【認知症のキホン】認知症治療薬と主なリハビリ療法~アルツハイマー型の場合

公開日:2021年12月22日更新日:2022年09月12日
認知症治療薬

認知症のパターンとして一番多い「アルツハイマー型認知症」には、4種類の治療薬があります。病気の原因を根本的に治療することはできませんが、進行を遅らせたり症状を改善させたりする効果があり、すでに世界70以上の国と地域で承認されている薬です。

いずれも保険診療が適用されます。保険診療で使用できる薬は進行度によって決められています。また、薬によっては、錠剤、口内溶解錠、ドライシロップ、貼付剤など、さまざまな形状が用意されています。

薬の種類

製品名 一般名 適応重症度 剤形 用法
アリセプト等 ドネペジル塩酸塩 軽度~重度 錠剤、口腔内崩壊錠、細粒、ゼリー、ドライシロップ、ODフィルム、内用液 1日1回
レミニール等 ガランタミン臭化水素酸塩 軽度~中等度 錠剤、口腔内崩壊錠、内用液 1日2回
イクセロンパッチ リバスタッチパッチ等 リバスチグミン 軽度~中等度 貼付剤 1日1回
メマリー等 メマンチン塩酸塩 軽度~重度 錠剤、口腔内崩壊錠、ドライシロップ 1日1回

ジェネリック薬品を除く ※2021年12月現在

薬の変更

アリセプト、レミニール、リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ

同系統の薬で併用はできません。変更する場合は今の薬を中止して、新たな薬を開始量から服用しはじめます。切り替え時期には、薬の効果がきれる期間が発生します。

副作用

アリセプト、レミニール、リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ

吐き気、おう吐、食欲不振、下痢、腹痛など

メマリー

めまい、便秘、体重減少、頭痛など

リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ

上記に加え、貼付部位の発赤、かゆみなど

周辺症状に処方される薬

興奮や妄想、抑うつなど、環境や気質の影響であらわれる症状を「行動・心理症状(BPSD)」といいます。こうした症状には、抗精神病薬や抗不安薬、脳循環代謝改善薬、漢方薬などが処方されることがあります。症状が改善されることで、状態が落ち着いたり、周囲の人の負担が軽減されたりします。

いろいろなリハビリ療法

認知症の方の気持ちを落ち着け、脳を活性化させる効果があるものとして、音楽や運動を取り入れる、動物にふれる時間をつくるといった療法もあります。効果は人それぞれですが、好みや状況に合った方法を見つければ、リハビリ中の時間を心地よく過ごせ、それが状態の改善や安定につながることがあります。

認知症の主なリハビリ療法

音楽療法

楽器をたたいてリズムをとったり、歌をうたったりします。リズムや音の刺激で元気がわき、情緒が安定します。好きな音楽を聴くだけでも有効です。
認知症が進んだ人でも、以前よく聴いていた音楽には強く反応したり、リラックスした表情を見せたりします。

回想法

過去の思い出を語りかけ、会話をすることで脳を活性化させる療法です。1対1で行う方法と、数人で行う方法があります。昔の写真や遊んでいたおもちゃ、道具などを使って楽しい思い出や嬉しい思い出をよみがえらせ、楽しさや喜びの感情を引き出します。また、本人の記憶に寄り添い、共感することで、情緒が安定し、コミュニケーションが円滑に行えるようになります。

運動療法

理学療法士の指導のもとで行います。自立した状態を保つため、または少しでも自立した状態に近づくためにできる訓練を行いながら、精神的な安定もはかります。

美術療法

絵を描く、造形物をつくるなど、自由な創作活動によって五感を刺激することで、認知機能の維持や改善をはかる療法です。感性に働きかけ、イメージしたり、表現したりすることが脳の活性化につながると考えられています。

アニマルセラピー

人とのコミュニケーションが難しいという方でも、動物と接すると優しく語りかけたり、穏やかな表情を見せることがあります。人によっては、自発的に動物の世話をするなどの意欲が芽生えることもあるようです。

※記事の内容は2021年12月時点の情報をもとに作成しています。

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監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長
杉山 孝博
監修者:杉山 孝博(すぎやま たかひろ)
川崎幸クリニック院長

川崎幸病院副院長を経て1998年より川崎幸病院の外来部門「川崎幸クリニック」院長に就任。公益社団法人認知症の人と家族の会全国本部副代表理事、神奈川県支部代表。認知症と介護に関する著書、講演など多数。

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