【一人っ子の介護】親の介護をするときの5つの不安と解消法|おすすめの介護サービスも紹介

公開日:2023年02月28日更新日:2023年09月26日
親の介護を一人っ子がするときの5つの不安と解消法

一人っ子が親の介護に直面するときには、「ひとりで大丈夫だろうか」と不安になる人も多いのではないでしょうか?

心身の不安はもちろん、経済的な不安も出てくるでしょう。

本記事では、一人っ子が親の介護を考える際の不安やその解消法、そして実際に親の介護するうえで知っておきたいポイントを紹介します。

一人っ子で親の介護が不安という人はもちろん、自身で親の介護をする必要がある人にも役立つ内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

一人っ子が親の介護をする際の5つの不安

一人っ子の人が、親の介護を考える際のよくある不安として、主に以下の5つが挙げられます。

  • 体力的な負担
  • 精神的な消耗
  • 経済的な苦しみ
  • 終わりの見えない介護
  • 頑張りすぎによる虐待の可能性

この不安を解消・軽減するための第一歩は、漠然とした不安の内容を具体化して、理解することです。

ここからそれぞれの不安の内容を見ていきます。

自分の状況と照らし合わせながら、イメージしてみてください。

体力的な負担

親が「加齢による身体の衰え」や「認知症」などで、自分だけでは、日常生活を送ることが難しくなり、在宅介護することになった場合、介護者(介護をする人)への体力的な負担が大きくなります。

買い物や掃除など家事の負担だけでなく、食事や入浴、排泄といった身体的な介助も必要になるからです。

介護期間が長引くにつれ、通常は親の身体機能は低下していき、在宅介護の負担が年々増えていきます。

さらに、働きながら家事と親の介護をするとなると、精神的にも余裕がなくなり、より疲れを感じやすくなることでしょう。

だからこそ、無理をせず自分の健康にも配慮しながら介護を続けていくことが大切です。

精神的な消耗

介護は精神的負担が多くなりがちです。

仕事や家事、介護のプレッシャーがかかる日々の中では、精神的な消耗も激しくなり、日々の不安も感じやすくなるでしょう。

一人っ子の人は、以下のような状況になる可能性が高い傾向があるとされており、注意が必要です。

  • 親族に頼れる人がおらず、介護の悩みを相談できず孤独さを感じる
  • 「親の介護はすべて自分がやらなければ」というプレッシャーから、ストレスを感じる

どちらもすべて自分で抱え込んでしまう場合に陥りやすい状況です。

親族がいない人でも、自治体・社会福祉協議会等の相談窓口や医療機関でも介護の相談にのってくれるところはたくさんあります。

自分で介護の悩みを抱え込むのではなく、周囲のサポートを得て、まずは自分の精神面を安定させることも必要です。

また、まだ介護が必要な状態ではないという人は、いざそうなったときにどのような対応をするのか(してほしいのか)を、親と事前に話し合っておくと、精神的な余裕を生むことにもつながります。

経済的な苦しみ

当然ですが、介護にはお金がかかります。

介護に充てられる貯蓄が潤沢にあるのであればよいのですが、そうでない場合、一人っ子であれば、兄弟姉妹で費用の分担はできないので基本的には自分で負担することになります。

日々の食事やオムツのなどの消耗品の費用はもちろん、住宅をバリアフリー化したり、介護用具を購入したり、特に介護し始める際には一時的に大きな費用が必要です。

住宅をバリアフリー化するような場合には数百万円の出費が発生するかもしれません。

介護保険適用のものであれば介護にかかった費用の一部は一部負担額が抑えられますが、1割~3割を負担する必要があります。(負担額は所得によって変わります。)

詳しくは、以下の記事で介護保険サービスの自己負担額の考え方にまとめていますので、参考にしてください。

また、介護付有料老人ホームへ入居するとなると、施設や要介護度、支払い方法によって異なりますが、目安は月12万~40万円ほどかかります。

ただ、各種支援制度などを活用することで、介護費用を抑えられるかもしれません。

たとえば、「高額介護サービス費制度」「高額介護合算療養費制度」などの制度を活用すれば、自己負担額の一部が払い戻される可能性があります。

その他、自治体で介護関連の助成金などの支援制度を用意している自治体もあります。

費用面で悩む際には、各種制度の利用も検討してみましょう。

終わりの見えない介護

介護期間の長さは、親本人の状況次第ではあるので、予測のできないものですが、医療技術の進歩に伴う長寿化により、当然介護期間も長くなる傾向にあります。

もちろん親には長生きしてほしいという気持ちはあるものの、終わりの見えない介護期間はというのは、精神的に大きな負担となるでしょう。

生命保険文化センターの令和3年度の「生命保険に関する全国実態調査」※では、介護を行った期間は平均61.1ヵ月(約5年1ヶ月)という結果でした。

そのなかで、4年を超えて介護した人は約5割いるという調査結果が出ています。

介護は長期的になることを事前に頭に入れておき、早い段階から対応内容を検討しておけると、余計な不安を減らすことにつながります。

※参考:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2021(令和3)年度)

頑張りすぎによる虐待の可能性

介護を頑張りすぎると、体力的にも精神的にも追い込まれやすくなり、過度な精神的ストレスを感じてしまう可能性もあります。

最悪のケースになると、親への苛立ちが膨れていき、暴言暴力などの虐待に発展することが考えられます。

介護だけが理由ではありませんが、実際に全国では高齢者に対する虐待がおきてしまっています。

令和2年度から3年度の厚生労働省の調査では、養護者(家族や親族、同居人)による高齢者への虐待件数は以下のとおりでした。

  虐待判断件数 相談・通報件数
令和3年度 16,426件 36,378件
令和2年度 17,281件 35,774件
増減率 -855件 +604件

※参考:厚生労働省:「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査」(令和3年度)

虐待の判断件数は減っているものの、相談・通報件数は増えており、いまだに高い件数を推移しています。

頑張ることも大切ですが、ストレス軽減のためには、時には肩の力を抜いて介護にあたることも大切です。

一人っ子が親の介護をする際に意識したいポイント

一人っ子が親の介護をする際、意識すべきポイントは、以下のとおりです。

  • ひとりで頑張らない
  • 正しい情報を取り入れる
  • 介護費用の軽減制度を利用する

ここまでお伝えしてきた介護に関する不安解消にも役立つ内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。

ひとりで頑張らない

在宅介護はひとりで頑張らず、誰かに頼ることが大切です。

一人っ子の在宅介護は、外部とのつながりも少なくなり、自分ひとりで抱え込んでしまい、精神的に追い込まれやすい傾向にあります。

そのため親の介護が必要になる前に、お住まいの地域で介護相談できる窓口を確認しておきましょう。

自分だけでは視野が狭くなりがちなので、客観的なアドバイスをもらうようにしましょう。

介護が必要になった後では、余裕がなくなり動きにくくなるため、事前に相談しておくことで、本格的に介護が必要になるときに動き出しやすくなります。

家族の介護を前に、どのような準備をすべきかについては下記記事で解説しています。

ぜひこちらも参考にして早めの備えをしておきましょう。

正しい情報を取り入れる

親の介護において、自分の負担を軽減するためには、介護に関する正しい知識が必要です。

たとえば「認知症」や、「介護者と被介護者に負担の少ない介助方法」などを知っておくだけでも心身の負担軽減につながります。

その他、介護保険や介護保険サービスに関する情報もあらかじめ調べておくことで、実際に利用する際に、相談や申請などの手続きをスムーズに進めることができます。

はじめての介護に役立つ情報を以下でまとめていますので、ご活用ください。

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介護費用の軽減制度を利用する

介護における費用の負担を軽減するためにも、基本的な制度はしっかり理解しておきましょう。

介護費用を軽減する制度には、主に以下のようなものがあります。

高額医療・高額介護合算療養費制度 介護保険と医療保険の両方を利用する世帯の経済的負担が大きくなり過ぎないようにするための軽減制度
高額介護サービス費制度 1ヶ月間の介護保険サービスの自己負担額が上限額を超えた場合、超えた分を申請により払い戻しを受けられる制度
介護における医療費控除 病院にかかった際の診察代や治療費、薬代が一定額を超えた際に利用できる控除制度(一部の介護保険サービスが含まれる)

それぞれ自己負担額を軽減する制度なので、あらかじめ条件など理解しておき、利用できるのであれば、積極的に活用していきましょう。

支援制度については下記のページでも解説していますので、こちらもご覧ください。

親の介護を一人っ子がする際に役立つ介護サービス

一人っ子が在宅介護をする際に役立つ介護サービスとして、ここでは以下の3つのサービスを紹介します。

  • 訪問介護(ホームヘルプ)
  • デイサービス
  • ショートステイ

介護サービスを選ぶ際の参考にしてみてください。

訪問介護(ホームヘルプ)

訪問介護とは介護を必要とする高齢者の自宅にホームヘルパーが訪問し、身体介護に加え、生活支援を提供するサービスです。

「訪問介護」は介護保険法上の呼び方で、「ホームヘルプ」ともいわれます。

具体的には、以下のようなサービスの提供を受けることができます。

  • 入浴や食事、排泄のお手伝いといった身体介護
  • 調理や掃除などの生活援助
  • 通院時の外出支援

訪問介護は自宅での生活を支援することで、高齢者や障害をもっている人、病気などの人々が、住み慣れた場所で自分らしい生活を送れるように支援することを目的としたサービスです。

在宅介護を希望するのであれば、検討したいサービスのひとつです。

デイサービス

介護保険サービスの「通所介護」の通称である「デイサービス」は、要介護認定1~5の人が利用できるサービスで、利用者は日帰りで施設に通い、入浴や排泄、食事などの介護サービスを受けたり、機能訓練、レクリエーションを楽しんだりすることができます。

デイサービスの利用目的は、以下のとおりです。

  • 自宅での自立した生活のための生活機能の維持や向上
  • 利用者の社会的孤立の解消や心身の安定
  • 家族(介護者)の身体的および精神的負担の軽減

なおデイサービスには、いくつか種類がありますが、代表的なものとして以下の2種類があげられます。

  • 一般的なデイサービス:食事や入浴・排泄などの日常的な介護サービスを提供する
  • リハビリ特化型デイサービス:リハビリの専門スタッフによる、リハビリサービスを提供する

それぞれに特徴がありますので、利用者の身体状況や目的に合わせて選択しましょう。

ショートステイ

ショートステイは、介護施設に短期間宿泊し、介護サービスや生活支援サービスを受けることができます。

冠婚葬祭の予定などで、在宅介護ができないときに一時的に利用できるサービスです。

「レスパイトケア(介護する家族のための休息)」としても活用できるので、一人っ子の介護でぜひ活用したいサービスのひとつです。

ショートステイには介護保険が適用されるものと、適用外のものがあり、種類として 主に3つです。

①【介護保険適用】短期入所療養介護

介護を必要とする人が、日常生活の支援サービスや各種機能訓練などを受けられます。

<主な提供場所:特別養護老人ホーム・一部の有料老人ホーム・専門施設など>

②【介護保険適用】短期入所療養介護

医療的なサポートを必要とする人が、日常生活の支援に加えて、医師や看護師による医療的なサポートや、リハビリのサポートを受けることができます。

<主な提供場所:介護療養型医療施設・介護老人保健施設など>

③【介護保険適用外】有料ショートステイ

利用者は日常生活の支援に加え、機能訓練や各種サービスを受けることができます。

介護保険適用のショートステイと違い、要介護認定を受けていなくても利用することができ、施設によってさまざまなサービスを受けることができます。

介護保険適用外となりますので、その分かかる費用は高額となるのが通常です。

入居を検討するホームのお試し利用として活用されることも多いです。

<主な提供場所:有料老人ホーム>

親の介護に困ったときの相談先

親の介護で困ったときはひとりで悩まずに、相談することが大切です。

ここでは相談先として以下の3つを見ていきます。

  • 民生委員
  • 地域包括支援センター
  • 自治体の介護相談窓口

それぞれお住まいの地域に必ず設置されているので、事前に確認しておきましょう。

民生委員

民生委員は、地域の福祉に関する情報収集や相談支援を行っています。

住民自らが自立して生活するための支援も行なっており、自宅で介護が必要になった人の相談にも応じてくれます。

地域にある介護サービスに関する情報を提供してくれるので、親の介護で困ったときは、お住まいの地域にある役所に問い合わせてみましょう。

なお正式名称は「民生委員・児童委員」※で、子どもから高齢者まで全世代を陰で支える存在です。

※参考:政府広報オンライン|ご存じですか?地域の身近な相談相手「民生委員・児童委員」

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、ケアマネジャーや社会福祉士、保健師などの専門職がチームを組み、高齢者の生活をサポートしている機関です。

福祉や健康、介護に関する相談に包括的に対応してくれ、直接センターに行かなくても、電話での相談も受け付けています。

地域包括支援センターの主な具体的業務は、以下の4つです。

  • 適切な介護予防の支援(要介護にならないようにサポートする)
  • 高齢者の権利擁護(虐待防止や成年後見人制度の紹介など)
  • 総合的な相談サポート(必要なサービスの紹介)
  • ケアマネジメント支援(ケアマネジメントの支援や関係機関との連携サポート)

たとえ具体的な相談内容が決まっておらず、「なんとなく親の介護に不安がある」という形でも相談に乗ってくれます。

介護の強い味方となってくれるでしょう。

自治体の介護相談窓口

お住まいの地域によっては、自治体特有の介護の相談窓口を設けているところもあります。

たとえば東京都の場合は「福ナビ 東京福祉ナビゲーション」で、介護に関する相談窓口を紹介しています。

東京都介護保険制度相談窓口では、介護保険に関する情報や、自宅で介護をする上での不安などを相談することが可能です。

さらに悩みに対する具体的なアドバイスや、必要な介護サービスと連絡の調整をしてくれるといった仲介役も担っています。

親の介護に関するよくある質問

親の介護に関するよくある質問は、以下のようなものがあります。

  • 親の介護をしないとどうなる?
  • 親の介護をしながら仕事はできる?
  • 遠方の親の介護はどうすればいい?

それではひとつずつ見ていきます。

親の介護をしないとどうなる?

原則、親子のような直系親族の場合は扶養義務があり、子どもは親を介護する義務があります。

なぜなら民法877条1項で「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められているからです。(参考:民法 | e-Gov法令検索:民法

直系血族とは、自分を中心として、父や母、祖父母、子どもや孫、ひ孫などです。

扶養義務があるにもかかわらず親の介護を放棄した場合は、以下のような罪にあたる可能性があります。

  罪名 罰則
親の介護を放棄した場合 保護責任者遺棄罪 3ヶ月以上5年以下の懲役
介護放棄が原因で親が怪我した場合 保護責任者遺棄致傷罪 3ヶ月以上15年以下の懲役
介護放棄が原因で親が死亡した場合 保護責任者遺棄致死罪 3年以上20年以下の懲役

ただし親から虐待を受けていた人や、経済的な理由から介護できない場合などは、地域包括支援センターといった行政機関に相談しましょう。

介護サービスの提案や連絡調整など、状況に応じて適切なフォローをしてくれます。

親の介護をしながら仕事はできる?

厚生労働省が行った「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査」によると、正規労働者の35.2%が介護をしていることがわかりました。

介護をする従業員への支援として、85.1%の企業が「介護休業や介護休暇等の法定の制度を整える」ことで、仕事と介護の両立支援をしていることを明らかにしました。

※参考:厚生労働省|令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握

多くの人が親の介護と仕事を両立していますが、なかには介護を理由に退職を選ぶ人もいます。

介護が必要になってから準備するのではなく、親が健康なうちから介護について話しておくことが大切です。

遠方の親の介護はどうすればいい?

親が遠方に住んでいる場合は、すぐに駆けつけられません。さらに一人っ子であれば、兄弟姉妹などに介護を頼むこともできません。

その場合、親が元気なうちからサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や有料老人ホームのような、生活支援が受けられる老人ホームへの入居を検討してみるのもよいでしょう。

親が自宅でひとり暮らしをしている場合は、体調を崩したり転倒したりしても誰にも気付かれない可能性があり危険です。

早いうちからサ高住や老人ホームへの入居を親と相談しておけば、いざ介護が必要になったときにもスムーズに対応できるでしょう。

まとめ

繰り返しになりますが、一人っ子の介護は「人や仕組み(制度)に頼る」ことが重要です。

一人っ子が親の介護をする際は、ひとりですべてを背負い込まずに、民生委員や地域包括支援センターなどで、専門家に相談するようにしましょう。

そして、親の介護が必要になる前から、親と介護のことについて相談し、基本的な介護の知識を身に付けておきましょう。

介護サービスや各種支援制度の利用方法を知っていれば、いざという時に慌てずに、在宅介護、老人ホームへの入居など、さまざまな選択肢を検討できます。

周りの人の力を借り、各種制度を活用しながら、無理をせずに介護と向き合っていきましょう。

監修者:川村 匡由(かわむら まさよし)
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格
川村 匡由
監修者:川村 匡由(かわむら まさよし)
社会保障学者・武蔵野大学名誉教授・行政書士有資格  

博士(早稲田大学)、福祉デザイン研究所所長、武蔵野大学名誉教授。

1994年、つくば国際大学教授に就任後、武蔵野大学大学院教授を歴任。専門は社会保障、高齢者福祉、地域福祉、防災福祉。シニア社会学会・世田谷区社会福祉事業団理事。

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