家族が認知症になったら? 認知症介護の理解を深めてストレスを軽減しよう

公開日:2021年12月22日
認知症と介護のストレス軽減

家族が認知症になり、それまでできていたことができなくなったり、目が離せない状態になったりすると、どの家庭でも戸惑いや混乱が起こります。

けれど、認知症の方の見ている世界を理解すると、その人の言動が受け入れやすくなり、介護もしやすくなります。対応のヒントになる認知症の症状や特徴を以下に紹介していますので、参考にしてください。

認知症介護の原則

「認知症の方の世界を理解し、その世界を大切にする。現実とのギャップを感じさせないようにする」。これが、認知症介護の大切なポイントです。本人が自尊心や安心感をもって暮らせるように対応しましょう。 ときには認知症の方の話に合わせるために、嘘をついたり不本意な対応をしなければいけないかもしれません。

それでも、その人の気持ちを理解して受け止めることが、結果的に介護の混乱や負担を減らし、上手な介護につながります。

介護に役立つ認知症の9大法則

覚えておくと認知症の方の行動が理解しやすくなり、介護ストレスの軽減につながる法則です。

法則1 記憶にないことはその人にとって事実ではない

本当のことを言い聞かせても納得できないのは、本人にとっては「事実ではない」ためです。認知症の代表的な症状である記憶障害には以下の3つの特徴があります。

思い出す力が低下する

認知症になると「体験したことを、すぐに思い出す力」が低下します。そのため、聞いたり話したりしたことを忘れて何度も同じ話題をくり返します。介護する人が丁寧に受け答えをしたから記憶に残るということはありません。対応としては、軽く受けるか、返事をしないくらいがよいかもしれません。

出来事を丸ごと忘れてしまう

認知症でなくても出来事の細部を忘れてしまうことはありますが、「あのとき、あの人もいたよ」とヒントを与えられれば「そういえば……」と記憶がよみがえってくるものです。一方、認知症の場合は、出かけた、人に会ったという出来事を丸ごと忘れてしまうため、正しいことを伝えようとしても、周りが自分に間違った情報を思い込ませようとしていると受けとられてしまいます。思い出させることにこだわらず、「その時間は楽しんでいたのだから、それでいい」と割り切ることが、上手な対応でしょう。

食事をしたのに「食べていない」と言う場合も、「食べたでしょう」と納得させようとするより、「今つくっているから待っていてくださいね」などと本人の気持ちを汲んで対応したほうがうまくいきます。

記憶が過去にさかのぼって消えていく

認知症では、記憶は新しいものから薄れていきます。これまでの記憶が現在から過去にむかって失われていく現象(記憶の逆行性喪失)です。現在に近い記憶は、まだらに残るのではなくすっかり消えてしまいます。30〜40年分、記憶が逆行すれば、その間に引っ越した家は見知らぬ家に見えます。家族の顔も、みんな若いころのものになっています。共有していた記憶がなくなり家族の顔がわからなくなる状況は、身近な人ほど悲しいものですが、そんなときはこの法則を思い出してください。言動が理解できたり、受け入れやすくなったりするでしょう。

法則2 身近な人に対して強く症状が出る

接する時間が長い介護者には最もひどい症状を示すのに、医師や訪問調査員、知人などの来客があると驚くほどしっかりと受け答えをするというケースは珍しくありません。介護する家族は、苦労をわかってもらえず落胆します。

こうした症状の波のはっきりした原因はわかりませんが、「身近な人には甘えが出るのだろう。信頼の証なのだろう」と思って納得するしかないと考えましょう。

法則3 自分にとって不利なことは絶対に認めない

認知症の特徴の一つですが、攻撃的に切り返されると介護する側も身構えてしまいます。その言い分が誤りや矛盾を含んでいるなら、「勝手なことを言う」と腹が立つこともあるでしょう。ただ、これは認知症の方にとって、自分の能力の低下を認めたくないための本能的な自己防衛とも考えられます。言い合っても振り回されるだけと思って対応してみてください。

法則4 認知症の症状はまだらに表れる

認知症のはじまりは、認知症の症状と正常な状態が混じり合ってあらわれます。すると、理解できない言動や対応に困る言動が認知症の症状なのかどうかがわからず、混乱が生じやすくなります。そんなときは、それが認知症の症状かどうかを見分けることにこだわらず、「これは認知症の問題だ。だからこの言動も認知症の症状だ」と考えてしまうほうが、介護する人にとっては気が楽になることがあります。

法則5 出来事は忘れても感情は残る

認知症の方は出来事はすぐに忘れてしまいます。けれども、そのときに抱いた感情は記憶が消えてもしばらく残ります(感情残像の法則)。そこで、次のような点を心がけると、認知症の方がよい感情の状態を継続でき、おだやかな介護につながります。

おだやかな介護のための心がけ

ほめる、感謝する

「上手ね」「ありがとう」などの言葉をできるだけ使う

同情する

「そうなんだ」「大変でしたね」など、相づちをうつ

共感する

「ごはん、おいしかった? よかったね」など会話の終わりに「よかったね」をつける

思い込みを受け入れる

謝る、認める、嘘をつく(認知症の方の言うことは本人にとっては事実なので、否定しても混乱が続くだけです。嘘も方便で、その場を収める返事をするほうが感情を刺激しません)

法則6 強いこだわりをもち抜け出せない

認知症の方は、「こうしたい」「これでなければダメだ」「こうにちがいない」と思ったことを否定されたり、考えを変えるよう説得されたりすると、よけいに頑なになってしまいます。解決方法は状況によって異なりますが、基本の対応を参考にしてみてください。

こだわりに対する基本の対応

こだわりの裏にある原因を考える

言動を否定された、要求が受け入れられないなどの不満や疑いの気持ちが、別のこだわりになってあらわれることがあります。今こだわっていること以外に、ストレスを生んでいる原因がないか考えてみてください。

そのままにしておく

介護する側が、もっとできることをしなければと考えすぎると、こだわりなどの認知症の症状がひどくなる場合があります。命に関わるほど差し迫った状況でなければ「このままでもよいのでは」と発想を変えるのも一つの方法です。

第三者に入ってもらう

「遠慮を感じる相手にはしっかりと対応ができる」という認知症の特徴に助けられる場合もあります。例えばお金のことなら銀行員や郵便局員から「大丈夫ですよ」と言ってもらうと、受け入れやすい場合があります。

別のことに関心を向ける

説得するよりも、別のことに関心を向けて、こだわりから気持ちを切り替えてしまいましょう。「歌を聞かせてください」など、その人の趣味や関心の向くものに誘ったり、好きな食べ物を出したり、昔の話などに話題をふってみてください。

地域の理解・協力を得る

認知症が進むと、徘徊や被害妄想などの症状があらわれ、家族は地域への気兼ねや遠慮を感じるようになります。けれども、周囲の理解があれば過剰な外出の制限や薬の使用などを控えることができて、症状の悪化も避けられます。現実には難しいこともあると思いますが、「認知症になり、迷惑をおかけするかもしれません」と伝えることができ、周囲も「おたがいさま」と見守ってくれる環境づくりが理想です。

一手だけ先手を打つ

例えば郵便物をしまいこむ人には、郵便が届く時間を見計らって先に大事な郵便物だけを抜き、あとは好きにしてもらうなど、本人のこだわりを押さえ込まずにできる対策を考えます。手間はかかりますが、後の苦労を回避できる現実的な方法です。

本人の過去を理解する

例えば、徘徊が止まらない人の過去に「迷子になった子どもを必死で探した」という経験があれば、歩き続けないと気持ちがおさまらないという心情も理解できます。過去の体験を知ることで、こだわりの裏にある思いが理解でき、対策を考えるときに役立ちます。

長期間は続かないと割り切る

認知症では一般的に、一つの症状は半年〜1年ほどで別の症状に変わっていくという特徴があります。症状を根本的に解決しようとすると疲弊してしまいます。いずれ消えるものとしてその場を乗り切っていくほうが気が楽になることもあります。

法則7 強く対応すると強い反応が返ってくる

認知症の方には、強く対応すると強い反応が返ってきます。「押してダメなら引いてみる」という気持ちで対応してみてください。

法則8 ほとんどの症状は理解できるもの

認知症の方の言動は、認知症の特徴を思い出すことができれば、ほとんどが理解できるものです。さらに、過去の経験を知ることで、より深く理解できるでしょう。介護する人が症状の理由を理解すると、困った言動も受け止めやすくなります。すると、認知症の症状も落ち着いてきます。

法則9 認知症は老化の速度が速い

認知症になると、通常の2〜3倍のスピードで老化が進みます。介護のはじめは元気がありすぎて大変だというかたも多いのですが、いつまでも続くものではないことを頭においておくことが大切です。

※記事の内容は2021年12月時点の情報をもとに作成しています。

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監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長
杉山 孝博
監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長

川崎幸病院副院長を経て1998年より川崎幸病院の外来部門「川崎幸クリニック」院長に就任。公益社団法人認知症の人と家族の会全国本部副代表理事、神奈川県支部代表。認知症と介護に関する著書、講演など多数。

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