスなイメージをもっている可能性もあります。
たとえば、
「ホームに入居すると自由に暮らせない」
「赤の他人に世話をされたくない」
などです。
解決できる糸口がないか、まずは話を聞いてご本人が感じている思いを聞き取りましょう。
【対処法②】本人含めて家族みんなで話し合う
ご本人含めて、家族の意見もそれぞれ聞きながら話し合うことが大切です。
その際は、家族の意見を無理に通そうとはせず、根気よくしっかりと話し合いましょう。
ご本人が頑なに自宅で過ごすことを希望しても、感情的にならないように注意してください。
ホームへの入居をすすめすぎると、ご本人は家族として疎外感を得てしまう可能性もあります。
「いつまでも元気に長生きしてほしいから、今よりも良い環境で過ごしてほしい」と伝えていきましょう。
【対処法③】施設の生活について理解を深める
ホームへの入居を拒否する場合、マイナスなイメージをもたれている可能性があります。
まずはホームの生活について理解を深めていきましょう。
具体的にどのような生活なのか、ホームのパンフレットやウェブサイトを見ていただくとイメージもわきやすいです。
また、ホームによっては季節による催し(夏祭りやお花見など)があり、ご自宅とは違った楽しさがあることを伝えていきましょう。
他にも、ご本人がホームに対してどのように思っているのか聞き取り、マイナスなイメージをひとつずつ払拭していくことが大切です。
【対処法④】話を聞き入れない場合は第三者にも介入してもらう
場合によっては、ご本人が新しい知識や情報を聞き入れてくれないこともあるかと思います。
家族だけで話し合っても、感情的になり意見がまとまらないケースもあります。
このような時は、第三者に介入してもらいましょう。
第三者というのは、ご本人の親戚や友人でも構いません。ケアマネジャーや地域包括支援センターの専門家に介入してもらうのもひとつの方法です。
第三者から話を聞くことで、ご本人も冷静に話を聞いてくれることもあります。
ご本人を無理に説得させるのではなく、第三者へ頼りながら話しをすすめていきましょう。
【対処法⑤】短期入所できる施設(ショートステイ)から始めてみる
ご本人がホームへの入居に踏み切れないケースもあるかと思います。
そのような場合は、短期入所できる施設(ショートステイ)で雰囲気に慣れてみるのもひとつの手段です。
短期入所することで、実際のホームの雰囲気もわかります。入所してみると「意外と居心地がよかった」と感じてくれる可能性もあります。
ホームへマイナスなイメージがある場合も、いきなり入所をすすめてもうまくいかない場合が多いです。
短期入所できるホームから少しずつ慣れていき、自宅とはまた違った環境での暮らしに「第二の自宅」のように安心感をもってもらうことが大切です。
なお、ベネッセの有料ショートステイ※は、2泊3日からご利用いただけます。
- 退院された後の生活が不安な方
- 介護をする方の介護疲れの一時的な休息にご利用されたい方
など、さまざまな用途でお気軽にご利用いただけます。 詳しくは下記のページをご参照ください。
※介護保険適用外の有料ショートステイです。
親がホームに入居する時に必要な費用
親がホームに入居する時に必要な費用について説明します。
ホームによって必要な費用は異なります。
そこで以下では、全国で最も多い「有料老人ホーム」を例にあげて見ていきましょう。
有料老人ホームでは、「入居金」と「月額利用料」を支払う必要があります。
より具体的な月額利用料の内訳は、以下のとおりです。
施設の種類 | 介護付有料老人ホーム (入居時自立型)詳細を見る |
介護付有料老人ホーム (介護専用型)詳細を見る |
介護付有料老人ホーム (混合型)詳細を見る |
住宅型有料老人ホーム詳細を見る | 健康型有料老人ホーム詳細を見る | |
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入居時の費用 | 0円~数億円を超えるものまで幅広い | |||||
月額費用(目安) | 15~30万円程度 | 15~30万円程度 | 15~30万円程度 | 15~30万円程度 (介護サービス費がかかる場合は別途) |
15~30万円程度 |
有料老人ホームでは、「入居金」と「月額利用料」を支払う必要があります。
月額利用料内訳の具体例としては、以下のとおりです。
家賃 | 利用する居室や共用部分の利用金額。建物の地価、グレード、各居室の面積などにより設定されている。 | |
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管理費 | 光熱費、水道代、設備費、メンテナンス費用、事務費用、人件費などが含まれる。 | |
施設介護サービス費 | 介護付有料老人ホームで、お食事、入浴、排泄の介助などを行う分の費用を「施設介護サービス費」という。介護保険が適用されるため、利用者は施設介護サービス費の1割(所得によっては2〜3割)を負担。 | |
介護保険対象外のサービス費(自費サービス費) | 教養娯楽費(レクリエーションや任意のサークル活動費用)、理美容などが対象。 | |
追加サービス費(上乗せサービス費) | 入浴や通院などの送迎が一定の回数を超えた場合に追加費用がかかることもある。 | |
食費 | 1日3食30日分のお食事代。ホームごとに異なるが、約5〜8万円程度。欠食する場合は事前の申し出が必要。 | |
日用品費 | 個人が使う歯ブラシ、歯磨き粉、石けん、ティッシュペーパーなどの消耗品。 | |
医療費 | 訪問診療や訪問歯科、ケガや病気で受診した場合は医療費がかかる。 |
しかし、なかには親をホームに入れたいけど経済状況が厳しい家庭もあるかと思います。
そのような場合は、費用が安い老人ホームを選んだり、費用の軽減制度を利用したりしてみましょう。
費用負担を抑える方法に関しては、下記の記事で詳しく説明しています。
施設入居に関するよくある質問
ホームの入居に関する、よくある質問をまとめました。
- 「親を施設に入れる」という罪悪感との向き合い方は?
- 親を施設に入居させて後悔しないか?
- 認知症がある場合はどのタイミングで入所を検討するべき?
順番に解説していきます。
老人ホームという選択に罪悪感を感じたら?
親が住み慣れた自宅から、ホームへ入居を選択することには葛藤があると思います。
家族として「親の介護を他人に任せていいのか」という思いや、「ホームへ入れて後悔しないか」などの不安が罪悪感につながりやすいです。
親のことを思い悩む人ほど、罪悪感を抱きやすいともいえます。
「親を施設(ホーム)に入れる」というと本人の意思を無視したようにも捉えられることもありますが、あくまで老人ホームという選択は、本人と家族のための選択であり、そのことで家族が罪悪感をおぼえる必要はありません。
ホームへ入居したあとも、家族だからこそできる関わりを継続していくことが大切です。
入居後も定期的にホームへ足を運び、家族の元気な姿を見せるとご本人もきっと喜ばれることでしょう。
また、ホームで開催されるイベントにも一緒に参加すると、よいコミュニケーションの場となり、良好な家族関係を継続するのにもよいでしょう。
親を施設に入居させて後悔しないか?
親がホームへ入所したからといって関わりが終わるわけではありません。
入居したあとも、家族とホームのスタッフが一緒になって、ご本人のケアをしていくことが大切です。
どうしても親をホームに入れたことへ後悔が募る場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターのスタッフに相談してみましょう。
相談して話を聞いてもらうだけでも、心がすっと軽くなるかもしれません。
また、入居後は定期的に面会に行き、在宅介護以外の形でも親の介護に携わることもできます。
認知症の親のホーム入居を検討するタイミングは「介護者が負担を感じ、在宅での介護を続けることが困難になった時」が目安です。
認知症の進行もさまざまなので、可能であれば認知症が発覚した時点で、地域包括支援センターなどに相談してみましょう。
そして、入所施設の情報収集も併せて始めていくことをおすすめします。
認知症でも入居できるホームは下記の4つです。
- 有料老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム
しかし、認知症の程度によっては入居できない可能性もあるため、各ホームへ確認が必要です。
入居するホームを選ぶ時には、ご本人が安心して長く生活を続けられるところに選びましょう。
まとめ
この記事では、親がホームへ入居を検討するタイミングについて説明しました。
ホームへ入居するタイミングを事前に知っておけば、ご本人・家族ともに最善の選択ができるようになります。
入居に関しては無理に説得するのではなく、ご本人の思いを尊重していきましょう。
なお、地域包括支援センターを利用すると、ホームの情報も得られます。
ご本人・家族だけで悩まずに、ぜひご活用してみてはいかがでしょうか。
入居に踏み切れない場合は、まずは短期入所施設から利用することもひとつの手段です。
ご自分らしく過ごすための「第二の自宅」のように、暮らしに合ったホームを選択していきましょう。
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格
博士(早稲田大学)、福祉デザイン研究所所長、武蔵野大学名誉教授。
1994年、つくば国際大学教授に就任後、武蔵野大学大学院教授を歴任。専門は社会保障、高齢者福祉、地域福祉、防災福祉。シニア社会学会・世田谷区社会福祉事業団理事。