家族のために今からできる介護の備え

公開日:2021年12月22日更新日:2022年09月12日
介護の備え

介護生活は、ときに突然やってくることもあります。いざというとき落ち着いて対応するための介護準備のヒントを本記事にまとめました。ご本人の希望を汲み、いつまでもその方らしく生活いただくためにお役立てください。

備えの1

体調の変化に気づき、よりよい介護につなげるために心身の状態を書き留めておく

1.日常的な健康管理

高齢になると体調や心身の状態に少なからず変化が起こってきます。ふらつく、ものを落すことが多い、物忘れが激しくなったなど、その状態や頻度を書きとめておくと、変化や予兆にいち早く気づくことができます。また、趣味や嗜好などのメモは「その人らしさ」を大切にする介護に役立ちます。

気になったとき書き留めたいこと
  • めまいや疲労感など、受診に至らない体調不良。
  • 怒りっぽくなった、落ち込み方が激しくなったなど気分の変化
  • 飲酒、喫煙習慣の変化(好む酒と酒量、煙草の種類や本数について)
日ごろから気にかけておきたいこと
  • 食事の量、回数、好きな食べ物など
  • 外出の頻度、行き先、一緒に行く人など
  • 散歩、体操、ゴルフなど続けている運動
  • 趣味や続けている仕事、地域の役割など楽しみややりがい

2.病歴やアレルギー

若い頃のケガや病気は、家族が把握していないことも多く、またご本人も忘れていることがあります。ご一緒に病気やケガをした年齢や状態などを振り返っておくと、この先におこる可能性のある病状の診断や治療の助けになります。

一緒に確認しておきたいこと
  • これまでにかかったことのある大きな病気やケガ
  • アレルギーによる持病と症状
  • 家族に短命の人、がんで亡くなった人、脳卒中や心臓病などで倒れた人がいるか
  • 触れられたくない部位や苦手な動作など

3.薬について気をつけること

日常的に服用している薬は家族が種類や回数を把握していると、飲み忘れ防止の一助になります。また、副作用の有無や苦手な薬の形状などもご本人に確認して、情報をときどき更新しておきましょう。

確認しておきたいこと
  • 常時、服用している薬の種類(何の症状に対する薬か)、薬の名前、回数と数(量)
  • 副作用が出たことのある薬の種類、名前、副作用の症状
  • 飲みにくい薬の形状(錠剤、粉薬、シロップなど)
  • 飲み忘れが多い薬や、使い方を間違ったことのある薬
  • 保険証や診察券、お薬手帳の保管場所
ヒント!

薬局でもらえる「お薬手帳」は、受診記録や複数の医療機関の処方内容を家族で共有するのに便利です。飲みにくかった薬などもメモしておくとよいでしょう。

備えの2

いざというとき慌てず介護をするために備忘録をつくる

1.介護・医療に関する相談先

いざというときにアドバイスが受けられる、地域の支援センターや医療機関など、さまざまな相談窓口を幅広くリストアップしておきましょう。

書き留めておきたい主な機関
  • 介護サービスを受けるとき何でも相談できる「地域包括支援センター」
  • 院している医療機関と主治医
  • 緊急時の搬送先(ご本人の希望があれば聞いておく)

2.日常生活に関する相談先と交友関係

日常生活の様子や友人関係は、ご家族よりも友人や近隣の人の方が詳しい場合があります。また、学生時代の友人や親戚は、まとめて連絡をお願いできそうな人がわかっていると安心です。

まとめておくと安心な連絡先
  • 自宅での介護に協力してくれる親戚や近隣の友人
  • 自治体の高齢者保健・医療・福祉サービスの担当窓口
  • 別居の場合、自治会の役員や民生委員など地域のことを尋ねられる人
  • 別居の場合、いざというときに連絡し合えるご近所の人
  • 長期入院などのとき知らせてほしい友人、付き合いのある親戚の名前と連絡先、続柄

3.介護費用の捻出と資産管理のための情報

介護生活を想定した場合、まずは介護にかけられるお金の見通しを立てておくことが大切ですが、ご本人が認知症になるなど資産管理ができなくなることもあります。資産の一覧、通帳や印鑑、証書類やカード類などの大事なものの保管場所は、ご本人に整理しておいてもらうと安心です。可能なら家族も情報を共有しておきましょう。

整理しておきたいこと
  • 介護にかけられるお金(公的年金収入・個人年金・預貯金など)
  • 所有している主な資産(預貯金・株券・不動産・車・宝石・借入金・貸付金など)
  • 大切な物の保管場所(通帳やキャッシュカード・保険証・実印・住基カードやマイナンバーカードなど)
ヒント!

インターネット管理で通帳のない銀行や証券会社の口座は、家族が知らずに放置されてしまうケースが少なくないようです。こうした情報は文書で控え、他の通帳や書類とともに保管してもらえると安心です。

備えの3

いつまでも“その人らしく”あってほしいから介護について家族で話しておく

1.ご本人の希望を知る

「できる限りご本人の希望に添った介護をしたい」と思っていても、あまり具体的なことは尋ねにくいものです。介護に限定しない今後の暮らし方のことなどを、世間話の延長で話題にしているうちに、ご本人の希望する介護環境の形が見えてくることもあります。すぐに結論を出そうとせず「まずは考え方を聞いてみる」という向き合い方から始めてはいかがでしょうか。

余命告知や延命治療などはとてもデリケートな話題ですが、ご本人の気持ちが解れば「尊重」したいことでもあります。ご家族も納得しやすく、いざというとき、医師に希望を伝える心づもりにつながるでしょう。新聞やテレビの情報をきっかけに「自分だったら、こうしたい」と話したり、「エンディングノート」の話題から「自分も書いてみようか……」などと取り組まれたりするケースもあるようです。

気になったとき書き留めたいこと
  • もし介護を受けるとしたらどんな環境が良いか(地元や家族の近くなのど「地域」・自宅や施設などの「場所」)
  • 誰に介護してもらいたいか(家族・専門のスタッフなど)
  • 介護に関するお金の使いみちの希望(在宅サービスを利用・自宅を改築・施設へ住み替えなど)
機会があれば聞いておきたいこと
  • 余命宣告を受けた場合、告知してほしいか、誰に告知してもらうのがいいか
  • 延命治療についてはどんな考えをもっているか
  • 葬儀やお墓に関するこだわりや希望はあるか(葬儀の形式・参列者・お墓のことなど)

2.介護に関わる家族との関係づくりをする

介護は家族の協力で成り立ちますが、それぞれの事情もあって、型通りに分担するのは容易なことではありません。費用や時間などの負担が偏らないような調整も必要です。切迫した状況になる前から家族間の状況や介護情報を共有するなど、気兼ねなく話し合える関係を築いておくことが大切です。

介護を円滑にするために心がけておきたいこと
  • 介護に関して、どんなイメージをもっているか家族で話してみる
  • 介護にかかる費用や時間の分担についてどう考えているか家族に聞いてみる
  • もし、介護が必要になったら誰が中心になり、誰がどのように協力できるかを話し合う
  • 介護に関する情報、家族の近況など、まめに連絡を取り合う

3.そのとき役に立つ介護サービスの情報収集

あらかじめ介護サービス内容や手続きのイメージを持っておくと、必要な介護サービスを十分に活用できます。自治体による独自の取り組みや民間のサービスも多様化し、介護予防に役立つものもあります。お住まいの地域の情報を集めておくと介護環境を検討するときにも参考になるでしょう。

調べておきたいこと
  • 介護保険で受けられるサービスや申請方法
    ●市区町村の介護保険担当窓口か地域包括支援センターに問い合わせる
  • 自治体で行っている高齢者保健・医療・福祉サービスの情報
    ●地域包括支援センターに問い合わせる
    ●自治体に問い合わせるかホームページで「介護保険 サービス」「高齢者 サービス」などを検索するホームヘルパー派遣、介護予防事業、ショートステイ、外出支援、安否確認など)
  • 民間の高齢者向けサービスの情報
    ●お住まいの地域で受けられるサービスと金額を調べる(見守り、食事の宅配、家事支援など)
  • 高齢者向け住宅の種類や違い
  • 住環境(バリアフリー改修工事など)の点検・検討について
    ●自治体に問い合わせるかホームページで「介護保険 改修」「高齢者 改修」などを検索する(介護保険サービスを利用して住宅改修ができる金額の範囲、介護保険以外に利用できる高齢者向けの助成、補助金制度の有無や内容)
  • 住環境(バリアフリー改修工事など)の点検・検討について
    ●福祉住環境コーディネーターのいる建築会社やリフォーム会社を調べる
地域交流の場も「介護の備え」の情報源になります

公民館やカルチャーセンター、地域福祉センター、交流サロン、自治会の集まりなどの地域交流の場では、同年代の会話から介護に関する情報交換も盛んです。ご家族の情報収集の場としてはもちろん、ご本人に参加をすすめたり外出を手伝ったりすることで、先々のご自身の介護に自然に向き合う機会になることもあります。特に別居のご家族の場合は、こうした地域交流の場を積極的に活用できるとよいでしょう。

※記事の内容は2021年12月時点の情報をもとに作成しています。

監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー
岡本 典子
監修者:岡本 典子(おかもと のりこ)
      FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー

「高齢期の住まい」に着目し、東京や神奈川を中心に、介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、240ヶ所以上を訪問。現在、「終のすみか探し」コンサルタントとして、シニア期の住まい探し・住みかえ、執筆、講演と、幅広く活動している。

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