認知症の症状別対応のヒントをわかりやすく解説

公開日:2021年12月22日
認知症への対応方法

認知症の症状のうち、不眠、夕暮れ症候群、物盗られ妄想・被害妄想、排便トラブル、過食などは、性格や体験、環境などが絡み合ってあらわれます。そのため、周囲の対応や環境が変わると症状が落ち着くこともあります。
こうした症状の背景にあるものを、先に紹介した認知症の特徴や9大法則を参考にしながら探してみてください。代表的な症状ごとに、対応のヒントも以下に紹介します。 医師や介護施設のスタッフに相談するときも、背景にあるものを予測して伝えながら対策を考えていくといいでしょう。

困っているのはどんなことですか?

(1)夜になると落ち着かなくなる・大声を出す

自分が今いる場所や時間がわからなくなる「見当識障害」で、真っ暗な中に一人でいることに恐怖を感じている可能性があります。または、以前に暗い場所で怖い思いをしたことがあったのかもしれません。

対応のヒント

安心感を与えるために、部屋を明るくしたり、小さめの音量でラジオやテレビをつけておいたり、一人にしないといった対策をとると落ち着くことがあります。
不安感や興奮でどうしても眠れない場合は睡眠薬などが処方されることもあります。副作用が出ることがあるので医師の注意をよく聞いて服用してもらいます。

(2)夕暮れになると家を出ようとする

自宅にいるのに、荷物をまとめて「自宅に帰ります」と出かけようとします。決まって夕方に起こることから「夕暮れ症候群」と呼ばれます。
この場合、記憶が過去にむかって失われていく「記憶の逆行性喪失」が起きていると考えられます。その人の中では、今住んでいるのは昔の家なので、夕方になると「よその家にあまり長居をしてもいけない」「そろそろ失礼しないと迷惑になる」という気持ちになるのでしょう。鍵を閉めたりすると「閉じ込められた」と不安になり、暴れることもあります。

対応のヒント

ここが自宅ですよと言いたい気持ちはぐっとこらえて、「もう少しゆっくりしてください」「お茶をお出ししますね」「夕食も食べて行ってください」などと声をかけ、空腹を満たしたり好きな手仕事などに誘ったりして、落ち着くのを待ちましょう。

(3)「物を盗られた」などの妄想にとらわれる

「お金を盗まれた」「大切な物を家族が勝手に使っている」と言って大騒ぎになります。難しいのは、介護をしている家族が犯人として疑われやすいという点です。これは、他人の前ではしっかりできて身近な人ほど強い症状があらわれるという認知症の法則に当てはまるのですが、お金や物に執着する姿を見る戸惑いと重なり、介護する家族にとっては辛いものです。

対応のヒント

こうした症状の背景には経済的に厳しい時代を乗り越えてきたり、困難な状況の中で家族を守ってきた経験がある場合が少なくありません。まずは、それだけ懸命に生きてきたのだと受け止めてみてください。そして、認知症の方の言葉は否定せず、一緒に探して、見つかったときは喜びを共有しましょう。探している途中で話題を変えてみたり、認知症の症状が出にくい第三者に間に入ってもらうと落ち着くこともあります。

(4)排便の失敗や失禁を隠す

排便トラブルは介護者にとって心理的にも体力的にも大きな負担がかかります。認知症の方の反応はまちまちで、汚したまま絶対に失敗を認めなかったり、便をこっそりタンスや布団の中に隠したり、おもちゃのようにもてあそんでしまうこともあります。

対応のヒント

失敗を否定したり隠したりするのは、プライドのあらわれです。ひと言でも謝ってもらえれば介護する側の気持ちも変わるのですが、認知症の方に失敗を指摘しても押し問答になり、よい結果にはつながらないでしょう。せめて一人での介護にならないよう、家族や介護サービスのサポートを求めてください。介護する側の過度のストレスや疲労は、認知症の方の症状にも影響するので、悪循環が起こりやすくなります。

(5)空腹を訴え続ける

認知症の症状として、異常な食欲を示すケースがあります。食べたことを忘れてしまうだけでなく、実際に空腹を感じているので何か食べるまで納得できません。ときには冷蔵庫の生の肉を食べてしまうこともあります。

対応のヒント

「今仕度をしているから、これを食べていて」と、おにぎりなどの軽食を渡すといいでしょう。がまんさせることで生じる混乱を考えれば、回数が多くなっても食べさせたほうが落ち着いた状態を維持できます。認知症の進行とともに食欲は確実に落ちていきます。今は食べ過ぎなどを心配せず、要求を受け入れてよいでしょう。

(6)性的な要求をする

認知症の方が息子のお嫁さんに布団に入るよう誘うなど、対応に困る要求をすることがあります。これは、実際は高齢であっても、記憶が過去にむかって失われていく「記憶の逆行性喪失」によって若い頃の気持ちに戻っているのだと考えられます。判断力の低下によって、相手の見分けがつかず、羞恥心や遠慮もなくなっています。

対応のヒント

認知症の方が孤独感を抱えている場合などは、ゆっくり話を聞いたり、手にふれるなどの軽いスキンシップをとりながら話題を変えたり、散歩やリハビリで落ち着くこともあります。はっきりと拒否すると症状がひどくなることがあるので軽く受け流せるとよいのですが、要求が続く間は介護する人のストレスが大きいため、相談相手の存在が欠かせません。認知症について理解のある人に話を聞いてもらうといいでしょう。

(7)火の始末ができない

実際に不始末があったわけでなくても、「何かあってからでは遅い」という気持ちで家族の心配が募ります。また、近隣から不安の声が聞こえてくることもあります。ただ、火の始末は、日常的な対策で回避できる場合が多くあります。

対応のヒント

火災警報機をつけ、暖房をエアコンやパネルヒーターに替える、カーテンを燃えにくい素材のものに替える、ガス台は安全センサーのついたものにするなど、環境を見直してみましょう。外出するときガスの元栓をしめたり、燃えやすい物は片づける、煙草の吸い殻を捨てるところには水をはる、など、日頃の心がけも大切です。

(8)便を壁やタオルになすりつける

認知症が進むと、判断力や状況を理解する力が低下して、便が汚いものであるという認識がなくなってしまいます。うっかり手についてしまって、その手をふこうとしているのであり、悪気があるわけではありません。

対応のヒント

悪意がなくても、介護する人には大変な負担です。再び汚されたら……という不安も大きくなります。タイミングよくトイレに誘導することができればよいですが、介護の手が少なければ現実的ではありません。負担を減らすためには、汚れやすい場所に紙を貼っておいて汚れたら取りかえる、トイレやベッドの周りに汚れてもよい布やペーパーを敷き、家族が使うタオルは認知症の方の手の届かないところに置くなど、少しでも後始末が楽になるような工夫をしていくのがよいでしょう。

※記事の内容は2021年12月時点の情報をもとに作成しています。

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監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長
杉山 孝博
監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長

川崎幸病院副院長を経て1998年より川崎幸病院の外来部門「川崎幸クリニック」院長に就任。公益社団法人認知症の人と家族の会全国本部副代表理事、神奈川県支部代表。認知症と介護に関する著書、講演など多数。

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