種類④ 前頭側頭型認知症とは?特徴や症状、患者へのケアのポイントを解説

公開日:2021年12月22日
前頭側頭型認知症

「前頭側頭型認知症」は、認知症の1つであり、脳の前頭葉と側頭葉の萎縮(いしゅく)が原因と考えられています。「アルツハイマー型認知症」などに比べ、割合は少ないものの、特有のさまざまな症状があらわれます。

本記事では、前頭側頭型認知症の特徴や症状、患者へのケアのポイントを解説します。患者と向き合う際の参考にしてみてください。

前頭側頭型認知症とは?

前頭側頭型認知症とは、神経変性(特定の神経細胞に異常が起きる病気)による認知症の一つで、脳の前頭葉や側頭葉前方に委縮が見られることが特徴です。難病指定を受けており、他の認知症では見られにくい、人格変化や行動障害、運動障害などの特徴的な症状を示します。

神経細胞が減ったり本来ないはずの細胞ができたりすることで、脳が委縮して発症します。その中でも、脳の神経細胞にタンパク質が変性した「ピック球」と呼ばれる神経細胞の一種が発見された症例を「ピック病」といいます。

ピック病とは?

ピック病は、いくつかある前頭側頭型認知症の一つです。前頭側頭型認知症の約8割にあたるといわれています。40~60代の比較的若い世代で発症するため、環境や体力・精神的にも高齢者に多いアルツハイマー型とは異なります。ピック病は、患者本人が病気を認識することはありません。

前頭側頭型認知症の症状

改めて、ここでは前頭側頭型認知症でよく見られる症状について解説します。前頭側頭型認知症は進行性の病気ですが、末期症状に至るまでは個人差があります。以下の症状を把握しておくと、患者の状況を理解できることがあるため、参考にして下さい。

言葉の使用・理解が困難になる

前頭側頭型認知症の患者は、人格や行動に問題が生じることもあります。具体的な事例は以下の通りです。

  • 万引きや信号無視などをくり返す
  • 失礼な発言をしたり、暴力的になったりする
  • 身だしなみに気をつかわなくなる
  • 毎日同じところへ出かける
  • 同じ料理を毎日食べ続けたり(偏食)、食べすぎたり(過食)する

前頭側頭型認知症の患者は、「遠慮をしなくなる」ケースがあります。その結果、相手に不快な行動をしたり暴力的になったりするため、症状の進行するにつれて周囲に人が寄り付かなくなるのです。

毎日同じところへ出かける、同じ料理を食べる、といった「行動を繰り返す」もあります。身だしなみに気をつかわなくなるのも症状の一つです。家族が気遣ってあげましょう。

発症後の経過

前頭側頭型認知症は、発症してから平均6〜9年の寿命と言われています。はじめは人格変化や行動の異常といった症状が目立ち、徐々に無気力・無関心になります。進行に伴って当初の人格変化や異常行動が弱まる場合があり、これは症状が進行した結果です。状況を受け止め、冷静に対処することが大切です。

また前頭側頭型認知症は、手足が震えたり筋肉がこわばったりするパーキンソン症状・運動ニューロン症状を伴う症例もあります。誤嚥(ごえん)を繰り返す、呼吸筋が麻痺する、など命に関わる状態になる人もいれば、これらの症状をまったく伴わない人もいるなど経過にも個人差があります。

前頭側頭型認知症の原因

そもそも前頭側頭型認知症は何が原因で発症するのでしょうか?主な原因としては、「タウタンパク」や「TDP-43」と呼ばれるたんぱく質の性質が変化して蓄積され、前頭葉や側頭葉の萎縮が起こることが関係しているとされています。しかし今のところ、なぜそのような変化が起こるのかはわかっていません。

前頭側頭型認知症の中には遺伝性のタイプがあることもわかっていますが、日本ではほとんど見受けられません。予防には原因解明の必要性があるため、今後の研究・解明が期待されます。

前頭側頭型認知症の診断方法

もし前頭側頭型認知症と思われるような症状がみられた場合、まずは精神科や神経内科の受診をおすすめします。または「もの忘れ外来」を受診しましょう。また「認知症疾患医療センター」として指定を受けている病院が安心です。本人に上手く受診を促すためにも、ここで診断の基本的な流れを知っておきましょう。

1.問診

普段の様子や行動について本人と家族に「問診」を行い、前頭側頭型認知症に特徴的な症状があるかを医師が判断します。症状を正確に伝えられるよう、家族も必ず付き添って問診を受けましょう。問診で調べる内容は、一般的に次のとおりです。

  • 異常行動や認知機能障害があり、日常生活に支障をきたしていないか
  • 社会的に不適切な行動や礼儀・マナーの欠如、衝動的な行動がないか
  • 無関心・無気力ではないか
  • 共感・感情移入の欠如(他人の話を聞かない、人との交流をもたないなど)がないか
  • 毎日同じ行動や言葉を繰り返すことはないか
  • 食習慣の変化(過食・飲酒・喫煙など)がないか
  • 物事を順序立てて遂行できるか

いずれも発症初期から出てくる症状のため、普段から患者を観察しておくとスムーズに回答できます。

2.CT・MRI検査

問診の結果から前頭側頭型認知症の可能性があると判断された場合、CTやMRIが行われます。発症していると、前頭葉や側頭葉前部から委縮が認められます。

一方で、アルツハイマー型の場合、脳の「海馬」と呼ばれる部分から委縮が始まるため、両者を区別できるのです。「脳が委縮する」という点では同じですが、脳のどの部分を中心に委縮するかという点が異なります。

3.脳血流シンチグラフィー・PET

症状が進行していない前頭側頭型認知症の場合、必要に応じて「脳血流シンチグラフィー」や、「PET(Positron Emission Tomography)」と呼ばれる検査を行います。脳血流シンチグラフィーは「脳の血流」を、PETは「身体の代謝」を観察するのに有効です。

脳血流シンチグラフィーやPETによって血流や代謝の流れに低下を認めると、前頭側頭型認知症と診断されることがあります。検査前に、アルコールやタバコ・カフェインの摂取制限を求められるかもしれません。タイミングをみて本人に説明しておきましょう。

前頭側頭型認知症の治療法

今のところ、前頭側頭型認知症に対する有効な治療法はわかっていません。症状を緩和させる方法としては、家族を支えとした、患者の支援やケア、対処療法が中心になります。

症状に応じて抗精神病薬が処方されることもあります。また、患者が過ごしやすいような環境を整えるのも、トラブルを避けるためには重要です。本人はもちろん、家族が手一杯になる前に、心の余裕を持てる環境を作りましょう。

前頭側頭型認知症患者へのケアのポイント

前頭側頭型認知症の症状は、治療によって抑えることが現状困難とされています。トラブルを回避し、本人ができるだけ穏やかに生活を送るためには周囲の適切なケアが求められます。

行動に合わせたスケジュールを立てる

前頭側頭型認知症の症状のひとつに、常同行動があります。毎日○時に近所の公園にでかける、いつも同じ服を着たがるなど、同じ行動を繰り返しとることにこだわりを持つのが特徴です。患者の意思を尊重したスケジュールを立ててあげましょう。

スケジュールが乱されると、突然怒り出したりパニックを起こしたりしてしまうこともあります。スケジュールがルーティン化して落ち着いたら、それを乱さないよう注意を払いましょう。時間割を作成したり、目覚ましや携帯のタイマーを使ったりするのも効果的です。

親しい人たちと情報を共有しておく

前頭側頭型認知症を発症したら、親しい人達と情報を共有しておくことをおすすめします。症状が進行して理性が働かなくなると、他者に暴力を振るったり、万引きをしたりする可能性があるためです。

頻繁に会う人にはどんなときに暴力的になるのかを知らせ、回避してもらいましょう。よく立ち寄るお店には、もし万引きをしてしまった時のために、住所や連絡先、身元保証人などを知らせておくと安心です。

認知症ケアに特化した施設を利用する

暴力行動が手に負えない、前頭側頭型認知症の症状が進行してしまったなどの場合には、施設の利用を検討してみましょう。その場合、認知症ケアに強みをもつ施設や、認知症ケアに特化している「グループホーム」がおすすめです。

暴力行動が手に負えない、前頭側頭型認知症の症状が進行してしまったなどの場合には、施設の利用を検討してみましょう。その場合、認知症ケアに強みをもつ施設や、認知症ケアに特化している「グループホーム」を検討してみるものよいでしょう。

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監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長
杉山 孝博
監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長

川崎幸病院副院長を経て1998年より川崎幸病院の外来部門「川崎幸クリニック」院長に就任。公益社団法人認知症の人と家族の会全国本部副代表理事、神奈川県支部代表。認知症と介護に関する著書、講演など多数。

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