【介護のヒント】老人ホームへの入居は何歳から可能?平均年齢や入居するタイミングも解説
老人ホームへの入居を考えた場合、何歳から入るべきか悩む人も多いのではないでしょうか。
本記事では、老人ホームは何歳から入居可能か、また入居のタイミングについて解説していきます。
老人ホームへの入居は、「ひとりで生活ができない」「子どもに迷惑をかけたくない」などさまざまな理由で探している人がほとんどです。
どのような老人ホームへ入居するかは、お身体が元気なうちから検討しておきましょう。
ご自身が納得のいく施設を選択するためには、早くから情報を集めておく必要があります。
家族とも将来の暮らし方について相談しておくことで、いざというときにも慌てずにすむでしょう。
第二の暮らしを安心して迎えられるよう、ぜひ検討のヒントとして参考にしてください。
老人ホームへの入居は何歳から可能?
老人ホームへの入居は、原則60~65歳以上となっています。
しかし、条件によっては60歳未満でも入居可能な場合もあります。
年齢だけでなく、要介護度認定の基準が設けられている場合もあるので確認が必要です。
要介護度認定の基準に関しては、下記の記事にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
原則は60~65歳以上が入居可能
先述したとおり、多くの老人ホームへの入居は原則60~65歳以上となっています。
下記では「60歳以上」と「65歳以上」から入居できる施設をそれぞれ挙げています。
60歳以上から入居できる施設
65歳以上から入居できる施設
基本的には65歳になると介護保険の第一号被保険者となるため、介護サービスを利用できるようになります。
そのため、介護を必要とする老人ホームは、原則65歳以上からの入居となっています。
65歳以上から入居できる老人ホームのなかでも、特別養護老人ホームは要介護3以上が入居条件です。
年齢のほかにも、要介護度や施設によって入居条件が定められているので、入居の際は確認が必要です。
60歳未満でも入居は可能
40歳以上の人で特定疾病に該当し、かつ要介護認定を受けている場合は、60歳未満でも老人ホームへの入居は可能です。
特定疾病とは、下記のように定められています。
「1) 65歳以上の高齢者に多く発生しているが、40歳以上65歳未満の年齢層においても発生が認められる等、罹患率や有病率(類似の指標を含む。)等について加齢との関係が認められる疾病であって、その医学的概念を明確に定義できるもの。 2) 3~6ヶ月以上継続して要介護状態又は要支援状態となる割合が高いと考えられる疾病。」
特定疾病の選定基準の考え方|厚生労働省
発症進行すると要介護状態となる可能性が高いため、厚生労働省が16種類の特定疾病を定めています。
対象となる16種類の特定疾病は以下のとおりです。
- 1.癌(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
- 2.関節リウマチ
- 3.筋萎縮性側索硬化症
- 4.後縦靱帯骨化症
- 5.骨折を伴う骨粗しょう症
- 6.初老期における認知症
- 7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※【パーキンソン病関連疾患】
- 8.脊髄小脳変性症
- 9.脊柱管狭窄症
- 10.早老症
- 11.多系統萎縮症※
- 12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 13.脳血管疾患
- 14.閉塞性動脈硬化症
- 15.慢性閉塞性肺疾患
- 16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
※印は平成18年4月に追加、見直しがなされたもの
※参照:厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」
40歳以上65歳未満で特定疾病が原因となって介護が必要な状態となった場合、要介護認定を受けて介護保険サービスを利用できます。
介護保険の詳細に関しては、下記の記事をぜひ参考にしてください。
老人ホームへ入るタイミングはいつがいいの?
老人ホームへ入居するタイミングは、個人で異なります。
老人ホームでの生活を考えるにあたって、どのようなタイミングで入居するか悩むことも多いでしょう。
介護者が親の施設入居を検討するタイミングの目安は、在宅での生活に限界を感じた時です。
しかし、限界を感じた時にいざ行動を始めても、タイミングを逃してしまうこともあります。
現在は高齢化により老人ホームの利用者も増加しています。
希望する老人ホームへすぐに入居できないケースもあるため、余裕のある時期から家族と共にこれからの暮らし方を話し合っておきましょう。
老人ホームへの入居平均年齢
施設によって老人ホームへの入居平均年齢は異なり、2020年東京都の調査によると以下のような結果が見られています。
老人ホーム入居平均年齢
有料老人ホーム | 特別養護老人ホーム | ||
---|---|---|---|
男性 | 85.5歳 | 82.7歳 | |
女性 | 87.8歳 | 87.9歳 |
※参照:福祉保健局高齢社会対策部 令和2年6月「東京の高齢者と介護保険データ集」
そのなかでも、特別養護老人ホームは75歳以上が9割を占めています。
表を見てわかるように、老人ホーム入居平均年齢は80歳代です。
利用者のなかには「子どもには面倒をかけたくない」という思いから、元気なうちに老人ホームへ入居している場合もあります。
入居のタイミングを逃さないためにも、老人ホームは早めに探しておくのがおすすめです。
なかには、老人ホームへの入居に消極的な人もいらっしゃるかと思います。
「親は自宅で暮らし続けたいと望んでいるけれど、家族の間で考えが異なる」など、老人ホームへの考え方が違う場合は、下記の記事をぜひお役立てください。
老人ホームの退去時期
老人ホームは、退去時期が決まっているわけではありません。
施設によっては看取りまで行うところもあり、「終の棲家」として入居している人もいます。
しかし、なかには老人ホームを退去しなければならないケースもあります。
- 要介護度が重くなった場合
- 他の利用者へ迷惑行為がある場合
- 費用が払えなくなった場合
介護者が在中していない施設だと、要介護度が重くなったり、医療処置が必要になったりすると、退去を求められることがあります。
また、認知症の進行により介護者やほかの利用者に対して迷惑行為を行うと、退去を求められる場合があります。
契約の際の重要事項説明書は入居する前にしっかり確認しておきましょう。
老人ホームへ入るには費用がいくら必要?
老人ホームへの入居には、費用がどのくらい必要か把握しておく必要があります。
各施設の費用相場を、以下の表にまとめました。
あくまで目安のため、詳細は各施設にお問い合わせする必要があります。
分類 | 施設タイプ | 入居金 | 月額利用料 |
---|---|---|---|
民間施設 | 介護付有料老人ホーム | 0円~数億円を超えるものまで幅広い | 15~30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 15~30万円 (介護サービス費がかかる場合は別途) |
||
健康型有料老人ホーム | 15~30万円 | ||
グループホーム | 0円~数百万 | 15~20万円 | |
サービス付き高齢者向け住宅 | 【敷金】 ・一般型:数万円~数百万円 ・介護型:数万円~一部に数千万円 |
・一般型:5~25万円 ・介護型:15~40万円 |
|
シニア向け分譲マンション | 【物件購入費】 1,000万円~1億円 |
10~30万円 | |
公的施設 | 特別養護老人ホーム | 不要 | 6~15万円 |
介護老人保健施設 | 不要 | 6~17万円 | |
介護医療院 | 不要 | 9~17万円 | |
養護老人ホーム | 不要 | 0円~(収入によって異なる) |
施設は「民間施設」と「公的施設」に分けられます。
民間施設は、民間によって運営されているためサービス内容が充実し、料金設定も多彩です。
公的施設は国や地方公共団体、社会福祉法人などが運営しています。
そのため、初期費用が民間施設より少なく、比較的安価に利用できる場合が多いです。
老人ホームの入居を検討する時に考える5つのポイント
老人ホームの入居を検討する時には、自分に合った暮らしが送れるよう以下の5つのポイントを押さえておきましょう。
- 自分の今後の希望を家族に共有する
- 老人ホームでどのような生活を送りたいか考える
- 経済状況を踏まえて予算を決める
- 老人ホームの情報は早めに探しておく
- 見学・体験入居を行う
老人ホームは「第二の自宅」として、人生において非常に重要な場所でもあります。
本人・家族共に最善の選択ができるようにしましょう。
自分の今後の希望を家族に共有する
老人ホームへ入居を検討している場合は、まずは家族へ将来どのように暮らしていきたいのか希望を伝えましょう。
家族も「できる限り親の希望に添った介護をしたい」と思っていても、本人に具体的なことは尋ねにくいものです。
たとえば、病気や事故、認知症などでご自身にて判断ができなくなった場合、家族が判断して老人ホームを探すことになります。
お身体が元気なうちに、今後の暮らし方について家族間で共有しておくと良いでしょう。
老人ホームへの入居は、すぐに結論を出す必要はありません。
ご自身の希望は正直に家族へ伝え、話し合いながらお互いにとって最善の選択肢を見つけていきましょう。
老人ホームでどのような生活を送りたいか考える
老人ホームに入居してどのような生活を送りたいのか考えておく必要があります。
たとえば、同世代の人と交流しながら楽しく過ごしたい場合は、レクレーションや利用者同士の交流が盛んなところがおすすめです。
静かにゆっくりと自分のペースで過ごしたいならば、少人数の施設のほうが良いでしょう。
家族とも定期的に会ったり、外泊したりするならば、家族の家から近い施設を探すと行き来しやすいです。
まずはご自身が、どのような生活を送りたいのかをイメージしてみましょう。
老人ホームによって雰囲気は異なり、特徴もそれぞれ違います。
イメージがわかない場合はケアマネジャーに相談したり、実際に施設を見学したりすると良いでしょう。
経済状況を踏まえて予算を決める
老人ホームは施設によって費用・入居条件が異なります。
経済状況を確認したうえで、老人ホームでの暮らしにどのくらいの費用が必要か確認しましょう。
施設によっては月額利用料だけでなく、入居金が必要なところも少なくありません。
老人ホームへ入居した後も、入院や冠婚葬祭などでお金が必要なケースもあります。
予算はあらかじめ多めに考えておくと良いでしょう。
なお、国民年金は原則として65歳以上から受け取れますが、まだ受給していない場合は下記のウェブサイトよりどのくらい貰えるのかシミュレーションができます。
老人ホームの情報は早めに探しておく
老人ホームの情報は介護が必要になってからではなく、早めに探しておくと良いでしょう。
介護が必要になった段階で慌てて探すと、施設の比較検討がじっくりとできない可能性もあります。
また、人気の老人ホームだと待機期間があるため、すぐには入居できないケースもあります。
「まだ自分にはもう少し先の話かな」と思う人も、老人ホームの情報だけは早めに集めておくと良いでしょう。
なお、老人ホームを探す方法は複数あります。
- 地域包括支援センター
- 老人ホーム紹介センター
- ケアマネジャー
- ウェブサイト
- 周囲の介護経験者や家族に相談
おひとりで探そうとはせず、周囲に相談しながら最適な老人ホームを見つけていきましょう。
見学・体験入居を行う
入居希望の老人ホームが見つかったら、まずは見学してみるのがおすすめです。
老人ホームの雰囲気や、スタッフ・すでに入居されている人の様子は自分の目で確認しておくと良いでしょう。
実際にご自身で足を運び老人ホームを確認することで、「ここで暮らしたら充実した生活が送れそうだ」「ここは自分に合いそうにない」など判断がしやすくなります。
また、老人ホームはひとつに限らず、複数の施設を見学することで比較検討ができます。
老人ホームの情報を探す際は、いくつかピックアップしておくと良いでしょう。
なかには見学だけでなく体験入居できる施設もあるため、ご希望の際は各施設にお問い合わせしてください。
老人ホームに関するよくある質問
老人ホームに関するよくある質問にお答えします。
- 老人ホームへ入居するきっかけは?
- 働きながら入れる老人ホームはある?
- 自分に合った老人ホームの見つけ方は?
ひとつずつ見ていきます。
老人ホームへ入居するきっかけは?
老人ホームへの入居のきっかけはさまざまですが、特に多いきっかけを下記にまとめました。
- 家族に迷惑をかけたくない
- 在宅介護で介護者が限界を感じた
- 家族は仕事にて、介護の時間が十分に取れない
- 専門的な介護を受けたい
- 要介護度が上がり、介護負担が増えた
- 認知症が進行し、在宅介護の継続は難しい
- 退院後の在宅介護が困難
ベネッセでは、実際に老人ホームをご利用した人に、介護の始まりから老人ホームへの入居体験談を掲載しています。
紹介している体験談は個々の事例です。提供できるサービスやケアの内容はそれぞれ異なりますが、ぜひご一読ください。
働きながら入れる老人ホームはある?
老人ホームのなかには、働きながら入居できる老人ホームもあります。
働きながら入居できる施設の一例を、以下の表にまとめました。
施設タイプ | 入居条件 | |
---|---|---|
サービス付き高齢者向け住宅 |
|
|
住宅型有料老人ホーム |
|
|
健康型有料老人ホーム |
|
|
シニア向け分譲マンション |
|
各施設によって入居条件は異なります。あくまで目安のため、入居しながら働くことは可能か各施設にお問い合わせする必要があります。
介護付有料老人ホームでも働きながら入居も可能な場合もあります。
ただ、自立の生活をサポートする費用などがかかり、トータルの費用が割高になる場合もありますので注意が必要です。
自分に合った老人ホームの見つけ方は?
自分にあった老人ホームを見つけることが最善ですが、イメージが漠然としていると難しい場合もあるでしょう。
ベネッセでは、老人ホーム選びに10のポイントを挙げています。
- 1.地域
- 2.費用
- 3.入居条件
- 4.ケア体制
- 5.運営法人
- 6.スタッフの質
- 7.他の利用者
- 8.設備と住空間
- 9.食事
- 10.家族との関わり
それぞれの詳しい内容は下記の記事にまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
入居される人や家族が大切にしたいことの、優先順位を整理してみましょう。
老人ホームは種類も多く、費用面・提供するサービスなどさまざまです。
まずはそれぞれの特徴をつかんだうえで、候補を絞っていくことをおすすめします。
まとめ
老人ホームへの入居は、原則60~65歳以上が可能です。
老人ホームでの生活を考えるにあたって、どのようなタイミングに入居するか悩むことも多いでしょう。
老人ホームへ入居するタイミングは、個人で異なります。
在宅で生活を送ることに限界を感じて入居する老人ホーム探しを始めても、タイミングを逃してしまうことがあります。
「まだ自分には早いかな」と思っている人も、ぜひ余裕のある時期から老人ホームを探しておくと安心できるでしょう。
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格
博士(早稲田大学)、福祉デザイン研究所所長、武蔵野大学名誉教授。
1994年、つくば国際大学教授に就任後、武蔵野大学大学院教授を歴任。専門は社会保障、高齢者福祉、地域福祉、防災福祉。シニア社会学会・世田谷区社会福祉事業団理事。