【介護の基礎知識】サービス付き高齢者向け住宅の費用相場はいくら?内訳や支払い方法も徹底解説
「サービス付き高齢者向け住宅の費用はどれくらいかかるの?」
「支払いはどのような方法がある?」
「高そうなイメージがあるけど年金だけで入居できる?」
サービス付き高齢者向け住宅の費用に関して、このような疑問を感じる人もいるのではないでしょうか?
安否確認や生活相談などのサービスが付いているぶん、一般的な賃貸住宅と比べると費用はやや高いですが安心して生活を送ることができます。
そこで本記事では、サービス付き高齢者向け住宅の費用相場について詳しく見ていきます。
サービス付き高齢者向け住宅に入居を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは
サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)は、バリアフリー仕様の高齢者向けの賃貸住宅です。
以下の表に詳しい概要をまとめています。
サービス付き高齢者向け住宅 | ||
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管轄 |
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対象者 |
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費用 |
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サービス・設備 |
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契約形態 |
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一人当たり床面積 |
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※見守り、生活相談サービスに関しては厚生労働省が指導・監督と両省共管で行われている。
サ高住で必ず受けられるサービスは「安否確認」と「生活相談」のサービスです。
他にもサービスを受けたい場合は、外部の介護サービス事業所と契約することでさまざまなサービスを利用できます。
さらに詳しくサ高住のサービス内容を知りたい人は、下記の記事を参考にしてください。
なお、サ高住には以下の2つに分けられます。
- 一般型
- 介護型
次にそれぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
①一般型
サ高住の多くを占める「一般型」では、自分のペースで生活を送ることができます。
一般型の入居条件を下記の表にまとめました。
一般型 | ||
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年齢 |
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介護レベル |
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認知症がある場合 |
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連帯保証人 |
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一般型は自立した人の入居を想定しているため、介護が必要になった場合は外部サービスの利用が必要です。
住宅によっては要介護度が高くなった場合、退去になる可能性もあります。
②介護型
「介護型」は、サ高住の中でも「特定施設入居者生活介護」の指定を受けたところを指します。
介護型の入居条件を下記の表にまとめました。
介護型 | ||
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年齢 |
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介護レベル |
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認知症がある場合 |
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連帯保証人 |
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※事前に対応可能かを問い合わせる必要があります。
利用者はすべて要介護・要支援の認定を受けているため、食事や入浴の介助のほか、介護・看護サービスなど有料老人ホームと同等のサービスを受けられます。
しかし、サ高住のうち「介護型」の割合は全国で約7%※と少ないのが現状です。
※参考:サービス付き高齢者は向け住宅に関する現状|国土交通省
サービス付き高齢者向け住宅の費用・相場
サ高住の費用・相場を見ていきます。
サ高住でも「一般型」と「介護型」で費用は大きく異なりますが、どちらも「敷金」と「月額利用料」が必要です。
家賃や共益費、サービス費(生活相談・見守り)で、月額10万円程度が平均※となっています。
大都市圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県) | 平均:12.4万円 | |
---|---|---|
地方圏(上記以外の道県) | 平均:8.7万円 | |
全国 | 平均:10.5万円 |
※参考:サービス付き高齢者は向け住宅に関する現状|国土交通省
上記のように、費用相場は大都市圏や地方圏によってもそれぞれ異なります。
費用を詳しく知りたい人は、入居を検討しているサ高住に直接問い合わせてみましょう。
サービス付き高齢者向け住宅の費用内訳
サ高住の費用は、入居するタイミングで支払う「敷金」と入居後に月々支払っていく「月額利用料」の2つに分けられます。
それぞれ詳しい内訳を見ていきましょう。
敷金
敷金とは入居する前に支払う初期費用です。「保証金」と記すところもあります。
サ高住の規模・仕様や立地などによって費用が異なるため、入居の意思決定前に敷金はどのくらい必要かを確認しておきましょう。一般的に礼金や更新料は不要です。
敷金のおおよその相場は以下のとおりです。
- 一般型:数万円~数百万円
- 介護型:数万円~一部に数千万円
敷金は賃料の2~3ヶ月分に設定されている場合が多いです。なかには、敷金が0円で利用できるサ高住もあります。
敷金は万が一月額利用料が支払われない場合に充てられます。そして一般的な賃貸住宅のように、敷金は退去時に返還される仕組みです。
なおサ高住によっては、下記のようなプランを設定しているところもあります。
- 家賃の一部を前払いして、月々の支払額を抑えるプラン
- 預り金を支払い、月額利用料が支払えなくなった時に充てる保証金プラン
入居する前に、敷金についてはしっかりと確認しておきましょう。
月額利用料
月額利用料の内訳は、家賃・管理費・食費などです。
費用の名目は「生活支援サービス」や「基本サービス費」と記載されますが、安否確認や生活相談サービスも含まれています。
月額利用料のおおよその相場は以下のとおりです。
- 一般型:5万円~25万円
- 介護型:15万円~40万円
水道・光熱費に関しては、「一般型」と「介護型」によって異なるケースがあります。
「一般型」の場合は居室のキッチンで自炊も可能なため、費用はそれぞれ使用分を支払います。
一方「介護型」では、食事サービスの提供を前提に、水道・光熱費が含まれていることもあります。
サ高住によって月額利用料も異なるので、入居を検討する際に確認が必要です。
その他で必要な費用
その他で必要な費用としては、本人の身体状況やライフスタイルに合わせて下記の費用が必要になることがあります。
医療・薬代 |
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介護サービスの費用 |
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消耗品代 |
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サ高住での活動費(サークル活動やイベントへの参加費など) |
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オプション費 |
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「介護型」のサ高住では、介護サービスの提供が前提です。そのため、毎月一定額の介護サービス費を支払う必要があります。
サ高住へ入居する際は、本人がどのような暮らしをするのかをできる限りイメージして、別途費用までを含めた金額を想定しておくことが大切です。
費用の予測が付かない場合は、サ高住に問い合わせて相談してみましょう。
サービス付き高齢者向け住宅の支払い方法2種類
サ高住の費用の支払い方法は2種類あります。
- ①月払い方式
- ②前払い方式
それぞれの違いを見ていきましょう。
支払い方法①:月払い方式
毎月決まった額を支払う方式を「月払い方式」と呼びます。
月払い方式は、通常の賃貸契約と同様の契約方式となっており、サ高住においては主流となっている支払い方法です。
月払い方式の特徴は以下のとおりです。
- 毎月一定の家賃などを支払う
- サービスを受けるための費用を毎月支払う
通常の賃貸契約と異なる部分が、サービスを受けるための費用も毎月支払うという部分です。
サ高住により名称や費用は異なりますが、「サービス費」という名目で利用者が毎月定額で支払うことになります。
しかし、なかには「前払い方式」が選択できるサ高住もあります。
ここから詳しく見ていきます。
支払い方法②:前払い方式
賃料などの居住費用を入居時に前もって支払う方式を「前払い方式」と呼びます。
前払い方式の特徴は以下のとおりです。
- 前払いする費用はサ高住によって決められている
- 想定居住期間を超えた場合でも追加で費用は発生しない
- 入居時にまとまった資金が必要なので負担が大きい
前払いする費用は、想定居住期間の居住費用と、その想定を超えた期間分の居住費用をもとにしてサ高住ごとに決められています。
なお想定居住期間を超えた場合でも、追加で費用が発生することはありません。
ここまで月払い方式と前払い方式について見てきましたが、メリット・デメリットを下記にまとめました。
月払い方式 | 前払い方式 | ||
---|---|---|---|
メリット | 前払い方式より入居時の負担が少ない | 入居時に前払いしているため、入居期間が長いほどお得になる | |
デメリット | 入居期間が長くなると、支払い総額が大きくなる可能性がある | 月払い方式より入居時の負担が大きい |
支払い方法はサ高住によってあらかじめ決められていることが多く、利用者は選べない場合が多いです。
支払い方法は、入居前に必ず確認しておきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅の契約形態
サ高住では「一般型」と「介護型」で契約形態が異なり、主に以下の2つに分けられます。
- 賃貸借契約
- 利用権方式
一般型のサ高住は、通常の賃貸物件と同じように「賃貸借契約」を結びます。
一方、介護型のサ高住は「利用権方式」を結ぶケースが多いです。
ここで「賃貸借契約」と「利用権方式」の違いについて見てみましょう。
賃貸借契約
賃貸借契約」は、通常の賃貸マンションの契約同様に建物へ住むための契約となります。
賃貸物件の一般的な契約方法ですが、更新時に更新費用はかかりません。
なお、賃貸借契約には2種類あります。
- 1.建物賃貸借方式
- 2.終身建物賃貸借方式
「建物賃貸借方式」は、月額利用料を支払えばその部屋を借りる権利が与えられます。サ高住の主な契約形態は、この建物賃貸借方式です。
「終身建物賃貸借方式」は、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、安心して賃貸住宅に居住できる仕組みとなっています。
利用者が生存している限り契約は継続し、死亡した時にのみ契約を終了できる制度です。
利用権方式
「利用権方式」とは、全額または一定期間分の費用を支払うことで、居室を利用する権利や、生活支援サービスを受ける権利が保障される契約です。
簡単に説明すると、サ高住を利用する「権利」を前払いで購入することを言います。そのため、利用者が亡くなるまで住み続けられます。
しかし、利用者本人が亡くなった場合、権利を家族に相続することはできません。
利用権方式は介護施設の入居時に使われることが多く、有料老人ホームなどでよく用いられています。
サービス付き高齢者向け住宅の費用における3つの注意点
サ高住の費用における3つの注意点を見ていきます。
- ①要介護度によって費用が異なる
- ②立地によって費用が異なる
- ③介護サービスの囲い込みに注意
注意点①:要介護度によって費用が異なる
一般型のサ高住にて介護が必要になった場合は、外部事業所のサービスと別途契約を行い、居宅介護サービスを受けることができます。
その際、サービスを受けるために必要な費用の支給限度額があり、それぞれ介護度によって異なります。
以下に1ヶ月あたりの支給限度額・自己負担額を要介護度別にまとめました。(金額は2023年3月時点の情報)
介護度 | 支給限度基準額 | 自己負担額(1割) |
---|---|---|
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 |
※1カ月あたり
※1単位=10円で計算(サービスの種類によって、1単位あたりの正確な金額は変動します)
※地域によって異なります。詳しくはお住まいの自治体にご確認ください
限度額の範囲内でサービスを利用した場合は、1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)の自己負担です。
なお、限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担となります。
注意点②:立地によって費用が異なる
サ高住の家賃は立地によって異なり、駅や都心部などに近ければ近いほど家賃は高くなる傾向があります。
賃貸住宅と同じように立地条件がよい場所は費用は高いので、支払いを継続していけるのかしっかりと検討して決めましょう。
なお、駅や都心部から離れた住宅や、築年数が古い住宅は費用が低く設定されている傾向があるようです。 費用を抑えたい場合は、検討してみるのもよいでしょう
注意点③:介護サービスの囲い込みに注意
サ高住の一部には、併設する介護事業のサービスを強制的に利用させることで、利用者が必要としている以上の介護サービスを受けさせるところもあります。
このようなサービスを「過剰サービス」と呼ばれており、利用者は意図せず高額な介護サービス費を支払うことになる場合も。
なかには、囲い込みを目的としてサ高住を経営する悪質な業者も存在します。
過剰なサービスは利用者の自立を妨げてしまう可能性もあります。適切なサービスを受けるためにも、ケアマネジャーとしっかり連携を図ることが大切です。
サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの違い
高齢者の第二の住まいに、サ高住のほかにも「有料老人ホーム」が選択肢のひとつとして挙げられます。
それぞれの違いについて見ていきましょう。
サービス内容の違い
サービス付き高齢者向け住宅 | 有料老人ホーム | ||
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入居条件 |
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提供サービス |
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居室の広さ | 25㎡以上(条件付で18㎡以上も可) | 13㎡以上 | |
食事 | 自炊可能 (オプションで食事サービスの利用も可能※) |
ホームが提供 | |
生活の自由度の違い | 外出・外泊は自由に可能 | 一日のスケジュールが比較的決まっている部分もあり、行動に制約がでる場合もある | |
契約方式 | 建物賃貸借契約 | 終身利用権方式 |
サ高住と有料老人ホームのサービス内容はそれぞれ異なります。
サ高住では「必ず受けられるサービス」と「必要に応じて受けられるサービス」があります。
サ高住で必ず受けられるサービスは「安否確認」と「生活相談」です。
一方、有料老人ホームは「介護付」「住宅型」「健康型」の3つに分けられ、さらにホームによっても提供サービスはさまざまです。
たとえば介護付有料老人ホームでは、ホーム内にスタッフが24時間配置されています。
日中は看護職員も駐在しており、なかには看取り※までできるホームもあります(※ホームによって異なるため確認が必要です)。
より詳しいサービス内容の違いについては、下記の記事を参考にしてください。
費用の違い
サ高住と有料老人ホームの費用にもそれぞれ違いがあります。
以下に必要な費用をまとめました。費用の詳細はホームで異なるため、入居する前に確認が必要です。
入居前に必要な費用目安 | 【敷金】 ・一般型:数万円~数百万円 ・介護型:数万円~一部に数千万円 |
【入居金】 0~数億円を超えるなど幅広い |
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---|---|---|---|
月額利用料目安 | ・一般型:5万円~25万円 ・介護型:15万円~40万円 |
15~30万円(ホームによって異なる) |
サ高住の費用は先述したように賃貸借契約ですが、有料老人ホームでは入居金が必要です。
有料老人ホームの入居金は、入居時に一部が初期償却(しょきしょうきゃく)されます。
償却とは、支払った入居金を毎月の家賃などに一定額ずつあてることをいいます。
償却される割合はホームによって異なるため、入居を検討する段階で必ず確認しましょう。 なかには入居金を必要としないホームもあります。
有料老人ホームの費用について詳しく知りたい人は、下記の記事もあわせてご覧ください。
サービス付き高齢者向け住宅の費用に関するよくある質問
サ高住の費用に関する、よくある質問をまとめました。
- サービス付き高齢者向け住宅の費用は年金だけで足りる?
- 夫婦でサービス付き高齢者向け住宅に住む場合の費用は?
順番に見ていきます。
サービス付き高齢者向け住宅の費用は年金だけで足りる?
サ高住に入居を検討する場合、年金だけでまかなえるのか心配に感じる人もいるかと思います。
厚生労働省が発表した「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金の平均受給額は、国民年金が約5.6万円、厚生年金が約14.5万円です。
サ高住の月額利用料のおおよその相場は以下のようになっています。
- 一般型:5万円~25万円
- 介護型:15万円~40万円
そのため年金のみでまかなうのは厳しいと予測されます。
そこで、年金のみで入居できる場所を検討するならば、公的施設の特別養護老人ホーム(特養)や、ケアハウスであれば費用を抑えられるかもしれません。
しかし、人気が高いため入居を待つ期間が長いケースが多いです。
特養とケアハウスについて知りたい人は下記をご覧ください。
なお、費用を抑える方法は他にもあります。たとえば以下のような方法です。
- 1.生活保護を受給する
- 2.介護保険を申請する
生活保護を受けると、介護サービス利用料の自己負担がなくなります。とはいえ、生活保護を受給しながら入居できるサ高住は多くありません。
サ高住ではなく、在宅で訪問介護や訪問看護を受けながら生活できないかも検討するとよいでしょう。
また、介護保険を申請していない場合は、申請して認定を受けることで介護サービスの費用負担が軽減します。
介護保険とは、65歳以上の人で要支援または要介護認定を受けた人が、1割(所得に応じて2割または3割)の自己負担額で介護サービスを受けられる制度です。
介護保険に関しては、以下の記事にてわかりやすくまとめているのでぜひ参考にしてください。
サ高住には夫婦で入居することが可能です。夫婦で入居する場合は、居住する部屋が夫婦同室か一部屋ずつなのかで費用が異なります。
基本的には夫婦同室のほうが費用は安くなるケースが多いです。
サ高住によってそれぞれ費用が異なるので、夫婦で入居する場合はサ高住に確認してみましょう。
また、サ高住以外にも夫婦で入居できる高齢者向けの住まいとして以下が挙げられます。
公的施設 |
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---|---|---|
民間施設 |
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分譲住宅 |
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それぞれ特徴や入居できる条件が異なるため、利用者の希望に合わせて比較検討しましょう。
なお、夫婦のどちらか一方または両方が、認知症があったり介護度に差があったりする場合はいっしょに入居できないこともあります。
まとめ
この記事では、サ高住の費用相場について見てきました。
サ高住は有料老人ホームに比べると費用は抑えられていますが、費用に不安がある場合は検討している住宅に直接問い合わせを。
もしくは、公的施設である「ケアハウス」や「特別養護老人ホーム(特養)」を検討できるのであれば、費用は抑えられる余地はあるでしょう。
無理のない範囲で支払いが継続できるよう、ご自身の経済状況に合った住まいを選択していくことが大切です。
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FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー
FPリフレッシュ代表、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローン・アドバイザー
「高齢期の住まい」に着目し、東京や神奈川を中心に、介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、240ヶ所以上を訪問。現在、「終のすみか探し」コンサルタントとして、シニア期の住まい探し・住みかえ、執筆、講演と、幅広く活動している。