認知症の種類と検査方法

公開日:2021年12月22日
認知症の種類

認知症は1種類ではなく、原因によって種類が分かれ、それぞれ特徴や症状が違います。「認知症」とひとくくりにせず、種類に応じて適切な対応をとることが大切です。

本記事では、認知症の種類や特徴、そして診断方法などを見ていきます。もしもの時に備え、基本的なことをしっかりと理解しておきましょう。

認知症とは

そもそも認知症とは、認知機能の低下によって、日常生活全般に継続的な支障が出る「状態」を指します。

認知機能の低下の原因には、脳の病気や障害といった多くの要素があります。代表的な初期症状である「記憶障害」について、高齢者に症状が出てくるケースが多いため、「加齢による物忘れ」と混同されがちですが、「加齢による物忘れ」と認知症では、変化の出方や原因に違いがあります。

「会話」を例にすると、加齢による物忘れでは「会話の内容を忘れてしまう」というような、“出来事の一部を忘れてしまう”イメージです。一方、認知症おける記憶障害では、「会話したこと自体を忘れてしまう」というような“出来事そのものを忘れてしまう”ものです。また、認知症では、記憶障害だけでなく、判断力の低下を伴うケースも多く、周囲の対応のハードルもあがります。

ただし、MCI※と呼ばれる軽度認知障害は、物忘れとの区別がつきづらいのが現状です。日常生活に大きな支障はなく、本人に自覚症状がなくても、少しでも本人の異変を感じたときは、早めに検査を受けてもらうようフォローしましょう。早期に発見できるほど、対応の選択肢が多くなります。

なお、認知症は治らない病気と言われることがあります。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などの「変性性認知症」は、根本的な治療が難しいとされています。しかし、原因によっては、治療が可能な認知症あります。また、薬の副作用で認知症のような症状が出ることもありますので、いずれにせよ、「認知症かもしれない」と感じたら、早期に検査を行って原因を特定し、適切な対処を取ってください。

4つの認知症が全体の約8割?各種類の特徴と症状

認知症にはいくつもの種類があるものの、全体の8割は、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭葉型認知症」の4種類が占めていると言われてます。

それぞれの認知症の特徴を簡単に解説します。

アルツハイマー型認知症

認知症というと、アルツハイマー型認知症のイメージを持たれている方も多いでしょう。厚生労働省の発表によると、実際に、アルツハイマー型認知症は全体の67.6%と、3分の2以上を占めており、女性に多くみられる認知症の型です。

アルツハイマー型認知症は、脳の中にアミロイドβというタンパク質がたまり、脳の神経が変性することによって発症すると考えられていますが、はっきりとした原因はまだわかっていません。

脳の一部が委縮してしまう特徴を持っていて、物忘れに似た症状が出ます。症状が進行していくと、今の日付が言えなくなったり、自分がどこにいるのかわからなくなったりします。また、「物を盗まれた」といった妄想にとりつかれる、徘徊する、などの症状が出るケースもあります。

現状、根本的な治療方法はまだ確立されていませんが、進行を遅らせたり症状を改善させたりする効果があるとされている、4種類の治療薬があります。これらはすでに世界70以上の国と地域で承認されている薬で、いずれも保険診療が適用されます。

  • ドネベジル(アリセプト)
  • リバスチグミン(リバスタッチ、イクセロン)
  • メマンチン(メマリー)
  • ガランタミン(レミニール)

血管性認知症

全体の19.5%と、アルツハイマー型認知症に次いで多いのが、血管性認知症です。高血圧や糖尿病のような生活習慣病を持っている方の発症リスクが高く、男性に多く見られます。

脳梗塞や脳出血によって脳の血管に障害が起こると、脳に十分な血液が行き渡らなくなって、少しずつ血管が壊死します。これが、血管性認知症の原因です。

血管性認知症は、脳のどこで脳梗塞や脳出血が起こったのかによって、それぞれ異なる症状が出ます。 意欲の低下や、脳梗塞・脳出血の症状に近い症状(言語障害・歩行障害・嚥下障害)が特徴的です。

「日によってできることとできないことが違う」「認知症のある症状は見られるが、別の症状は見られない」など、症状がまだらに生じる(まだら認知症)というのも特徴です。また、物忘れのほか、手足のしびれのような身体症状が出るケースもあります。

生活管理で脳梗塞・脳出血を予防し、投薬とリハビリで症状の進行を遅らせることが可能とされています。リハビリが重要とされており、壊死した脳の機能の一部を他部分の脳がカバーするケースも報告されています。

レビー小体型認知症

レビー小体と呼ばれる特殊なたんぱく質が原因となって発症するのが、レビー小体型認知症です。 レビー小体が、脳の大脳皮質(思考の中枢的な役割を持つ部位)や脳幹(呼吸や血液循環を担う部位)にある神経細胞内に溜まり、脳の神経が破壊されてしまうことで起こります。

アルツハイマー型認知症とは、脳の神経を害するたんぱく質の種類が違うほか、レビー小体型認知症では現実にはないものが見える(幻視)、妄想、手足の震え・歩幅が小さくなるといったパーキンソン症状が目立ちます。

また、アルツハイマー型認知症と比較して、男性への発症が多いことも特徴です。アルツハイマー型認知症と同様に根本的な治療方法はまだありませんが、投薬により症状の進行を遅らせることができます。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉、側頭葉の萎縮により、血流が阻害されることによって起こる認知症。全体の1.0%と、ほかの3種に比べると少ない割合です。

症状としては、感情がコントロールできない、社会的な規範やマナーを守れない(万引きや無銭飲食など)、徘徊など、性格の変化や異常行動がみられることが特徴です。言葉がなかなか出てこなかったり、言い間違いが多くなったりと、物忘れと似た症状も出ます。

また、前頭側頭型認知症は、他の認知症とはことなり、指定難病に認定されています。 他の認知症と同様、根本的な治療方法はありませんが、投薬などによる対症療法をとるのが一般的です。

その他の認知症

主な認知症は以上の4種類ですが、さらに、脳脊髄液の増加で起こる「正常圧水頭症」を加えて「五大認知症」とも言われることもあります。正常圧水頭症に起因する認知症は、治療が可能とされています。

それ以外にも、認知症以外の病気の症状や、二次障害、薬の副作用、栄養不足など、さまざまな原因によって認知症が引き起こされる可能性があるのです。

原因による認知症の分類一覧

前述の通り、認知症はさまざまな原因によって起こります。「認知症」自体がひとつの病気ということではなく、さまざまな疾患によって引き起こされる状態が認知症です。認知症は起因する原因によって、大きく4つに分類されます。

認知症の分類 原因となる疾患
中枢神経系認知症 アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症など
血管性認知症 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など
中枢神経系認知症 クロイツフェルト・ヤコブ病、エイズ脳症、先天性梅毒、脳炎、脳寄生虫など
二次性認知症 甲状腺機能低下症、アルコール関連脳症、低血糖症など

なお、上記のほかにも、認知症の原因となる疾患は多数あります。

発症する年齢や症状の出方にも差がありますし、ほかの病気が潜んでいる可能性もあるため、認知症の自己判断は危険です。「年だから仕方がない」と思わずに、おかしいと感じたら、専門機関に相談しましょう。

認知症診断と検査の種類

専門医による認知症の診断は、複数の検査を元に行われるのが一般的です。実際にどのような検査が行われるのか、種類や内容を紹介します。

問診・一般身体検査や画像検査

認知症の診断でも、一般的な診療と同じような問診や身体検査が行われます。認知症の原因はさまざまで、単純な物忘れではないかどうかを確認する必要もあります。そこで、複数の検査を組み合わせてスクリーニングを行い、原因を特定していくのです。

問診(面談)

最初に、専門医による聞き取り、状態の診察を行います。この問診を経て医師が判断し、以降の検査に進みます。

CT・MRI・PET・SPECT・MTBG心筋シンチグラフィー

認知症の原因を調べるために、頭部の状態を見られるCT・MRIなどの画像検査、PET(脳の糖代謝検査)、SPECT(脳の血流の検査)などが行われます。

また、レビー小体型認知症の診断のために、パーキンソン病の診断に利用される「MTBG心筋シンチグラフィー」という検査が行われる場合もあります。

血液検査・尿検査

合併症による甲状腺の低下などを起こしていないか調べるために、血液検査・尿検査を行うこともあります。

その他、心理状態を確認するための心理検査なども行う場合もあります。なお、病院では、これらの検査をすべて行うわけではありません。症状や問診の内容等に基づいて、必要な検査を行います。

改訂長谷川式スケール(HDS-R)

改訂長谷川式スケールは、日本でもっとも広く利用されている認知症検査のための認知機能テストです。 テストを受けた日の日付や、簡単な記憶力テストで構成された9つの質問に答えて、認知機能を計ります。30点満点中、20点以下の場合は認知症の疑いがあると判断されます。

ミニメンタルステート検査(MMSE)

ミニメンタルステート検査も、改訂長谷川式スケールと似たタイプの認知機能テストです。同じように、医師の質問に患者が答える形で検査を行います。

改訂長谷川式スケールとの違いは、質問の数や細かさ。質問内容が広範囲の分野に渡っており、どんなことが苦手で、どんなことができているのか判断しやすい検査です。

23点以下で認知症、24~27点で軽度認知症の疑いがあると診断されます。

時計描画テスト

時計の絵を描いてもらうテストです。神経性認知機能障害の発見に役立つと言われています。時計の絵を描く行為は、改訂長谷川式スケールやミニメンタルステート検査のような「質問に答える」やり取りが得意でない患者にも実践してもらいやすい方法です。

「時計を描いてください」と単純に指示を出して描けるかどうか確認するだけでなく、どこでつまずいたか、どんなヒントを出せば描けるか、といった点を細かく確認していきます。

ウェクスラー記憶検査(WMS-R)

ウェクスラー記憶検査は、記憶に関する11の質問に答える検査です。世界的に利用されている検査で、記憶力だけでなく、集中力や注意力なども計れます。

効果が高い検査ではありますが、検査自体に非常に長い時間がかかる難点があります。そもそも認知に問題があって受診した方や、高齢の方の場合、検査を最後まで受けること自体が困難な可能性があるでしょう。

アルツハイマー病評価スケール(ADAS)

アルツハイマー病評価スケールは、認知症が疑われる方や発症している患者に対して行われます。11項目の質問に答え、記憶や、今の季節、時の判断に問題がないかどうかを確認します。

高齢者うつスケール(GDS)

高齢者がうつ状態にないかどうかを確認するための検査です。認知症でもうつ症状が出ることがあるため、認知症の検査にも利用されます。15の質問で構成されていて、点数が高いほどうつ状態にあると判断されます。

認知症発症前であればMCIスクリーニング検査

軽度認知障害(MCI)のリスクがどの程度あるのかを調べるための血液検査です。本格的な認知症状が出る前にMCIのリスクがわかるため、早期の対策がしやすくなります。

認知症治療は薬物療法と非薬物療法がある

認知症は「特効薬があって薬を飲めば治る」というものではありません。治療を行う場合、脳の活性化や認知機能の維持を目的に行われる非薬物療法と、認知機能の改善や日常生活の問題を抑えるための薬物療法を組み合わせて行います。

薬物療法で出される薬の種類

認知症の薬は、中核症状である認知機能を改善するために処方される薬と、周辺症状と呼ばれる幻覚やうつ、不眠などを抑える薬に分けられます。そのため、認知症の治療として、向精神薬や睡眠薬が処方されるケースもあります。認知症薬の中には貼り薬もありますから、飲み薬がうまく飲めない患者にも活用しやすいでしょう。

非薬物療法の種類

非薬物療法としては、多様なリハビリやレクリエーションが利用されています。 リハビリといっても痛みを伴うものではありません。 リハビリやレクリエーションには以下のような種類があります。基本的には楽しんで取り組める内容です。

  • 散歩、輪投げ、体操(運動療法)
  • 工芸、絵を描く(美術療法)
  • カラオケや音楽鑑賞(音楽療法)
  • 回想法(昔の思い出話をする)

正しい理解で、適切な対応を

「認知症といえばアルツハイマー」というイメージを持たれる方も少なくありませんが、アルツハイマー型認知症は、いくつかある認知症のひとつに過ぎません。それぞれの型で症状や対応が異なるため、まずは正確に把握する必要があります。

認知症になると、原因がわからないまま、これまでできていたことができなくなってしまいます。本人の苛立ちや不安も大きいでしょう。できるだけ早期に正しい診断をしてもらい、対処することが、本人と家族の幸せにつながっていくはずです。「あれっ?」と思ったら、まずは専門医を訪ねましょう。

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監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長
杉山 孝博
監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長

川崎幸病院副院長を経て1998年より川崎幸病院の外来部門「川崎幸クリニック」院長に就任。公益社団法人認知症の人と家族の会全国本部副代表理事、神奈川県支部代表。認知症と介護に関する著書、講演など多数。

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