【認知症のキホン】レビー小体型認知症とは?原因や症状、家族の対応方法を解説
レビー小体型認知症は、もともとパーキンソン病の病理変化の一つとして知られていましたが、1995年に「レビー小体型認知症」と名付けられ、翌1996年に診断基準がつくられた比較的新しい認知症です。英語では“Dementia with Lewy bodies” といい、略してDLBと呼ばれています。
認知症にはいくつかの種類があり、それぞれ症状が異なります。物忘れなどの症状よりも、大声で寝言を言ったり、幻視や幻聴の症状が強い場合は、アルツハイマー型認知症ではなく、レビー小体型認知症の可能性もあるかもしれません。
このページでは、家族にこういった症状が出た場合、どのように対処すればよいのか、原因や症状を探りながら解説していきます。
レビー小体型認知症(DLB)とは?
三大認知症のひとつである「レビー小体型認知症」について、特徴と原因を分かりやすくまとめました。どのような病気なのか、概要を知っておきましょう。
レビー小体型認知症の特徴
レビー小体型認知症は、認知症の一種で、アルツハイマー型認知症、血管性認知症とともに、「三大認知症」と呼ばれています。
認知症の中に占める割合は、近年では20%程度とされています。特に65歳以上の方に多く、男女別では、比較的男性に多い傾向があります。
レビー小体型認知症の原因
レビー小体型認知症の原因は、「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質が神経細胞内に溜まることです。レビー小体が神経細胞内に溜まると神経細胞が破壊されてしまい、さまざまな症状を引き起こします。
なお、レビー小体は、パーキンソン病の原因としても知られているものです。そのため、レビー小体型認知症がパーキンソン病と似た症状が出たり、パーキンソン病の人がレビー小体型認知症を発症したりするケースもあります。
レビー小体型認知症の主な症状
レビー小体型認知症の症状は、一般的な認知機能障害だけではありません。早期発見のために、どのような症状が出るのかをここで理解しておきましょう。
認知機能障害
認知症の症状として、多くの人がイメージするのが認知機能障害ではないでしょうか。レビー小体型認知症でも、注意力が散漫になったり、ぼんやりしたりといった認知機能障害が起こります。
ただし、初期は症状にバラつきがあることから、異常に気づけないこともあるようです。数週間から数カ月に渡って変動が起こるケースも見受けられ、「気のせいだったかな」と受診を先延ばしにする危険性があります。
アルツハイマー型認知症と比べると、レビー小体型認知症の認知機能障害は比較的軽度のため、見逃しやすいので注意が必要です。
幻視・幻聴
レビー小体型認知症の特徴的な症状が、幻覚です。
特に幻視の症例が多く、「子どもが天井から顔を出している」「部屋の隅に虫がいる」などと主張したり、その場にいるはずのない人や、小人のような想像上の生き物が見えたりすることもあります。
また、実際には無い音が聞こえてしまう「幻聴」も症状のひとつです。
幻視も幻聴も、患者本人には現実のようにはっきり感じられるため、「いた気がする」あいまいな主張ではなく、具体的に強くアピールされることもあるでしょう。
パーキンソン症状
レビー小体型認知症では、パーキンソン病と同様の症状も起こることが多いとされています。具体的には、手足の震え、手足の筋肉が硬くなる、動作がゆっくりとなる、といった症状です。
歩幅が小さくなる、歩くのが遅くなる、何もないところで転倒する、といった傾向が見られたら注意してください。
抑うつ症状
抑うつ症状とは、気分が沈んでしまう状態を指します。特に理由がなくても悲しい気持ちになり、意欲が低下します。また、不眠や食欲不振のような、身体的な症状にもつながります。
抑うつ症状は、うつ病と似ているため、勘違いをしないように気を付けましょう。抑うつ症状は、うつ病よりも軽く、楽しいことをしていると気がまぎれる、それほど持続しない、といった特徴を持っています。
個人が判断するのは困難なため、症状が出ていると感じたら医師に相談してください。
レム睡眠行動異常症(RBD)
レビー小体型認知症の患者は、眠りの浅いレム睡眠時に、悪夢が原因で大声を出したり、暴れたりすることがあります。また、眠りながら誰かと会話をしている夢遊病のような症状も出ます。
このような睡眠時の行動は、レビー小体型認知症の一般的な初期症状です。
自律神経症状
自律神経の乱れによって起こる症状も、レビー小体認知症が原因かもしれません。
便秘や頻尿、残尿感といった排泄に関するトラブルや、立ち眩み、めまい、だるさ、発汗などが該当します。
レビー小体型認知症の進行と経過
レビー小体型認知症は、進行度によって、初期・中期・末期の3段階に分けられます。それぞれどのような症状が出るのかを知った上で、できるだけ早期に治療に入れるようにしましょう。
1.初期
レビー小体型認知症の初期症状には、以下のようなものが挙げられます。
- 抑うつ症状
- レム睡眠行動異常症
- 臭覚異常
- 便秘
特に臭覚異常は、レビー小体型認知症の初期症状としてよく知られています。
とはいえ、これらの症状は別の病気の症状として出ることもあり、それほど目立つ異変ではなく、見逃されてしまう場合もあります。
しかし、少しずつ幻視や錯視(ハンガーにかかった服が人に見えるなど、別のものと見間違える)などの特徴的な症状が表れます。
2.中期
中期になると、認知機能障害の症状が目立つようになります。レビー小体型認知症の認知機能障害は、症状に波がありますが、中期では問題がある時間が長くなっていきます。
また、徘徊や妄想、パーキンソン症状の悪化も中期の特徴です。周囲のサポートなしでは、うまく歩行できなくなる人もいます。
3.末期
末期には、パーキンソン症状や認知機能障害がさらに悪化します。常時介護がないと歩けず、日常生活を送るのも困難になるケースもあるでしょう。
転倒やベッドからの転落のリスクも高く、誤嚥の危険性も高まるため、きめ細やかな介護が必要になります。
レビー小体型認知症の判断基準
レビー小体型認知症の症状は、認知症の核となる「中核症状」と、「BPSD」に分けられます。
中核症状は進行性の「認知機能障害」で、この症状がレビー小体型認知症のひとつ目の判断基準です。加えて、幻視やパーキンソン症状、レム睡眠時行動異常症、認知機能の変動といった症状がある場合に、レビー小体型認知症が疑われます。
一方、臭覚異常や不安といったBPSDは、必ずしも認知症が原因とはいえないため、判断基準としてそれほど重視されません。
レビー小体型認知症の検査方法
レビー小体型認知症は、数種類の検査をもとに診断されます。検査方法の種類について解説します。
なお、これらの検査は、必ずすべてを行うわけではありません。症状等に応じて、医師が必要と判断した場合に実施します。
神経心理検査
認知機能を調べるための検査です。国際的な「Mini-Mental State Examination」という手法が採用されるケースが多いでしょう。
また、レビー小体型認知症の特徴的な症状である「錯視」がないかを調べる心理検査を合わせて行うこともあります。
画像による検査
レビー小体型認知症の検査では、画像診断も行われます。代表的な画像検査を紹介します。
MRI検査・CT検査
MRIやCTを使って、脳の内部の様子を検査します。CTは短時間で手軽に済みますが、MRIの方が病変は見つけやすいでしょう。
MIBG心筋シンチグラフィー
心臓の交感神経の動きを調べる検査で、パーキンソン病の診断にも使われます。MIBGという薬剤を注射して、薬剤がどの程度移動するかを調べます。
ダットスキャン検査
ダットスキャンという、放射線を出す薬剤を注射し、脳の働きを調べます。これも、パーキンソン病の診断にも使われる検査です。
脳SPECT・糖代謝PET
脳の血流や、糖の代謝について調べる検査です。脳の働きに問題がないかどうかをチェックできます。
脳波検査
脳波を測定して、脳の働きを調べる検査です。病気によって特徴的な脳波が見られることから、症状の原因を特定するために活用されます。
血液検査
認知機能の低下は、レビー小体型認知症以外の病気でも起こります。そのため、血液検査を行い、ビタミン欠乏症や甲状腺機能低下症といったその他の病気がないかも調べます。
その他の病気の可能性を除外すれば、レビー小体型認知症の診断精度を高いものにできるのです。
レビー小体型認知症の治療法
レビー小体型認知症に対する根本的な治療法は、今のところ見つかっていません。生活能力の維持や向上を目的とした非薬物療法、症状を抑えるための薬の服用によって、できるだけこれまで通りの生活を送れるよう治療が行われます。
非薬物療法
非薬物療法とは、薬を使わない治療全般を指す言葉です。パーキンソン病と同様の症状が出るレビー小体型認知症では、ストレッチやウォーキングといった運動療法を多く取り入れます。適度な運動は、血流の改善や脳の活性化にもつながるものです。
また、昔の思い出を話したり、音楽を聴いたり、絵を描いたりといった、脳への刺激につながる行動療法も合わせて行われます。
薬物療法
薬物療法では、パーキンソン症状や抑うつ、不眠など、それぞれの患者にとって問題となる症状に合わせた薬が処方されます。ドネペジル塩酸塩(アリセプトなど)が処方されることもあります。
ただし、レビー小体型認知症の症状に対する薬は、量の調整が難しい場合があるため、医師を含めた医療関係者と相談しながらの調整が必要になります。
薬による体調の変化や副作用が出た際は、随時かかりつけ医に報告しましょう。
レビー小体型認知症の方への対応方法
家族がレビー小体型認知症を発症した場合は、住環境や接し方、介護の方法について即座に検討しなければなりません。考えられる対応方法について解説します。
住んでいる環境を整える
まずは、転倒や落下を防ぐために、できるだけ段差のない暮らしを送れるようにしましょう。また、手すりやベッドの柵の設置も効果的です。
認知症患者への配慮・心遣い
認知症患者は、本人も多くの不安や混乱を抱えて過ごしています。周囲の家族が、できるだけ患者の混乱をなくし、安心して暮らせるように配慮する必要があるでしょう。
できるだけ穏やかに、相手の主張に耳を傾けながら会話をしてください。後ろから声をかけたり、大声を出したりして驚かせるのは危険です。
同時に、食欲不振や誤嚥に対処するための調理法も検討します。
支援サービスを利用する
レビー小体型認知症の方を、家族だけで介護するのは非常に困難です。デイサービスや訪問介護、グループホームなど、介護保険で利用できる認知症の方向けの支援制度やサービスがあるため、積極的に活用しましょう。
こうしたサービスの活用は、本人や家族どちらの負担も軽減してくれます。症状が進んでからではなく、早い段階で取り入れて、外部サービスの利用に少しずつ慣れていくことが大切です。
認知症の方が入居できるホームはこちら川崎幸クリニック院長
川崎幸クリニック院長
川崎幸病院副院長を経て1998年より川崎幸病院の外来部門「川崎幸クリニック」院長に就任。公益社団法人認知症の人と家族の会全国本部副代表理事、神奈川県支部代表。認知症と介護に関する著書、講演など多数。